全国大学生協連の研究会報告

現代女子学生の家族、結婚、仕事観〜データ分析やキャリア教育を通して

3月22日、全国大学生協連が後援し報道関係者が参加する第37回「学生の意識と行動に関する研究会」が、
「現代女子学生の家族、結婚、仕事観について〜キャリア教育と関わって」をテーマに、
東京大学駒場キャンパスにて開催されました。この研究会の概要をお伝えいたします。

近年の厚生労働省や日本産婦人科学会等の調査では、20代男女は恋愛経験もさほど多くはなく未婚率も上がっていますが、結婚願望は必ずしも低くはないようです。女性は、結婚も出産も遅めの傾向があります。

今研究会では、家族社会学のゼミ活動や講義を通じて家族や結婚などを考えていく法政大学と、全学教育でキャリア形成を養う力を身に付ける昭和女子大学、この二つのご報告を通じて、現代女子学生の家族、結婚、仕事観を探ります。

等身大の学生の事例とデータより自分を振り返り将来を考える

法政大学 キャリアデザイン学部
教授 齋藤 嘉孝氏

専門は社会学と社会調査法で、本学では家族社会学という立場から〝家族〟をテーマに親子、恋愛、結婚、新婚、夫婦生活、熟年という時間の流れを中心に家族の関係性を研究しています。

ゼミではデータを分析し卒論につなげる

ゼミでは、私はまず学生に、確実な証拠をきちんと示した実証論文をしっかりと読んでもらうことにしています。それは、これから2年半かけて実際に調査・分析をして書き上げる卒業論文がどういうものであるのかを認識してもらうためです。その中で学生は取捨選択を繰り返し、例えば親子の関係性や家庭環境などという自分なりのテーマをきちんと見つけ、問いを立てます。

3年次には自分たちでアンケートを作成し、同年代の学生300〜400人に配布・回収します。それをデータ入力し、分散分析、重回帰分析、クロス表分析など統計的な有意差を出すような手法を使って分析します。このような量的データとともにインタビューなどで得る質的データも反映させ、自分の過去と現在を検証して卒業論文につなげていきます。学生アンケートのテーマは毎年少しずつ違いますが、本日は「恋愛から結婚まで」をテーマに、2011年の統計的なデータを用いて学生の等身大の姿をご紹介します。

大教室の講義では学生の意識と実情を探る

講義では、私が作った事例に対する感想を学生に求め、その後にゼミ学生の作成したデータを示していきます。

《事例1:大学2年生20歳の女子》

異性と付き合ったことがないのをなんとなく引け目に思っているが、奥手だからか踏み出せない。今気になる男子はいるが、自分から切り出すことはできない。何とか相手にこの気持ちに気付いて欲しいと願っている。

講義における学生の感想:「引け目に思わなくてもいいのではないか」・「同じ20歳。まだまだ先は長いし、今まで恋愛経験ない人だっているんじゃない? 私もそうだし」・「こういう子も意外に可愛いので私は好みだ」(男子)・「相手に気付いてもらうのではなく、自分からもっと積極的に行くべきだ」

【交際の現状】

◆やっぱり恋人はほしい

異性と交際経験のある学生は86%。未経験者14%は少数派にみえますが、これは大教室300人を母体にすれば確実な少数派ではなく、けして引け目を感じることはないと話します。

交際未経験の主な理由としては、「奥手だから」(63%)が一番多く、事例と同様です。次は「容姿が良くないから」(39%)、「出会いがないから」(38%)と続きますが、未経験者の55%が「恋人がいた方がいい」と思っています。

初交際の年齢の平均は15・2歳。高校就学前に1度くらいは付き合った経験があるという平均値です。ただ、「13〜15歳」が52%で、それ以外に半分が分散しているので、15歳より後になるのは、けして遅いわけではありません。

現在、交際相手の有無は「いる」47%、「いない」53%で半々です。知り合った場所は「サークル」(32%)が最も多く、「同じ学校出身」は21%。「必修授業など学内」は14%。「アルバイト先」は11%ですが、これが結婚相手になると、「職場」は意外と高い値となります。「紹介・合コン」も4%と少なめです。

◆男子の方が惚れっぽい?

「どちらが最初に好きになったか」は、男子は「自分」40%、「相手」25%。女子は「自分」20%、「相手」50%と、男女に統計的な有意差がみられました。 「どちらが告白したのか」も同様で、男子は71%が「自分」から告白していますが、女子は「自分」からは9%しか告白しておらず、「相手」に告白された人が78%。男子は頑張って自分から告白する側に回っています。女子は20%が「自分」から好きになっても、実際「自分」から告白した勇気のある人は9%で半減しています。だから、《事例1》の女子、自分から告白できないというのは無理ありません。

◆恋愛における男女の傾向

「男子の方が異性の友人をつくりにくい」という研究があります。異性との交友を交際と勘違いしてしまいがちな男子に対し、女子は特定の男子と仲良くなっても深入りせずに友達は友達のままだと区別します。また、「女子の方が恋愛経験によってアイデンティティを確立していく」という研究もあります。女子は恋愛によって自分自身を見直し、自己の良さ、弱さを認識していく。一方男子は、恋愛経験による精神的な伸びはさほどみられません。

【交際から結婚へ】

◆6割が社会に出てからの出会い (この項のみ出生動向基本調査2015全国データから)

出会いから結婚までの平均交際期間は約4年強。結婚相手と知り合った場所で最多は「職場」(28%)でした。《事例1》では、学生のアルバイト先はなかなか相手を探す場につながらないという結果でしたが、社会人になると職場はそれなりに出会いの場になります。「人からの紹介」は31%で、「学校からの知り合い」が12%。学生時代に結婚を意識しながら付き合うということがどれくらい現実的でないかが分かります。旅先や習い事・見合いなどを含め、約6割が少なくとも社会人になってから知り合った人と結婚しているらしいという現実がみえました。

《事例2:大学4年生男子》

サークルで出会った同級生女子と付き合っている。互いにもうすぐ社会人、付き合っている相手は悪くない子だが、結婚相手とは何か違うと思っており、結婚について彼女と話すことはほとんどない。自分自身は30歳くらいまでには結婚をしたいという気持ちがあるが、時期が来れば別の人が現れると思っている。

講義における学生の感想:「付き合う人と結婚する人は違うと思う」(男女)・「今がよければそれでいいのでは?」・「結婚は当人だけの問題ではなく互いの家族なども絡むから、そういう相性も考えなければいけない。恋愛イコール結婚と考える必要はない」・「自分は結婚を前提に付き合うタイプなので、こういう交際の仕方をするのなら別れた方がいい」(男女)・「自分の相手がこの人だったら嫌だ」(女子?)・「中高生ではないので、年齢相応に結婚を意識した方がいい」

◆恋愛と結婚は別物? (以下、ゼミ生のデータに戻る)

《事例2》とは反対に、実際に学生は「今の交際相手と結婚について話したことが「ある」51%、「よく話す」14%と、3分の2は交際相手と結婚の話をしています。交際相手との結婚を考えている人は61%と半分以上になりました。とはいえ、やはり4割ほどの人が考えていません。しかし、6割の人が結婚を考えつつ卒業して、いざ社会人になると実際に学生時代から付き合っていた人と結婚するのは12%(前述)と、意外に少ないのがみえてきます。

晩婚と言われますが、結婚希望年齢は男子が約28歳、女子が約27歳で、ともに30歳前には結婚したいと思っています。しかし、実際の結婚年齢の全国平均は男子が約31歳、女子は約29歳。希望とは2、3年ズレがあります。

◆恋愛と結婚に求めるものの男女差

【容姿】「付き合う相手には容姿を求めるが、結婚相手には求めない」というのが大体の傾向です。これには男女差があり、男子は恋愛相手には68%、結婚相手にも47%が容姿を求めるのに対し、女子は恋愛相手には44%ですが結婚相手には20%と、5人に1人しか容姿を求めていませんでした。

【収入】男子は恋愛相手にも結婚相手にもさほど収入を求めていません。しかし女子は、恋愛相手には19%ですが、結婚相手には73%。時代が変わろうが、やはり女子は結婚相手に経済力を求めるという数値が出ています。

【家事能力】イクメンという言葉がありますが、女子は恋愛相手には13%、結婚相手には35%しか家事能力を求めていません。反面、男子は恋愛相手32%、結婚相手69%で、男子の方が結婚相手に家事能力を求めています。


女子大学のキャリア教育 ー昭和女子大学の事例を通してー

教育臨床社会学の立場から青少年のキャリア形成と教育支援を研究し、その知見を現場にフィードバックすることが私の職務です。

昭和女子大学 総合教育センター
准教授 望月 由起氏

顔写真

昭和女子大学の学生(2年生)のキャリア意識の傾向

本学は、かつては「お嬢様大学」と言われていましたが、男女共同参画社会を推進する坂東眞理子先生が学長に就任し、現在は理事長・総長を務めていることもあり、ここ数年でキャリア教育や支援システムを充実させ、「就職に強い大学」へと大きく舵を切りました。新入生が本学を選んだのも、就職状況が良いというのが一番の理由となっています。

私は共学の大学を経て本学に着任したので、女子大学に通う女子学生と共学の大学に通う女子学生とでは、女子学生のキャリアに対する働きかけ(潜在的なものも含めて)が異なり、受ける影響も違うだろうと感じています。本学の2年生を対象にした調査に基づき、彼女たちのキャリア意識の傾向を次に紹介します。

全体的に専業主婦を志向する人は極めて少数で、結婚や出産後も仕事と両立させたり、フルタイムやパートで再就職を希望する人が多くみられました。また、全体的に大変真面目で、卒業後の職業を意識して大学を選び、学生生活を送っていますが、初等教育学科・管理栄養学科のように、将来の職業を見通してその学科を選んだ人は非常に専門への意識が高いことも分かります。ワークライフバランスに関しては、圧倒的に肯定的です。反面、「男は仕事、女は家庭」というような性別役割分業に関してはかなり否定的です。

大学におけるキャリア教育のあり方

キャリア教育の学習成果については、どのような教育や支援を学生にどれだけ提供したのかという量的拡大の時期から、提供した教育・支援を実際に活用した学生がその結果どのように成長したのかを重視するという質的な深化へとシフトしてきていると思います。

図表は、私が担当したベネッセ教育総合研究所の調査です。「大学卒業後の進路の決定、検討のために活用したもの」について、まさにラーニングアウトカムの観点からの設問ですが、1・2年生はさほど違いがないのですが、3年生になると活用した学生が非常に多くなることが分かります。このことより、キャリア支援センター等が支援活動を本格的に始める3年次に向けて、2年次をもっと有効に活用し、いかに3年次につないでいくかが課題だということがみてとれます。

学生のインターンシップ参加状況
▲ クリックで拡大 ▲

昭和女子大学のキャリア教育

本学の特徴に、キャリアデザインポリシーを設定していることがあります。いわゆる3ポリシーとはまた別の視点から、社会的・職業的自立をキーワードに全学で掲げると同時に、各学科でも志向する職業や専門性を考慮して掲げています。
1年次に初年次教育としてキャリア科目を設定し、3年次に就職支援としてガイダンスや講座を開設するような大学は多いのですが、それが大学のシステムとしてきちんと体系化されているかは疑問です。本学では、キャリアデザインポリシーに基づき、2年次を生かしながら、キャリア科目や就職支援を体系付けています。

本学におけるキャリア科目は、「全学共通キャリアコア科目」を含む一般教養科目および各学科専門教育科目の総体から成り立っています。キャリアコア科目では、1年次後期に「キャリアデザイン入門」を全員必修で受講します。私が担当する2年次の「女性の生き方と社会」「女性とキャリア形成」は、選択必修の科目です。学科によりいずれかを選択しますが、いずれも卒業に必要な科目となっています。3年次以降は「企業と社会のルール」という選択の授業を設け、就職活動支援講座やガイダンスなども実施しています。これらに加え、4年次になると個別の相談にもきめ細やかに対応しています。

社会人メンター制度

本学には卒業生を含め社会人3年目以上の女性を募集して「社会人メンター」に登録してもらい、自らの経験に基づき、学生に人生設計や働き方などについて助言をいただくという制度があります。現在の登録者は300人を超えており、年齢は20〜70代、経験職業や職種は100種類以上で海外勤務経験者が多いのが特徴です。
交流内容には、主に以下の三つのプログラムがあります。

*メンターフェア(月2回程度)
さまざまな経歴のメンター約10人がテーブルに1人ずつつき、学生は話したいメンターと自由に交流します。

*メンターカフェ(月1回)
ワークショップ形式で、40人ほどの学生が順に4人のメンターとお茶を飲みながら設定されたテーマに沿って懇談します。

*個別メンタリング(随時)
学生が自分の関心のある業界や職業のメンターと一対一で面談します。

いずれも、メンターの方に来学してもらうので、学生は必要以上にお金や時間を費やさずにこのような機会を得られます。1年生でも利用でき、3年生になってから慌しく行う、就職だけのための制度ではありません。大卒者の就職状況も一時に比べれば落ち着き、就職だけを目的としない教育支援へのニーズも高まっていると感じています。

2年次キャリアコア科目の成果と課題

私が担当する「女性とキャリア形成」では、自己分析やキャリアの理論を中心に学びます。「女性の生き方と社会」では、女性の労働や生活、男女共同参画社会、現代の雇用環境などがメインになります。学科により受講する科目が決められていますが、キャリアデザインやワークライフバランスといった重要なテーマはどちらの科目でも取り入れています。

この授業の中では、学内キャリア支援システムの活用も促しています。社会人メンターの講演も授業に取り入れ、先ほど紹介しました社会人メンター制度の利用レポートは成績評価にも考慮しています。授業が終了しても3年次以降の本格的な就活(の準備)の架け橋になるよう、学内にこのようなシステムがあり、それが役に立つという実感を得てほしいという思いからです。

学生からは「女子大っぽい」「昭和女子大ならでは」という声が聞かれます。また、「学内の支援(特に社会人メンター制度)が役立つということが分かった」との感想もありました。社会人メンターは一回きりのゲストではなく、学年が上がっても会って話を聞くことができるため、「安心した」という2年生が多く、「3年生になっても活用したい」という声もあります。

中には現実に直面して不安を覚えたり、この授業を受ける意味が分からないという学生もみられます。しかし、現実を意識したり疑問に感じたりすることが、今すべきことを真剣に考える機会となり、結果として、各々の成長につながるように、授業担当者として難しさを感じつつも指導していきたいと思っています。


学生の方たちからの意見
学びを通して結婚観・職業観を確立し将来の社会人像を描いていく

研究会には都内の大学に通う女子学生6人が参加。斎藤、望月両先生の報告に対する感想や意見を述べました。

女子は結婚に憧れる?

女子大出身で、「周りには交際している人がほとんどいないという状況で育ったので結婚に憧れを持つ人が多く、『30歳ぐらいまでには』と話している」と言うのは石原佳奈(十文字学園女子大学4年/全国大学生協連東京ブロック)さん。ただ、「交際経験が少なく、夢見がちで現実を知らない部分もある」と分析します。

井坂恵(早稲田大学1年/出版甲子園)さんは、かつて出版甲子園の関連団体で大学生の結婚観の記事を取り上げたときに、周りの女子が結構結婚願望が強いのを知り、自分はそれほどでもなかったので驚いたという経験があります。木村律子(法政大学4年/斎藤ゼミ所属)さんも、ゼミの授業で結婚に関するデータを読んだり議論したりする機会が多かったので、「割と現実的に結婚を考えるようになった。あまり結婚に夢を見なくなり、早い年齢で結婚したいとは思わなくなった」と言いました。

斎藤先生は「結婚への憧れを4択で聞くと、『まったくない』『あまりない』の合計が2割ぐらいで、5人に1人が結婚にさほど憧れを感じていないという現状がある。ただ、結婚を実際にしたいかしたくないかという2択に迫ると、96%の人が『いずれはする』で、『しない』と決めてかかっている人は4%。大学生全体の29%が結婚に何らかの憧れは持っているが、内情は男子が14%、女子が37%で、女子の方が結婚に対する理想や憧れを持ちがちだというのは、データにも倍以上の点数で出ている」と述べました。

現実と向き合うきっかけに

池上味花(津田塾大学3年/全国大学生協連東京ブロック)さんは、大学では進路ガイダンスや女性の生き方についての授業はあっても、特にキャリアについての授業を受けたことはありませんでした。周りの友達とも1年生のときから将来の話をしていたので、「昭和女子大のように2年次からキャリアを考える授業があったら、自分の考え方も変わったかもしれない」と言いました。

また、望月先生が報告の最後で「女子学生は社会に対する関心が低い傾向がある」と指摘したことに対し、吉田香織(慶應義塾大学2年/出版甲子園)さんは、「女子は自己への関心は男子よりも高いと思うが、社会的な事柄に関してはあまり関心が高いとはいえない」と振り返り、「報告を聞き、結婚・就職に関してもこれから社会の中で現実と向き合っていくことを考えるきっかけになった」との感想を持ちました。

望月先生は、「一概には言えないが、女子は仲間内のコミュニティに帰属し、社会について実感的に考える機会が少ないのかもしれない。男子は社会に対して向き合うとき、無意識のうちに自分が当事者になる可能性を感じているのかとも思う。母親と話すことの多かった女子が、就活をきっかけに父親と話すことで違った刺激を受け、考え方が変化していった例もみられる」と説明しました。

4年間の学びで得た成長

4年生の参加者は自身の学生生活を振り返り、「学部で1年次からキャリア教育を受け、斎藤ゼミでインターンやインタビューを経験して、自分の意見を練り上げた上でさまざまな人の生き方や考え方を吸収することができた」(木村さん)との感想を述べました。

同じく榊宏美(法政大学4年/斎藤ゼミ所属)さんはゼミ活動を通して、ワークライフバランスを考えながら仕事と育児を両立させている女性にインタビューしたり、ボランティアで子育てサロンに赴いて、働いていない女性の子育てに対する想いを伺ったりしました。それらの経験とゼミでの討論から、「子育ての仕方もさまざまで、正解は一つとは限らない。自分の将来の生き方や働き方について深く考えさせられ、多様な価値観を受け入れられるに至った」と言いました。

石原さんは「大学の授業も実践的なものが多く、実際に現場に出て肌で体感するという経験を4年間させてもらい、自分はこういう社会人になりたいというイメージを膨らませることができた」と述べ、これから羽ばたく社会への希望を語りました。

(編集部)


出版甲子園についてはこちらから→http://spk.picaso.jp/

学生の方のお名前は仮名です。学年は2017年3月当時の学年を掲載しました。4年生の方3人は卒業された直後でした。

『Campus Life vol.51』より転載