激甚災害支援・防災

今回、岩手大学生協学生委員会の皆さんに、震災当時のそれぞれの体験、入学までのことそして、今年4月に新入生を迎えるまでの1年を振り返って、座談会形式で、お話していただきました。 司会は、岩手大学生協 宍戸研専務理事に担当していただきました。

岩手大学生協出席者

  • 宍戸 研さん(専務理事・司会)
  • 三浦季喜さん(工学部3年 宮城県仙台市出身)
  • 後藤真朗さん(人文社会科学部2年 岩手県大船渡市出身)
  • 高橋みきさん(教育学部2年 宮城県石巻市出身)

あの日から入学まで

左から 後藤真朗さん、高橋みきさん

左から 後藤真朗さん、高橋みきさん

左から 宍戸研専務理事、三浦季喜さん

左から 宍戸研専務理事、三浦季喜さん

司会:まず地震発生時、皆さんはどうしていましたか。

三浦:生協のサポートセンターで、新入生にアパート物件を紹介していました。みんな一斉に携帯が鳴って、びっくりしましたね。

後藤:僕は外出先から帰宅したばかりでした。このときは地鳴りがして地震が来るまでが早かった。これは津波が来るんじゃないかと思いましたね。近所の人たちの様子を見ようと思ったら、高台に人が集まっていて、まもなく津波が来るのが見えて…。揺れてから10分くらいだったと思います。

高橋:私も自宅で、翌日の後期受験を控えて、小論文をまとめていました。地鳴りが今までにないくらい大きくて、「大津波警報」という言葉も今まで聞いたことがなくて怖くなりました。近所の人の車で近所のホームセンターの屋上に避難して、結局私は4日間、屋上にいました。

司会:そのあと、入学するまではどのように暮らしていましたか。

高橋:とにかく自分は合格しているとはいえ、これで入学できるのか、ずっと不安でした。郵便物も届かず、大学からの連絡もなく、ホームページも見られなくて、携帯も使えませんでしたから。新学期の日程は、盛岡の親戚が、苦労しながら車で知らせに来てくれました。

司会:入学の準備を始めたのは、それからですか。

後藤:いいえ、準備どころではなく、次の日どうやって生きるかで精一杯で、とにかく不安でした。まず4月末にやっとアパート探しに行きました。サポートセンターでいろいろ話しているときに、やっと「大学に行くんだ」という実感が湧いてきました。

高橋:私はホームセンターから戻って母親と再会してから、避難所に移りました。4月もだいぶ過ぎてからいろいろ準備を始め、やっとこれから大学に行けるんだと感じました。

司会:後期の合格発表は、どうやって知ったのですか。

高橋:仙台のいとこが調べて教えてくれていました。アパートを探しに行くことができなかったので、岩手大学に入学する友達に頼んで、自分のアパートも決めてきてもらいました。盛岡に来て初めて「あっ、ここに住むんだ」と思いました。

三浦:盛岡は被害も少なく、最初から自分は被災者ではなく支援する側だと思っていました。仙台で父親の友人を捜して、遺体安置所を回りました。その人は今も行方不明です。そのような状況を見て回っているうちに、ボランティアをしたいと思うようになり、昨年4月3日に、全国大学生協連のボランティアに参加してきました。

また避難所よりアパートの方が良いと、4月初旬に引っ越してきた新入生向けに交流企画をやりました。それから「フロム岩大生(新入生向けのメルマガ)」で、とにかくいろいろな情報を送りました。その後も、何かやれることはないか、いつも考えていました。

今年の新入生はもっと大変だった

新入生サポートセンター

新入生サポートセンター

司会:1年が経ち、新入生を迎える側になって、どう思っていましたか。

高橋:昨年5月ごろ、高校の後輩から、「大学に行けるのか不安」というメールをもらいました。私の母校は避難所にもなり、しばらく授業もできずに日程がずれ込んだり、他の学校の生徒も入ってきて大変だったんです。後輩たちはそんな環境で受験勉強していたので、私たちとは違う不安を抱えていました。今度は、自分たちがしてもらったように、できるだけ不安を解消してあげたいと思っていました。

後藤:夏に出身高校の先生方から話を聞いてきたんです。あの1年間を高校3年生として過ごした後輩たちは、おそらく自分たちよりも辛い思いをして、不自由をしてきたんだろう、まず何よりも大学に入れたという実感や、喜びを感じてもらえたらいいなと思っていました。不安に応えることも大事だけど、それよりも新生活を祝ってあげたい。これからの生活の希望を大きくしてもらえたら、その方が良いと考えていました。

企画を終えてみて

フレッツ・フレンドサポート2012 ミーティングの様子
フレッツ・フレンドサポート2012
ミーティングの様子

司会:2人は後輩たちの震災後の1年間の高校生活の方がもっと大変だったのではないかと思っていたわけですね。

では「フレッツ・フレンドサポート2012」の企画を終えてみて、感想を聞かせてもらえますか。

後藤:初めは企画として大丈夫なのか不安でしたが、協力してくれた先輩も新入生も笑顔で、やって良かったと思いました。喜んでもらえたので、まずは成功だったと思います。

高橋:グループリーダーや新入生の笑顔を見て、良かったなあと思いました。自分たちがしてきたことが間違っていなかったんだと感じて、安心しました。

三浦:大成功させることより、プラスアルファを届けることが大事だと思います。生協学生委員会の活動は、やることで少しでもプラスになっていけば良いんだと思います。新入生も喜んでくれたし、友達をつくってくれたし、成功と言って良いんじゃないかな。

新入生へのメッセージ

司会:最後に、新入生へのメッセージをお願いします。

高橋:大変だった中、本当に入学おめでとうございます。

後藤:いろいろな選択肢が増えるので、自分を律しながら自分のやりたいことをやっていってほしいです。

三浦:とりあえずいろいろなことをやってみよう。大学4年間を、ただの通過点にしてほしくない。ただ単位を取るだけの大学生活にならないようにしてもらいたいです。