未来と向き合い平和について考える~大学生協の戦後70年特別企画~

Book Review #16


岡山大学教育学部 3年生
桑谷直紀さん

夕凪の街 桜の国

著:こうの史代
出版社:双葉社

 私は日本に原爆を落とすまでに展開された第二次世界大戦という戦争がどんなものであったのかを知りません。歴史の教科書にその経緯を学び、原爆資料館でその悲惨な状況が再現をされたものを見ても、私はやはり「知らない」のだと思います。その上、著者のこうの史代さんがあとがきに記したように、遠い過去の悲劇で「よその家の事情」であり、この日本で起こったことをいわば「対岸の火事」のようにさえ私は捉えてしまっていました。
 この本では「一般庶民にとっての原爆」を軸に据えて、10年後に発症した原爆症に苛まれる女性の姿、被爆2世として生きる女性の姿が描かれています。原爆に後世まで苦しめられながらも、それでもたくましく幸せに生きてきた戦後の日本人の物語です。
 この物語にオチはありません。再びあとがきの言葉を借りるならば「35頁で貴方の心に湧いたものによって、はじめて完結する」物語です。
 広島のある日本のあるこの世界に暮らす者として、「原爆」を「繰り返してはならない悲劇だった」ということを知っているだけで終わらせてはいけないということ、経験していなくてもそれぞれの土地のそれぞれの時代の言葉で、平和について考え、伝えてゆかねばならないということを考えるきっかけとなった本でした。

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