今年は本をたくさん読もう、普段は読まないジャンルに手を伸ばしてみようと考えているあなたへ、『読書のいずみ』編集部が和書・洋書を20点 ピックアップしました。
誰かの気持ちに寄り添ったり、人生をなぞらえてみたり。エッセイを読むということは、ちょっとの間別の現実を歩むことかもしれない。けれども時折、その誰かと価値観が衝突したりする。なんだか気まずくて苦手だった。でも、この作品は、須賀さんの書く文章だけは違った。彼女の綴る言葉のなかに、私がいた。日々ふとしたときに覚える感傷や人と接するときの心の輪郭。人間として共有する思いが、ていねいに言語化されているからかもしれない。昨日と今日と明日とを思わず一緒にぎゅっと抱きしめたくなる。愛しい人と分かちあいたい逸品だ。
(早稲田大学/二十一世紀旗手)
本って素晴らしい! 本って美しい! 本って愛しい! この本を読んでいろんな思いが溢れてきた。でもそれ以上に本ができるまで、ただの文章の羅列だったものが本となり、人々のもとに届けられるまでのストーリーに心打たれた。本の中だけでなく本自体に一つ一つの物語があったのだ。いろいろな人が何ヶ月も、時には何年もかけて大切に大切に育て上げたものを私はやっと手にしているのだ。今まで読んできた物語を生み出してくれたこと、それを本として世に送り出してくれたこと、そしてその本と出会えたことに感謝したくなる、そんな一冊。
(慶應義塾大学/ moco)
人は死んでも絵は生き続ける。まさにその通りだと思う。絵は画家が生きた時代と自分が生きているその瞬間をつなげてくれるツールであるととらえることができる。この本はアンリ・ルソーが描いた絵「夢」をめぐる美術ミステリーである。この本の中でも1枚の絵によって2つの時がつながっていく。この物語と自分をつなげてくれたのはこの本。そういう意味では本も絵と同じ役割を果たしているのかもしれない。私はいろんな本を読み、いろんな絵を観て、いろんな音楽を聴いてたくさんの人とつながりたい。もちろん故人とも。
(同志社大学/おでん)
本屋へ行けば、たくさんの本が並んでいる。一冊一冊の本はもちろん物語だが、もうひとつ、その本が出版されるまでの現実の「ストーリー」をそれぞれの本はもっている。著者の、編集者の、営業マンの、取次の、書店員の、たくさんの人の「読んでほしい!」という思いのリレーで本は世の中に出る。やっぱり私は、本が好きだ。
(東京学芸大学/ももはる)
読めば読むほどひきこまれる。主人公は大学生。起こる出来事、感情……どれもとても身近に感じられる。著者の表現力が秀逸で私の心の中のうまく言葉にできない気持ちも無意識な部分も丁寧に、そしてきれいな言葉で代弁してくれる。わかってほしいと思いながらも踏み込んでほしくないとも思ってしまったり。そんな複雑な感情も繊細に表現している。そしてこの本を読んで思った。全てを失う覚悟ができたとき、人は生まれ変われるのかもしれない、と。
(早稲田大学/ S.I)
あなたは、死刑制度に賛成ですか? それとも反対ですか? この大きな問いをテーマにしたこの小説は、どの人の視点に立って読むかで、答えが異なってくるのではないかと思います。私はこの本の主人公ともいえる中原道正の視点で読みました。中原は小二の愛娘を殺された人物です。殺人事件の遺族というのは、犯人に対して「死刑」を求めるものです。しかし犯人が死刑になっても、愛する家族は戻ってきません。苦しみが消えることがありません。東野圭吾さんの特徴ともいえる複雑な人間関係の中で、この大きな問いの答えは見つかるのか……? タイトルや表紙のイラストに込められた想いとは……? 手に汗握る一冊です!!
(弘前大学/でこぽん)
これはちょっと先の未来で、"ちょっと”秘密を抱えた人々が,"ちょっと"前へ進む話。どの話も起こりそうで、リアルなのに、少し宙に浮いている。そんな中で、私は自分の未来をこの世界に照らし合せて、小さな時間旅行へと出かけられる。最後の「白鳥熱の朝に」だけは少し重く、異色だった。この物語の順番にも、何かメッセージがあったのだろうかと思ってしまったら、もう、作者の手中なのだろうか。
(帯広畜産大学/皐月)
実家に帰ろうとした時に思ったことがある。帰ることができる場所がある、それは、とても幸せなことではないか、と。一人暮らしをしていれば、実家に帰ることはあるけれど、きっとその場所に家族がいるから帰るのだろう。自分を待っている人がいるから帰るのだろう。誰だって、慣れ親しんだ場所は、離れたくない。けど、一人で遠い場所に行かなければならない時がある。不安にもなるし、未知の場所への漠然とした怖さもある。それでも人は強い気持ちで頑張れるのだろう。帰るべき場所があるなら。このことはきっと、どれだけ離れていても、自分を見失いそうな時でも、静かにそれでも確かな強さを持った心を照らす光になる。
(山形大学/ジータ)
なんだかほっこりする。そんな読後感を覚えた。名前って大事だ。かっこいいとか、かわいいとか、そういうことではない。“てくてく”歩くことから付けられたテクという名前。そんな些細な理由から付けられた名前でさえ温かみを感じる。普段あまり気にしない自分の名前の意味について再確認させられた。名前は呼ぶためだけのものではない。必ず意味があり付けてくれた人がいる。そして何より愛情がこもっている。そんな幸せを持っていることにみなさん気づいていますか?
(北見工業大学/シャク社員)
「命」というものを初めて「人間の命」と「人間」という視点に分けて考えた。死刑囚の山井に向けた言葉──お前の命というのは、本当は、お前とは別のものだから──は特に私に命を考える視点を与えてくれたように思う。「命を大切に生きたい」という言葉は軽く聞こえるかもしれないが、命を二つの視点から真剣に考えた結果、そう感じた。この作品では巻末までページをめくるたびに新たな視点が見つかり、また巻頭に戻るということを三度繰り返した。今後も、見出した視点を念頭に据えて、この作品を考えて「読ん」でいこうと思う。
(愛媛大学/スベリン)
日々むくむくと成長し、人々が常に密集する「都会」。そこでは、誰もが「無名の誰か」になることができる。ひとたび名を隠し、そこに紛れれば、戻ることが叶わない。広がるのは他人だけの砂漠なのだ。文中の表現の曖昧さに寒気すら覚える。私が私であることの不確かさを指摘されたような、そんな気分だ。この気持ちを受け入れ、私たちは今日も生きてゆかなくてはならない。古くて新しい物語だ。
(愛媛大学/ふう)
私の「夢」ってなんだろう。「時間がないから」「お金がないから」「才能がないから」……様々な理由をつけては諦めていた。いや、その「何か」のせいにしていつも逃げていた。そんな時に出会ったこの本。旅する少年は「夢」に従い、「前兆」に注意し、信じ続けた。様々な人との出会いが、彼を「宝物」へと導いた。日常のあらゆるものごとの中に、「前兆」は潜んでいる。私にとっての「前兆」は、この本と出会えたことかもしれない。本を閉じたあと、目に映る世界は以前のそれとは違っていた。丸まっていた背中がいつの間にかシャンとしていた。
(岩手大学/あや)
「恥の多い生涯を送ってきました」──大庭葉蔵の自己分析である。このことばに興味を持ち読み始めた私は、彼の彼による彼のための批評が謙遜でもなければ、あまりに的を射た事実であることに気づかされる。それなのに、どうしてだろうか。嫌いになれないのである。小説の主人公にあるまじきダメっぷり、それなのに。酒に溺れ麻薬中毒に陥り女にすがる葉蔵は、内省し続けている。一生懸命に自分を客観視しようと努め、冷静であろうとしながらも、彼は結局自己愛を乗り越えることはない。それが彼にとって盲点で、かつ愛される理由なのだろう。
(琉球大学/ぼおろ)
「僕は君で、君は僕だ」始まりは一本の間違い電話だった。主人公クインは『探偵』として「人探し」を依頼される。ターゲットは狂人「スティルマン」。人は皆、ハンプティ・ダンプティなのだと彼は言う。塀から落ちて、割れてしまった卵。『誰かの皮』をかぶって生きるうちに、この大量消費世界の中で、クインは段々と自分が何者なのかという感覚を失ってゆく。コロンブスは何故卵を割ったのか? 卵が先かニワトリが先か? <お前は誰だ? 私には答えがない>未来の私はこう答える。『間違うこと』『あがくこと』それこそが「生」そのものなのだ。
(法政大学/ NIL)
過去・現在・未来。過去は美しく、現在は辛く、未来は魅力的。現在という日常に未来の美しい夢がこわされないように、俗を越えた素晴らしいものになるように。この本には、戯曲の新しい形を築いたチェーホフのそんな気持ちが織り込まれています。人物が多く、一度読むだけでは理解しきれないそんな戯曲ですが、その中にある冷静でそれであって感情的なチェーホフの過去へ感じる美が感じられます。
(桜美林大学/ナオ)
パッとせずみんなからバカにされている高校生が、踊る合唱部であるgleeクラブに入り成長していサクセスストーリーシリーズの第1巻。歌うことが大好きな主人公のレイチェルが、glee部を作りブロードウェイスターになる夢に向かって諦めずに頑張る姿が描かれている。夢を持っている人はどんな時でも輝いているということが伝わり、前向きな気持ちになれる一冊である。
(宮崎県立看護大学/はる)
作家のWilliamは愛する妻を失った。彼は部屋に1人籠って悲しみに暮れていた。そんな時、心を癒してくれたのは幽霊。身の周りで起こる不思議な現象はおかしいが、喪失感を埋める存在を拒否する理由は無かった。徐々に明るさを取り戻すが、人生が歪み始める。人は深い悲しみの中で何に救いを求めるのか、考えさせられた。
(宮崎県立看護大学/たま)
タイトルは主人公の名前で、時にアメフト選手、ベトナム戦争の兵士、宇宙飛行士である。彼には大好きな女性がいて、いつもハーモニカを吹くと再会できる。あなたにも人生の節目に出会う人・アイテムなどありませんか? 彼の純粋な思いはハーモニカを通して彼女に届くのでしょうか。ぜひ読んで確かめてみては??
(宮崎県立看護大学/ Snail)
もし願いが叶うなら、あなたは何を願いますか? 田舎へと引っ越してきた兄弟たちは砂の妖精と出会う。願い事は1日に1回だけ…失敗を繰り返しながらも成長していく子ども達と一緒にドキドキワクワクしてみませんか。日常の幸せ、自分の力で夢を実現させることに意味があることを気付かされる1冊です。
(宮崎県立看護大学/じょん)
すべては一杯のコーヒーから始まる…。ある朝、主人公のネズミGeronimoStiltonは一匹の美しいネズミに恋をしてしまう。しかし、そのネズミにはすでに恋人がいた。諦めきれないGeronimoは恋愛成就の冒険に出るが…さて、彼の恋は見事に成就するのだろうか。様々な災難に見舞われながらも、果敢に挑戦するGeronimoの姿にあなたもきっと引き込まれます。
(宮崎県立看護大学/ M.T)