<寄稿> 優秀な人材が進学できる大学院であってほしい

慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科/東京大学大学院情報学環教育部 在学中
(株)笑下村塾 代表取締役 お笑いタレント たかまつなな

(株)笑下村塾 代表取締役 お笑いタレント たかまつなな

みなさま、御機嫌よう。たかまつななでございます。私は現在、プロのお笑い芸人として活動しながら、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科と東京大学大学院情報学環教育部に通っております。慶應義塾大学は、学部の頃から含め、6年目になります。同じキャンパスなのに、大学院という場所は異質でした。大学院生活とは、一体どういうものなのか、私が大学院に入って初めて知ったことを中心にご紹介します。

まず、大学院に入って驚いたのは、留学生が多数派のクラスで、授業のレベルが学部に比べ、下がったと感じてしまったことです。クラスの中で日本人が一番少ないというのは、よくあることです。海外留学生が多いことは、国際色が豊かでいい反面、日本語がほとんど喋れない人もいます。中には、幼稚園のクラスのように、先生がゆっくり日本語を話し出し、課題の趣旨を理解せずに来る学生もいました。しかし、悪いことばかりではありません。私は主権者教育をテーマに研究をしていますが、ドイツ人、中国人、韓国人の学生から、彼らの国でどのような政治教育が行われているのか、聞くことができたり、日本人が多数派ではない環境で、日本の常識を疑うことができるようになりました。

日本人の学生を見ても、研究者になるという強い意思をもった人ばかりではなく、就活がうまくいかずに院に来たという人もいました。全国大学生活協同組合連合会の「第9回大学院生の生活実態調査」によると、大学院進学の理由として、就職先がなかったと回答した人は、文系では5・5%いました。実際、大学院への進学を決めたのも学部4年生の時と答えた人は26%と、過去最大の数字でした。

私自身も、学部4年生の時に進学することを決めました。最後まで悩んでいたのはお金のことです。お笑いの大会の優勝賞金で大学院に入学し、そのお金で1年分の学費は払えました。入学前に教授に相談しましたら「いろんな制度があるから大丈夫」とアドバイスいただき、安心しておりました。ちなみに、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科は、年間でおよそ140万円学費がかかります。私は1年目の時は、年間で10万円奨学金をいただきました。2年生になり、会社を設立し、全て会社にお金を回していたので、私個人の年収は30万円ほどでした。親元からも離れ、この金額だと、さすがに支援していただけるだろうなぁと思っていましたが、大学院から奨学金をもらうことができませんでした。

「第9回大学院生の生活実態調査」によると、奨学金の受給者は3年前に比べて減少しているとのことです。奨学金の受給者は、全体で46%とのことですが、ここで見ていかないといけないのは、申請したのにもらえていない人もいることです。私のような人が他にもいます。なぜ、独立生計の私が30万円の年収で貰えなかったかというと、大学院にはもっと困っている人がいるからだそうです。親が倒産した、両親が離婚して父親が養育費を払ってくれないなど深刻な家庭環境を抱える人が少なくないと伺いました。たしかに私には借金はないし、自分の他に食べさせないといけない人がいるわけではありません。

さらに大変だと感じたことは、奨学金の申請の制度です。生活費や授業料などを稼ぐために授業の合間には、仕事でスケジュールがうまってキャンパスに行けないけれど、奨学金は基本窓口での提出が必要であったり、提出の期間が2、3日しかなかったり、当日の朝、書類審査で通った人が掲示板で発表され、その2時間後から面接というものもありました。奨学金を申請する数が増えるほど、仕事や研究の両立がしにくくなることは、多様な大学院生の生活実態を考えると困ってしまうものです。私は、正直申請できる奨学金は9割ぐらい提出しました。一つだけ面接に進むことができましたが、仕事と重なり行くことができませんでした。書類審査に通っても、面接から数えると、拘束日が5日ぐらいあることも多々あります。その間バイトや研究ができなくなると本当に困ってしまいます。院進学を考えている人のためにも、誰もが申請しやすくなるようにしてほしいと思いました。

大学院では奨学金をもらえないので、クラウドファンディングで学費を集めたところ、なんと143万円集まりました。教育格差によって、自分の思うような進路を歩めない人が多くいます。そんな方に、自分の強い意思があれば、クラウドファンディングにより進学できる可能性があることも知っていただきたいです。134名の方から支援をいただきました。twitter、facebookなどの友達の数を合わせたら、学生のみなさまもそのぐらいいらっしゃるのではないでしょうか。芸能人だからできたわけではありません。想いがあれば、誰でもできる可能性があります。

※クラウドファンディングをはじめました!
https://camp-fire.jp/projects/view/46663 までアクセスをお願い致します。

『Campus Life vol.52』より転載