全国大学生協連の研究会報告

大学と生協の連携で
「学生の元気」「大学の魅力」をつくる

京都大学と京都大学生協との 「相互協力協定」

協定を結んだ経緯

2013年3月26日に「国立大学法人京都大学と京都大学生活協同組合の相互協力関係に関する協定書」を締結することができた。これまでの「福利厚生施設業務委託契約」の根拠となり、より理念的で包括的な京大との相互協力関係を表明したものである。中森専務とこのような「協定書が欲しいよね」という話をしたのは、締結の2年以上前のことだった。理事長を務めながら私は、京大生協の活動は狭い意味での「福利厚生業務」を超えた広がりをもっているのに、その「業務委託契約」しか大学との公的な関係がないことに理不尽さを覚えていた。それどころか、その福利厚生施設業務委託契約の存在さえご存知でない大学管理層や事務職の方も多かったことにも驚いていた。また、全国大学生協連や京都事業連合の理事としては、国立大学での自動販売機の競争入札問題に代表されるような、大学と大学生協との関係の変化にも苦々しい思いを抱いていた。京大は京大生協の役割の重要性をきちんと見てくれていないし、京大生協の側も大学内での自己の存在意義をもっと公に表明しても良いのではないかと感じてもいた。そのような中で、私は中森専務とともに「何とか大学との包括的なパートナーシップ協定を結ぼう」と思うに至ったのである。

POINT

  • 大学との関係性を目に見える形にし、新たな自覚とチャレンジを生む
  • お互いの使命、現状と課題等が共有され認識される
  • 生協の存在意義を表明し、大学人に認識していただく

生協は学生自身による 学生支援組織

協定書

そのように決意して最初に考えたのは、大学に対してどのような角度から生協の意義を主張すべきなのかということだった。食堂や購買といった基盤的な生協の事業の重要性はちょっと「当たり前すぎる」と思われた。それで中心に据えることにしたのが「京大生協は学生を包括的に支援しているのだ」という観点であった。例えば受験生や新入生に「具体的にどのようにして大学生活を始めたらいいのか」について、京大はほとんど何も支援をしておらず、ほぼ全面的に京大生協がその役割を担ってきた。ところが、京大はこのことにほとんど自覚的ではないように思われた。だが京大の「中期目標・計画」などでは、学生支援ということが目標の一つとして挙げられているのである。京大の中には大学生協に対してさまざまな見方が存在するなかで、この学生支援という切り口は了解を得やすいものだと考えたのである。

そこで、『京大生協の学生支援』というパンフレットを作成し、学内の主要な構成員に配布し、生協のさまざまな学生支援活動の実態について周知と理解を求めた。また、松本紘総長や赤松明彦学生担当理事との協議の場などでは、学生委員会のメンバーに同席してもらい、「生協が学生自身による学生支援組織」であることを認知してもらうようにもした。

協定書三つのポイント

このようにして締結にこぎつけた協定書であるが、その内容で重要なのは次の三点であると考えている。

  1. 何と言っても協定書前文で、京大と京大生協とが構成員を同じくし「研究・教育・社会連携による人類福祉への貢献という使命を共有する」と公式に表明されたことが重要である。そのうえで、第1条では京大の使命遂行にとって生協の事業が「極めて重要な役割を担っている」と宣言され、両者の「協力関係が不可欠」とまで記されていることは重いと思う。
  2. またその第1条では、京大生協が「相互扶助による大学生活の向上を図る」組織であると明言され、協同組合の精神が大学によって認知された点である。大学生協が「一事業者ではない」ことが認められたとも言えよう。この表現は中森専務の強い要望によって記されたものであった。
  3. さらに前文と第3条で「学生支援」が生協の事業として位置づけられていることが挙げられる。またこのことと関連して、その第3条では京大生協の側の「現状と課題」が京大にとっても「認識を共有」するべきことと認められている点も重要である。

新たな自覚と チャレンジのはじまり

調印式 京都大学 松本紘総長(左)と京都大学生協 川添信介理事長(右)
調印式 京都大学 松本紘総長(左)と京都大学生協 川添信介理事長(右)

以上のように、この協定は京大生協にとって重要な意義を有すると考えているが、同時に京大生協が大学に対していわば公式の責任を負う立場となったことをも意味している。交渉の過程では三億ちかい赤字を抱えている京大生協とのパートナーシップに対して不安を表明された大学役職者がおられたことを、忘れるわけにはいかない。とはいえまた、大学への責任とは結局は大学構成員である学生や教職員への責任であり、つまりはこの協定書そのものが明記しているように、京大生協の組合員への責任なのである。この意味ではこれまでと何も変化がないのであり、協定締結はこれまで京大生協が行なってきた事業・活動が「実は大学全体のためなのだ」ということの自覚を新たにしたということになろう。

今回の相互協力協定締結はこれまで見えにくかった京大と京大生協の関係を目に見えるようにするチャレンジだった。とはいえ、これはまだ「形」であり、そこにこれまで以上に豊かな「内実」をどのようにして入れてゆくのかは、今後のチャレンジである。

(理事長 川添信介)

『Campus Life vol.36』(2013年9月号)より転載

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