全国大学生協連の研究会報告

情報教育の成果も?
変化の速いSNSを自在に使いこなす大学生

9月25日、全国大学生協連が後援し、報道関係者が参加する第39回「学生の意識と行動に関する研究会」が、「SNS -大学生の利用実態を探る」をテーマに、大学生協杉並会館にて開催されました。
この研究会の概要をお伝えいたします。

フェイスブック2700万人、ツイッター4000万人、インスタグラム1600万人、LINE6600万人が、国内で使われている4大SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の2016年の利用者数といわれています。
今研究会では、学生をはじめとする若者のSNSの利用実態を把握することを目的の第一に置きました。最初にSNSにおける学生の利用動向と人間関係に及ぼす影響についての調査報告をいただいたうえで、学生の方に質疑応答や意見交換を通して、生の声で語っていただきました。

SNSによる大学生のコミュニケーションについて
―自己開示度および自己隠蔽度が人間関係に及ぼす影響―

広島女学院大学国際教養学部教授
中田 美喜子氏

顔写真

人間関係の変化

 SNSやブログなど、インターネットを介した人間関係が広く浸透しています。
私どもの学生調査より、学生はネット上で同じ趣味の人、気の合う人と友人になっても、ネット上と実在の友人を区別し、対面の友人関係をより深い人間関係ととらえているということが分かりました。

 一方で、学生はその実在の友人とは非常に気を遣いながら関係を保っています。自分の気持ちや考えを伝えることを避けて自己を隠蔽し、友人の評価に過敏で嫌われないように「傷つき回避行動」をとる傾向があるという結果になりました。

 最近の私立大学の多くは、チューター制度をとって学生に個別指導を行います。
こうした今の学生の特徴を理解し指導に生かすためには、その人間関係の変化を
検討する必要があり、それが私どもの研究のきっかけの一つとなっています。

SNSの普及と問題点

 SNSを毎日利用する人は、2007年度は10%以下でしたが、11年度には50%以上になりました。専用パソコンやスマートフォンの所有率の上昇とともに、SNSも非常に普及してきています。

 1995年の阪神・淡路大震災のときには、従来の通信網が遮断され、インターネットの必要性の大きさを感じたという報告がされています。2011年、東日本大震災においては電話が不通になり、中継局のほぼ全壊により携帯電話もメールもすぐにつながらなくなりました。その時に通常と同じように使えたのがツイッターでした。実際に政府や各自治体報道機関もツイッターに情報を書き込んでいたため、情報入手手段として大変有効だったと発表されています。

 2016年の熊本地震でも、過去の経験からSNSを有効活用されたのですが、反面デマが流れたり、反感をかってSNSが炎上するということが起こりました。東北の震災のときにもガソリンのにせ情報が流れたことがあり、私たちは本当にさまざまなことを検証して改善していく必要があると思います。

 最近の学生はほとんどメールを使わず、LINEでのやり取りをしています。リアルタイムで会話しているようにみえますが、即時に返事を求められるような時間的切迫感を感じるとはよく言われることです。一度にたくさんの人にメッセージを送れるという点では確かに便利ですが、グループの人間関係に悩んだり、誹謗中傷を受けたり、バーチャルなやり取りだけなので孤独感を感じるというようなことも報告されています。

※2007年〜10年に行ったアンケートではSNSの利用率が低く回答率が低かったため、2014年の調査では「SNS(LINE、フェイスブック、mixi)」と一括りにして質問した。
しかし、2017年以降アンケートを取るとしたら、項目ごとに分けても十分集計できると思われる。

SNSにおける自己開示

 報告する調査は、2014年7月〜10月に実施しました。対象は広島県内の大学生581名(男子171名・女子410名)です。1、2年生が多く、平均年齢が18・9歳となりました。65の質問項目には5段階で回答してもらっています。

 1日のパソコンの使用時間は男子の方が少し多くなったのに対し、携帯電話の使用時間は女子の方が大変多くなっています。SNSの利用頻度についても、「ほぼ毎日利用している」のは女子の方が多く、「利用したこともないし今後も利用する予定はない」のは、男子の方がパーセンテージが高いという結果でした。

 書き込む割合が高い内容=自己開示度の高い項目には「食べたものや飲んだものについて」、「趣味や興味を持っていることについて」、「本・映画・音楽について」、「友人について」がありました。これには男女差がみられ、女性の方が「よく書く」+「時々書く」人の割合が高いという結果になりました。そのほかの項目には、「休日の過ごし方」、「最近楽しかったこと」、「夢中になっていること」、「楽しみにしているイベント」等、楽しくて当たり障りなく皆に発信できるようなことが多く書き込まれています。この傾向がそのまま現在のインスタグラムの利用増大に反映されているのではないかと思います。

 逆に男女共に書き込まない項目は、「自分の異性・恋愛関係」です。それから「世の中で話題になっているニュース」や「悩みや不安、心配について」。国会でも取り上げられた保育園の問題は女性が書き込んでいたと思われますが、大学生の場合は、「社会への不平不満」はあまり書き込まない項目になります。それから「将来の夢や目標」「自分が大切にしている価値観」。表面的なことは書くけれども、そうではないもっと大切にしているもの、本当の自分というのはやはり書き込まない傾向にあるといえるかと思います。

自己隠蔽度について

5点満点で平均3以上の得点項目

  • 自分について人に話してないことがたくさんある
  • 隠しておきたいことを知られてしまうのが怖いと思うことがある
  • 自分の秘密を話しても良いことはほとんどないから、できるだけ話さないようにしようと思う

SNSにおける自己隠蔽

 自己隠蔽に関しては、平均値から自己隠蔽度の得点が高い群と低い群に分かれたので、この二つに分けて分析しました。

 コンピューターの利用時間は、自己隠蔽度の高い群の方が若干長くなりましたが、これにはアンケートの収集時期も多少影響したかと思われます。

 友人の数には有意差がみられ、自己隠蔽度の低い群の人たちは有意に友人が多いという結果になりました。また、「学内の友人はうわべだけの付き合いが多いと思うか?」と聞くと、高い群では「うわべだけの友人である」との回答が多く、低い群では「そうとは思わない」という回答が50%以上になっています。

 SNSの書き込み内容については、高い群・低い群ともに「落ち込んだことについてはあまり書かない」という傾向がみられました。さらに「ささいな欠点かもしれないが、時々落ち込んでしまうということを書き込むか?」との質問には有意差はなく、双方とも「どちらかというと書き込まない」という結果でした。ただし、自己隠蔽度の低い群は高い群に比べて、落ち込んでいることについても少し書き込むというような傾向があったので、全体としては自己隠蔽度が低いほどSNSやブログなどへ書き込むということがいえます。自己隠蔽度が高い群ではSNSやブログへの書き込みはどの項目でも少なく、書き込む場合でも注意深く書いているという結果になりました。

今後の活用方法と課題

 2017年現在ではスマホの保有率が上昇し、この調査のときよりさらに気軽にSNSに投稿されているといえます。インスタグラムなどには、深い内容ではなく、見映えのよい写真など自己開示の高い項目の投稿が増加しているようです。

 投稿内容の変化としては、個人情報に注意して書き込むという傾向があります。これは高校の情報教育が必修化され、情報倫理をある程度学習しているためで、高校までの情報教育の成果があったのではと思います。

 さらに、大学では入学時にメールアドレスを全員に配布し、大学のポータルや メールの使い方の基本を指導して個人情報の教育をします。学習成果として、さまざまな危険を察知し回避することが身についてくるのではないかと考えられます。

 2014年の調査結果報告を振り返ってみると、SNSにおける変化の速さを感じますので、継続調査で比較検討する必要性を痛感いたしました。


学生の方たちからの報告
SNSはもう日常に欠かせない ―つながる、情報を得る、発信する、共感される―

研究会には都内より4人の大学生が出席し、参加した記者からの質問に応じ、自身のSNSの利用動向を話しました。

参加者

  • 大谷慎二さん (明治大学経済学部4年/出版甲子園)
  • 鈴木倫子さん (早稲田大学文学部2年/出版甲子園副代表)
  • 瀬川透さん (東洋大学国際地域学部観光学科3年)
  • 園田淳子さん (東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科2年)

LINEは友達との連絡に必須

―SNSをどう利用していますか?

大谷
僕は情報通信全般に興味があります。特にツイッターは、普段の交友関係とは異なるさまざまな人からの意見を聞けるので、面白い文化だと思います。今日の報告とも関連しますが、自己承認欲求が高い人ほどいろいろなツイートをして、見知らぬ人からも「いいね」とリツイートが来ることを重視するような風潮は、ツイッター上でよく見られます。インスタグラムなどがすごくはやっているのも、自分のいいところを見せるというよりはむしろ「いいね」(共感)が欲しいという動機に基づいているのかと感じています。

 そのほかは情報収集にフェイスブック、連絡用にLINEを利用しています。

鈴木
Gメールは大学や先生方、社会人の方々とのやり取りによく使いますが、いわゆるEメールは自分から発信することはほとんどありません。友達や家族、サークルのメンバーとのやり取りはLINEです。ツイッターとインスタグラムは、たまに呟いたり写真を投稿したりしています。特にツイッターは知らない人とも関われるので、趣味に関する情報収集に有効です。

瀬川
最近では友達とのやり取りに電話やEメールを使わないので、LINEなしには連絡ができません。同様にフェイスブックも連絡がメインで、国際的なやり取りはメッセンジャー機能を使って行います。ツイッターに関しては、僕の専攻は国際観光学科なので、観光地についての情報収集に利用しています。旅先で撮った写真はインスタグラムにあげます。

 報告の中の男女別の書き込み内容の傾向にすごく共感しました。ツイッターやインスタでは男子はアクティビティがメインであるのに対し、女子は楽しいもの、スターバックスやナイトプールの写真の投稿が多いと個人的に感じていました。

園田
大学生ではまれかもしれませんが、私はSNSはLINEしかやっていません。ほとんどの友達の連絡先はLINEしか知らないし、個人情報をあまり知られたくないので。友達の多くはツイッターをやっているので、最近は時々友達との会話に入れないと思ったりしています。

― 就活では社会人と電話で話すこともありますが、普段から電話を使っていますか?

大谷
電話は、日常生活においては緊急性の高い連絡以外、ほぼ使っていません。僕は公務員志望だったので就活では民間を見ていませんが、一般を受けた友人に企業から非通知で電話が来ると聞き、不便だろうなと思いました。採用される側からすると、常時電話を受けられるようマナーモードを解除しておく必要があるので落ち着きません。また、即レスを返さなければならないので、メールのように文章を考えたり、スケジュール調整がしにくいところがあると感じます。

鈴木
電話はLINEの無料電話がメインです。携帯にかかってくることはまれなので、登録していない番号から着信があると、1回無視して、再度かかってきたら取るという感じです。

 また私は、電話をかけるときは相手に電話をかけてもいい状態か、LINEで確認してからかけるようにしています。

瀬川
日常生活では待ち合わせのときなどに現地で電話を使っています。

 就活はまだしていませんが、大谷さんのお話を聞いて、会社の方から電話がかかってきたら即座に出なければいけないので、気が抜けないなと思いました。

大谷
大学生の間では作業をしながら通話をつないでいる状態の〝さぎょイプ〟という文化があります。レポートを書いたりゲームをしたりしながら、同時にパソコンでスカイプをつないで雑談もするということで、割と僕もやっています。

ツールの使い分け・使い方―

ツイッターのアカウントは複数使い分けていますか?
また、LINEの「即レス」「既読スルー」にプレッシャーは感じますか?

大谷
ツイッターのアカウントは二つ持っています。一つは高校生のときから使っていて、いろいろなアカウントとすでにつながっているもの。もう一つは完全に外に見せることを意識して、趣味に絞った特定の目的で使うものです。

 LINEに関しては、僕は即レスをしない主義です。気が向いたときに反応を返しているのでプレッシャーは特に感じていません。

瀬川
僕も高校からのと大学入学後のと二つアカウントを持っていましたが、フォローし直してもらって、今はアカウントは一つでやっています。LINEは、だいたいはすぐに返さず、自分が携帯を使っているときだけ、通知やバナーの表示を見てレスポンスするというかたちになっています。

園田
内容により、即レスしたり後で返したりしています。通知はほとんどONにしているので、開いたときにLINEが来ているのに気付けます。

― 大学受験時はSNSを規制しましたか?

大谷
大学受験期に入ったときには、SNSは特に何も対処せず、ツイッターは放置でした。LINEも連絡が来たら普通に返すというかたちで、何も制約をつけませんでした。当時はメールもまだ若干使っていましたが、同じ扱いでした。

鈴木
高校時代は、自分でかなりセーブしていました。インスタグラムはやっていませんでしたが、LINEとツイッターは勉強の合間の息抜きにしていたので、普段の学習と受験時は大差ありませんでした。でも大学に入ってからのSNS利用時間は長くなったので、今の自分が大学受験をしたら、絶対に失敗すると思います。

瀬川
受験時はスマホを持っていなかったので、ツイッターもLINEもフェイスブックもパソコンでやっていました。パソコンを立ち上げるという手間が面倒だったので解約もしなかったし、自分で制約もしませんでした。

園田
勉強するときは電源を切り、食事や休憩のときに携帯を見ていました。LINEのアカウントは興味のあるものしか見ていないので、SNSは勉強の支障にはなっていないと思います。

リスクにどう対処するか

― 膨大な情報の虚偽をどのように判別しているのですか?

大谷
投資情報などは確かにたくさん見ますが、ツイッターで流れてくる情報の中には、統計の解釈を正しくないようなかたちで投稿しているツイートは数多く見られます。また、リスクを一切提供せずに都合のいいことばかり言っているのであれば、きっとそういう商業的な意図があるのだろうなと思います。そのようなものに関しては、最初からたいして重要でない情報として処理しているところはあります。いろいろな手口があるということを知っているので、あまり真に受けていません。経験則に基づくところで判断しているという印象があります。

鈴木
自分の身の回りでも実際にSNSでトラブルに巻き込まれたという人を聞いたことがないので、不自然なアカウントを不自然だと感知できるようになっているのかという感じがあります。また、今は広告がすごく自然に紛れて流れてくるので、間違って触って高額請求などにならないように気をつけてはいます。

 根本に公式の発言でないものは基本的に信用してはいけないという理解があるので、危機回避をそこまで特に意識しなくてもできているのかなと思います。

瀬川
僕もツイッターの発言に関しては、チェックマーク、公式マークを見て、何かに関する発言で誰かがツイートしていたら、それに関することを公式アカウントの方で見たり、GoogleやYAHOO!で調べてみたりします。

― SNSが被害を広げる道具に使われ、大学生が狙われているという現実があります。

大谷
詐欺と同じで、手口はどんどんエスカレートしていきます。それに教育が追いつくのには行政上のプロセスから考えても結構長い時間がかかってしまって、対応しきれないところもあると思います。どちらかというとアプリケーションのサイドから何らかの規制やクラス分けなどのかたちでフィルタリングをかけるしかないのかというふうに思います。

鈴木
私はタイムラインに不快なものが流れないようにする設定をしています。初めて携帯を持ったときには親がアクセス制限をかけました。安全に使えていたので、中学生にはとても有効だったと思います。現在は、不自然だと思うものには立ち入らないのが一番の自己防衛ではないかと思います。同時に、問題が起こったとき、まず自分で解決していく力を身に付けるべきだと感じています。

瀬川
僕も最初に携帯を持ったときにフィルタリングがかかっていたので、やはりそれが一番有効なのかと思っています。大学合格後、スマホに替えるとともにフィルタリングが外れましたが、やはり解放感があると思うので、新入生に向けて入学前のガイダンスのときに、SNSの注意喚起の講座があったらいいと思います。

園田
最初の携帯はガラケーでしたが、ネットが全部できないように制限されていました。スマホに替えてから何も制限がつかなくなったので、自分から怪しいサイトには入らないようにしています。人に相談するのも大事だと思います。

共感を得られれば単純に嬉しい

― SNSにおける自己承認欲求について思うことはありますか?

大谷
当たり障りのない内容を呟いても「いいね」はかせげません。ツイッターの世界はすごく投稿数が多いので、やはりその中で注目を集めるために、事実をベースに脚色を加えて編集した情報を面白おかしく書いて投稿するという手段はよく見られます。そういったかたちでいろいろな人に「いいね」を押してもらって自己承認欲求を満足させるような傾向はあるかと思います。

鈴木
私は単純な人間なので、「いいね」が来ると単純に嬉しいです。特にインスタグラムは、自分がカッコよく撮れた写真をいろいろな人に「いいね」してもらえるととても嬉しいです。でも私はフォロワー数が多い方ではないので、誰かを介した友人とか、最低限どこかでつながっている人からしか「いいね」をもらう機会はそんなにないですね。

瀬川
僕も単純なので、やはり「いいね」がたくさんあれば嬉しいです。でも、ツイッターは鍵を付けた非公開のアカウントなので、やはりなにかしら関係のある人でないと「いいね」もできません。他のまったく知らない人から「いいね」をもらっても、正直戸惑うことはあります。


参加学生は皆、高校時代からSNSに馴染んでいて、ツールの特性をよく知ったうえで効果的な使い方をしていました。また、利用に伴うリスクについては回避の仕方を身に付けており、極めて冷静な対処をしていました。

度自分で危機を回避できる年代。下の世代はさらにSNSがより身近になってくると思うので、これからは中高生あるいは小学生に向けた情報教育がより必要になっていくと思う」との意見に対し中田先生は、「危機対応がまだ身に付いていない大学生への教育はもちろん必要だが、今は小学生からプラグラミングを学習する時代。これからは学習指導要領が変わって、下の学年から情報リテラシーの教育を受けた学生が上がってくる。それに期待するとともに、やはり家庭の中でも話し合いの機会を持つことが重要だと思う」と結びました。

(編集部)

学生の方のお名前は仮名です。

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『Campus Life vol.53』より転載