国際活動

ユニセフネパールスタディーツアーに参加して
~地方自治の自立への支援~

2012年2月18日から26日までの9日間、全国大学生協連はユニセフスタディーツアーに学生を代表として送りました。 このツアーは、参加者が現地で行われているユニセフの活動を実際に視察し、現地の子どもの状況とユニセフへの理解を深め、帰国後に各々の所属する組織や地域での募金活動・学習会などのユニセフ協力活動に、その経験を生かすことをねらいとして行われています。


幼児教育開発センター(日本の幼稚園にあたる施設)での文字の勉強の様子


ファシリテーターの女性。コミュニティーでは男性も活躍しています

多民族・多言語国家根付くカースト制不安定な政治状況

今回のスタディーツアーでは、ネパールの東南部のサプタリ郡という地域を視察しました。ネパールは北海道・東北の地域生協が指定募金として募金活動を行い、支援を行っている国です

ネパールは東西に長く、北は中国(チベット)、南はインドに接しています。北部に世界最高峰のエベレストを有し、南北の高低差がとても大きな国です。多民族・多言語国家でもあり、開発が大きく遅れている要因の一つとなっています。また、主要な宗教はヒンドゥー教です。国民の中ではカースト制度が根付いており、文化・慣習の中での(低カーストの住民への)差別が子どもや女性の権利の侵害へとつながっています。

政治状況は、1996年に王制に反発する内戦が発生し、2006年に和平協定が締結され、08年に民主共和制に移行しました。新憲法制定に向けた制憲議会が発足されたものの、政党同士の勢力争いなどによって、民主共和制移行後4年経つ現在でも新憲法が制定されない状況です。それゆえに民主的な地方自治はなされておらず、行政サービスが決してしっかりとしているわけではありません。

子どもと女性のためのプログラム


ユニセフが支援した村落での非公式教育を受けた女性が、学んだことを生かしてお茶屋を開き、自立した生活を送っています

ユニセフは、2000年代からDACAW(地域主体の子どもと女性のためのプログラム)に取り組んでいます。今回視察したサプタリ郡もDACAWの実施自治体の一つです。DACAWは子どもの発達や子ども・女性の権利の保護の上で存在する問題、つまり教育アクセス(特に女子)、暴力・搾取、母親の健康、妊産婦ケア、水と衛生、HIV/AIDSを包括的に解決していくプログラムです。

このプログラムの特徴は、存在する問題に住民自身が気付き、自分たちが解決策を考え、実践するというプロセスを支援する点です。女性グループや子どもクラブなどの集落内のコミュニティーを形成し、それらのコミュニティーのまとめ役となるモビライザーや、モビライザーを指導・支援する役割を持つファシリテーターを住民の中から選び、研修し、彼らを中心とした住民による自治を促進しています。

子どもたちの社会参加を促す


南アジア地域のユニセフが生み出した女の子のキャラクター"ミーナ"。
"ミーナ"を主人公とした本やアニメを作り、女子の生活の意識改革を啓発しています

今回はさまざまな行政レベルでのDACAWや、さらに発展し地方自治体と協力して取り組むCFLG(子どもに優しい地方自治)のとりくみを視察しました。その中で、とある村落の“Jamarko Initiative”という青少年グループのとりくみが印象的でした。

これは、日本の中学・高校生くらいの世代の子ども会のようなもので、子どもたちの中でのさまざまな問題をみんなで話し合いながら解決していくというものです。子ども同士でロールプレイなどのゲームをしながら、自分たちの中にある問題を発見していきます。

らの中の問題では特にカースト制度によるものが目立ちます。低カーストの子どもへの差別的な扱いや女子の早婚の問題などがあり、それらが良くないこと、改善すべきことを子ども同士で気付き、解決していきます。解決に向けたとりくみも子どもらしく、啓発する劇などを通じて楽しく行われています。このとりくみを通して、子どもの社会参加を促し、村落にある問題を子どもたち自身で解決していくことで、子どもたちの想いや力が大人たちにも良い影響を与えることができていることに感心しました。

ユニセフのとりくみはどちらかといえば物資支援などのハード面の支援のイメージがありました。しかし、今回ネパールのDACAWとCFLGのプログラムを視察して、ハード面の支援も大切ですが、住民や自治体そして政府が自立して発展していくためには、自立できるような教育プログラムなどのソフト面の支援の重要性を知ることができました。

東日本大震災の発生後、私たちは被災地の復興に向けたさまざまな支援を行いましたが、これからもさらなる支援が必要です。この状況の中で国際貢献について考える、実践する機会が減ってしまっているのが現状かと思います。しかし、ユニセフを含め震災復興に向けて諸外国からの大きな支援を受けていることや、これまで行った支援の継続が意味をなすことを考えると、やはり少しでも国際貢献のためにできることを考えていきたいと思います。大学生協としてもユニセフ募金活動を再加速させていきます。

(全国大学生協連学生委員 倉元祥伍)

『Campus Life vol.31』(2012年6月号)より転載