会長理事からのご挨拶

全国大学生活協同組合連合会 会長理事 武川正吾氏

 世界で最初の協同組合は英国マンチェスターで誕生しました。1844年のことです。創立者はロッチデール・パイオニアズと呼ばれ、彼らを嚆矢として世界各国で協同組合の設立が続きました。当時のロッチデールの店舗は現在博物館となっており、いまでも世界中から多くの人々が訪れています。私も在英中に見学しました。
 大学生協は、日本の場合、第二次世界大戦前の同志社の消費者組合や、東京の学生消費組合(早稲田大学や東京大学に支部がありました)などに、その源流を求めることができますが、現在のような形で本格的に大学生協が展開するのは第二次世界大戦後のことです。1948年に消費生活協同組合法が成立したのを機に、全国各地で大学生協が設立され、現在にいたっています。

 大学生協はどのような団体なのでしょうか、コンビニやスーパーなどとはどのような点において異なるのでしょうか。
 大学を構成するのは学生、教員、職員などです。大学生協は、大学の構成員が充実したキャンパスライフを送ることを目的とした協同組合です。学内には生協以外の店舗があるかもしれませんが、これらの店舗との違いは、生協が、消費者である組合員みずからの出資によって運営される団体だという点にあります。
 このことは何を意味するでしょう。第一に、消費者と販売者・経営者がともに組合員であるところから、消費者が求めている商品を敏感に察知することができます。とりわけ学生委員会は、みずからが学生であるという立場を生かして、消費者である学生に対して他事業者の店舗にはない付加価値を提供することが可能です。これは大学生協ならではのメリットです。
 第二に、会社を所有するのが株主であるのと同じ意味で、生協を所有するのは出資者である組合員であるという点に注意する必要があります。このことは組合員の消費活動によって大学生協が供給高(売上)を増やし、経常剰余(経常利益)を増やしていくことが、組合員の財産を増やすことにつながることを意味します。同じものでも他店舗で購入する場合はその店舗の利益になりますが、生協で購入する場合は出資者=組合員の利益となります。

 大学生協が増えてくると、それぞれの大学生協が他と比べて優っている点や劣っている点が目立つようになります。国立大学が私立大学か。理系大学か文系大学か。大都市圏の大学か地方の大学か。一口に大学といっても大学は多様です。そこでスケールメリットを生かして、会員生協の組合員に安価な商品を提供し、経営上のリスクをプールして財務の安定化をはかる。そもそも生協は組合員同士の助け合いの組織なので、そうした論理の延長で、各生協同士が助け合いをするというのは、ごく自然ななりゆきでした。
 こうして全国の各大学生協を会員として、会員間の連帯を深める組織として設立されたのが全国大学生活協同組合連合会(大学生協連)です。1957年のことです。以後、会員生協に共通する課題の解決に取り組んできました。すでに60年以上たちましたが、今後これまでには想像もつかなかったような課題が登場するかもしれません。そのときも大学生協連は会員間の連帯の証しとして、そうした課題の解決に取り組んでいきたいと思います。