未来と向き合い平和について考える~大学生協の戦後70年特別企画~

Book Review #13


愛媛大学法文学部 3年生
畑本文さん

平和ってなんだろう「軍隊をすてた国」コスタリカから考える

著:足立力也
出版社:岩波ジュニア新書

 著者はコスタリカの人々が考える「平和」という言葉の概念について日本の考え方との違いをいくつかの点に分けて論じている。そのなかの一つは消極的平和と積極的平和の違いについてである。日本は「戦争(などの悲惨なこと)がないこと」を平和として考えており、戦争の話や暴力の話をするときしか、平和というワードは出てこない。これを消極的平和という。コスタリカでは、愛があったり、幸せだったり、安らかだったり、何かしらポジティブな感情の寄せ集めのことを、平和と呼ぶ。これを積極的平和という。消極的平和には、身の回りにこれといった不満がないと、平和への努力を惜しむことがなくなってしまうが、積極的平和では、現状がどうであれ、さらによりよい状態を目指そうとする。日本において目指そうとする平和は、「軍事的安全保障」のことを暗に指している。人々は平和のために戦争のおこらない世の中を望む。しかし、自らがその努力をしないように思える。国の政治に無関心な若者が多く、選挙にもいかない。コスタリカは選挙を国の祭のように行い、子供までもが疑似選挙に楽しく参加し、国の政治に対する関心も強い。コスタリカは、平和という概念を「民主主義」「人権」「環境」「自由」などさまざまな分野の統合した概念としてとらえている。武力を持つor持たないということはコスタリカの歴史の流れから生まれた必然の産物のように国民はとらえており、誰も疑問に思わない。また、人間の欲望には際限がない。欲望と欲望がぶつかり合うところには、争いも生まれる。コスタリカの深層文化に「プラ・ビダ」という言葉がある。意味は「少なきを欲して足るを知る」。そこそこで満足をする、という価値観は私たち日本の将来の方向性を示しているのではないだろうか。
 あらゆる立場の人が、圧力を感じることなく、思ったことを言えるのが民主主義の前提である。また、相手との関係性を優位にするために作り出された立場の上下は、「暴力」とよべる。民主主義的であるということは、暴力を排除するということであり、それが平和という概念を直接的に意味する。「暴力の不在」にとどまらず、さらに一歩踏み込んで、民主主義そのものに対してよりポジティブな意味づけをするのが「コスタリカ流」である楽しいことうれしいこと、幸せなことと民主主義という概念を結びつけるのである。
 著者は、コスタリカ政府の政策などには触れることなく、あくまでコスタリカの文化や、人々の価値観から平和とは何かを説いている。軍隊の保有を禁止している憲法9条がある、日本国の人間として、平和であるための国全体の一つの生き方が知れる本である。

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