災害のリアルを知りどのように備えるか ~西日本豪雨の経験から~

中四国事業連合 吉山功一さん インタビュー

中国四国地方を中心に甚大な被害をもたらした「平成30年度7月豪雨(西日本豪雨)」から2年が経ちました。中国四国地方にある大学生協の当時の様子や被害状況のリアルを知り、災害時に感じられた教訓から、私たちが今できる備えや持っておくべき心構えを考えます。

【参加者】

吉山 功一 専務理事
大学生協 中国・四国事業連合
(前 広島大学消費生活協同組合・福山市立大学生活協同組合 専務理事)

藤本 昌 さん

【インタビュアー】

林 優樹
中国・四国ブロック学生事務局

児島 佳幸

【インタビュアー】

井上 弥咲
全国大学生協連学生委員会

井上 弥咲

西日本豪雨時の生協店舗や大学の被害状況について

林:
2年前の西日本豪雨では広島県において大きな被害がありました。広島県に所在する広島大学や福山市立大学での生協店舗や大学の様子、被害の様子をお伺いしたいです。

吉山:
お店の被害や、生協職員も幸いなことに大きな被害はありませんでした。ただ、2年前の豪雨の前にも広島では豪雨災害があり、それと比べると被災地域が広くて、交通手段にも大きな被害がありました。JRや高速道路などが大きな被害を受けたことで、豪雨災害による被害が長期間にわたって続き、学生、教職員、生協職員が長期にわたって通勤通学に影響が出ました。学生に関しては、幸い人的な被害はありませんでしたが、広島大ではアパートで床上浸水が発生した学生が2人いました。この2人に関しては、火災共済の加入者だったこともあって給付の申請をしてもらって空いているほかの部屋に移ってもらうという対応をしました。

林:
被害を受けた組合員に向けて募金活動をしたと記憶しています。

吉山:
福市大でも広島大でも募金活動を行いました。

西日本豪雨の前後での、豪雨災害に対しての備えについて

林:
西日本豪雨が起きた事で、災害に対しての備えや意識の変化はありましたか?

吉山:
この西日本豪雨の以降も自然災害は発生しています。生協では店舗の営業をどうするのかなどの判断もその都度行いますが、組合員にとっては店舗が空かないと不便になります。組合員を守るという意味では迅速に判断しないといけません。2年前の豪雨災害のときには、短時間で状況が変わって悪化したということもあって、結果として自分たちの判断でなにか被害があったということはありませんでしたが、なるべく早めに判断するということは大事だと思いました。ここまでの経験から判断するのではなく、安全を確保できるように今を見て判断するようになりました。組合員に対しての広報という意味ではSNSというツールを使って発信するというのは、なるべく早くに判断して周知するという意味では大事だと思います。HPやTwitter、Facebook、アプリなどを経由して発信していきたいです。

林:
広大の公式のTwitterはそのような発信が多く、災害時のもしもの発信のための役割ができているなと感じます。学生の行動の変化などを感じたりすることはありますか?

吉山:
新学期において、災害が起こることによって住む部屋を考えるときの基準が変わっていくような人は新入生やその保護者も含めて感じることがありました。これからもあると思います。

林:
確かに今年、新入生と入学準備説明会で話したときに災害時にこの地域は安全ですか?という質問をされました。

大学生協は災害に対してどのような役割発揮ができる?

林:
大学生協は災害に対してどういう役割発揮ができると思いますか?

吉山:
まず、防災という意味では、予防啓発をするという役割を担うことについての期待はあると思います。生活に関わることなので、どのような備えをしておくべきか伝えていくことは大事です。広島大だと、新入生向け冊子にそのような情報を掲載しています。万が一災害が発生した時には、大学の中にある組織として被災した方々への支援をする役割が求められます。2年前でいうと、広島大の場合は豪雨によって交通機関が遮断されて、モノが届かなくなっていって、東広島市内のお店には商品が入らなくなって棚が空いてしまいました。食べることについての心配が出てきて、当時は買い占めが起こりました。そのような中で、生協は取引先に協力してもらい商品を届けてもらうことができたので授業はありませんでしたが生協のショップや食堂を営業しました。いつ商品が入るのかがわからないという中で営業時間とかを決めながらやっていくのは大変でしたが、たくさんの組合員の利用があり、当時は大学からも感謝されました。

井上:
地域の人の利用もあったのですか?

吉山:
口コミで情報が広まったので地域の方々も買いに来ていました。他に生協が取り組んだことでいえば、通学ができない期間が長かったので、生協が借りているアパートがあったので短期での貸し出しをしました。

読者の方へ向けてのメッセージ

林:
この記事を見られている読者の方へメッセージをお願いします。

吉山:
一番は自分自身の身の安全が最優先です。そのうえで他の人、特に困っている人のことを思う想像力を働かせることが大事だと思います。2年前の話で言うと、大渋滞が起こっていつ動くのかもわからないという状況の中で、有志の広島大の学生がドライバーのためにおにぎりをつくって高速道路で動けない人たちに配ったというのがニュースになりました。

林:
困ったときはお互い様という学生のそのような行動は素晴らしいと思います。想像力をもって備えること、助け合うことは大事だなと感じました。

吉山:
東日本大震災が起きた年は5月のゴールデンウィークの時から全国の生協でボランティアを募り、東北に支援しにいくということを継続して行いました。ぜひそのような助け合いのスピリットを大切に繋いでいってほしいと思います。