未来と向き合い平和について考える~大学生協の戦後70年特別企画~

Book Review #18


山形大学生活協同組合
小白川書籍店
小島憂也

戦争と検閲 石川達三を読み直す

著:河原理子
出版社:岩波書店

 たまには、こんないかにも難しそうなタイトルの本を読んでみるのはいかがでしょうか。
 本書は、小説『生きている兵隊』で発禁処分を受けた石川達三を追ったものです。石川達三(1905-1985)は芥川賞作家で、戦前・戦中に新聞紙法違反の罪で有罪判決を受けました。新聞紙法は、公序良俗に反する出版物を制限・禁止できる法律です。
『生きている兵隊』は、石川が日中戦争に同行して書いた小説ですが、反戦小説というよりは、現地で闘う兵士たちの姿や変化、生活実態を生々しく描きました。しかし当局が発禁処分とし、回収する騒ぎに。この出来事だけでも、当時の政府は、戦争の生々しさを知らせることで疑問を持つ国民を増やしたくなかったのだろうと推察できます。
 新書のいいところは、深堀りすればするほどどんどんいろんな考えが湧き出るところにあると思います。この本を深堀りするとすれば、反戦を表していなくても不都合な言論を封じる力が当時の政府にはあった、ということではないかと考えます。
いまは憲法で言論の自由が保障されていますが、当時は憲法のしばりも薄かったのです。戦時下では、小説でさえ不都合なら削除され、発禁にされました。苦労して書いた原稿を伏せ字などで隠し、検閲を通るよう調整することが多々あったのですから、石川はとても辛かったと思います。
 いまはどうでしょう。自由に表現できてとても幸せだと思います。一方で、言論封殺の中戦争へ突き進んでしまった過去は、どのように反省されてきたのでしょうか。あまり日常生活の中では気づくことができませんが、石川のいたような世の中になってしまったら、いま普通に享受できている自由はどこまで保障されるでしょうか。
 大学生のうちだからこそ、ぜひいろんなジャンルの新書に触れてみてほしいです。 ともあれこの情勢にあって、そんな時代もあったのかと示唆を与えてくれた一冊でした。

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