未来と向き合い平和について考える~大学生協の戦後70年特別企画~

Book Review #06


愛媛大学 教員
松野尾裕

軍艦島
著:韓水山
監訳:川村湊/翻訳:安岡明子・川村亜子
出版社:作品社

 2009年5月に学生7人と教員3人で平和を学ぶフィールドワークを長崎市で行なった時のことを話します。森口貢さんに案内をしていただきました。平和公園で森口さんはまず、そこが長崎刑務所浦上支所のあったところだということ、そして、そこに落とされた原爆の被害を知ることから、キリシタン弾圧、被差別部落、治安維持法による言論弾圧、朝鮮人・中国人の強制労働、連合軍捕虜のことなど、歴史に刻まれた多くのことを考えてもらいたいと語られました。平和公園に長崎原爆朝鮮人犠牲者追悼碑があります。その建立に尽力されたのが牧師であった故岡正治さんです。岡さんは朝鮮人・中国人の被爆実態が不明なままであったことに胸を痛められ、その解明に取り組まれました。1995年に岡さんが亡くなられ、遺志を継ぐ市民の有志により岡まさはる記念長崎平和資料館が設立され、平和教育の運動が続けられています。私たちはそこを訪れました。有名な日本二十六聖人殉教地のすぐ近くです。2009年12月に小説『軍艦島』(邦訳)が刊行され、私は、著者の言葉に、上に述べた追悼碑がこの作品の「原点」であると書かれているのを見て、読んでみようと思いました。作品は岡さんらが発掘した事実や証言などをもとにしたフィクションです。生きる勇気や希望といった普遍的な人間性を心の奥深くで確認することができた、というのが私の読後感です。産業遺産「軍艦島」の意味を考える手がかりになると思います。

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