読書のいずみ

読書マラソン二十選!

~第8回全国読書マラソン・コメント大賞受賞作品~

2012年で8回目の開催となった「全国読書マラソン・コメント大賞」。

第8回もレベルの高い、たくさんのコメントが寄せられました。今回の二十選は、コメント大賞選考会で選ばれた、金賞・銀賞・銅賞・奨励賞・アカデミック賞とナイスランナー賞の一部のコメントをご紹介します。
主催:全国大学生活協同組合連合会
協力:朝日新聞社・出版文化産業振興財団(JPIC)

 『県庁おもてなし課』

『県庁おもてなし課』

有川浩/角川書店

新幹線はない。地下鉄はない。モノレールも走ってない。このあとも「ない」のオンパレード。そして最後に、「けんど、光はある!」。この本の内容もまさにそこに収束される。つまり、発想の転換。自分の身近にありすぎて気づかない珍しさを発見する、「当たりまえ」に隠れた非日常をとりあげる。これって、私たちの生活でも同じかもしれない。いつもと変わらない大学生活。でも、よく考えてみるとどこにでも変化はある。つまらない大学生活と嘆くよりも、発想の転換で少しでも面白味を見出す方がはるかに有意義ではないか? 金はない。空きコマはない。彼氏もない。けんど……の先は自分次第。

(お茶の水女子大学/ぶらんこ)

銀賞

『絶望名人カフカの人生論』

『絶望名人カフカの人生論』

フランツ・カフカ(頭木弘樹=編訳)/飛鳥新社

「悲しいときには悲しい音楽を」と“はじめに”に書かれていたが、まさにその通りだった。どんなにネガティブになっている時に読んでも、カフカが更にネガティブで笑ってしまうのだ。落ち込んでいたのは私なのに、カフカが心配になり応援したくなってしまう。「いちばんうまくできるのは倒れたままでいることです」。そんなこと言わずに立とうよ! そう思った時には私の気持ちは立ち直っている。カフカの言葉は座右の銘になるような立派なものではない。暗すぎて私を支えてくれはしない。しかしその暗さが私を明るくし、立とうと思わせてくれる。なんとも不思議な名言集だった。

(東北学院大学/ミヤ)

銀賞

『舟を編む』

『舟を編む』

三浦しをん/光文社

自分がこんなに言葉が好きだって、知らなかった。舟を編むというタイトルも話の中ですごく自然に、しかも説得力あるかたちで出てくるのが秀逸すぎて、私は言葉の大海原に出てみたいとも思った。しかし、気付いたのだ。わたしがこんなに言葉が好きだったのではなく、この本が好きにさせてくれたのだ、と。辞書ってすごい。

(東京工芸大学/かおかお)

銅賞

『きみの友だち』

『きみの友だち』

重松清/新潮文庫

松葉杖がなくちゃ歩けない「きみ」と、病気の「きみ」、どうしても意地をはっちゃう「きみ」に、いつも補欠な「きみ」……。人は誰も完璧ではなくて、失敗もする。時には大切な誰かを傷つけたり、いつの間にか1人ぼっちだったり。いっぱい悩んで、いっぱい泣いて、でも、だからこそ嬉しい時、心から笑えるんだと思う。だからこそ、大切な友だちの存在が大きいんだ。1人じゃ辛いことも、友だちと一緒なら立ち向かえる。ちょっぴり下手クソな「きみ」たちのそれぞれの物語。次の「きみ」は誰だろう。次の「きみ」を支えるのは誰だろう。なんだか少し疲れちゃった時、きっとこの本がきみの心も温めてくれる。

(早稲田大学/とも。)

銅賞

『百年の孤独』

『百年の孤独』

G・ガルシア・マルケス(鼓 直=訳)/新潮社

淡々と、けれども台風みたいなスピードとエネルギーで描かれる一族の繁栄と衰退。読み終わった後、自分は何年分歳をとってしまったのかとぼんやりし、いけない、どこか遠い国でおばあさんの語りを聞いたかのように、フィクションには到底思えなくなっていた。物語の終わり、一族最後の赤ん坊が、「愛によって生を授かったのはこれがはじめて」と記述されており、思わずゾクリとした。では、それまでの血脈は何だったのか。誰も愛し合わずに、誰もが孤独のまま、生き、死んでいったというのか。これは架空の話だと、言い聞かせる。けれどこんなにも生々しいのは、根底にドクドクと流れ続けた孤独、それが、私の中にも流れていると知っているからではないのか?と気がついて、軽い目眩がした。

(千葉大学/m.f)

銅賞

『恋文の技術』

『恋文の技術』

森見登美彦/ポプラ文庫

拝啓
守田一郎様、あなたの恋文読ませて頂きました。「恋文の技術」なんてタイトルだからどんなスペシャルテクニックかと期待して読んだのに、書いてあるのはひねくれ者でヘナチョコなあなたのおばかなお手紙ばかり。そして九通に及ぶ伊吹さんへの失敗作。あまりにひどくて思わず電車の中で吹き出しちゃったじゃないですか。でも十通目は、あれは確かに恋文でした。あ~、私も手紙書こうかな、あの人に。
悩める女子大生

(津田塾大学/ちゃぶ台)

奨励賞

『堪忍箱』

『堪忍箱』

宮部みゆき/新潮文庫

「言葉というものが怖いと一番痛感する時は、誰かからの言葉にショックを受けた時だ。「あの人だからそんなつもりで言ったんじゃない」と頭で理解しようとしても、傷ついた感情がついてこない。同時に、自分も何気なく人を言葉で傷つけているのではないかと恐怖でいっぱいになる。言葉の重みにたえきれずに、口を閉ざしてしまうほうが楽ではないか。この本を読むとほのかに心が温かくなる言葉がいろいろうつる。辛い浮世で紡がれる言葉はシャボン玉のようだけど、きっと誰かの胸中に残るものもあるだろう。自分が言って楽しくなる言葉から、まずスタートしたいと思った。

(山口大学/満樹)

奨励賞

『夜と霧』

『夜と霧』

V・E・フランクル/みすず書房

第二次世界大戦下、強制収容所へと送られるユダヤ人精神科医の著者。愛する家族も、人間としての尊厳も奪われ、偶然が生死を支配する極限の状況において、彼は人間の光と闇を克明に描き出す。命をつなぐだけの食べ物にさえ事欠く中で、一片の紙に記録をとり続けた著者の熱い心と冷静な眼差し、人間に対してなお抱く希望が、辛いとき、苦しいときに前に進む力を与えてくれる。読んだ後も動悸が止まらない。

(東京大学/Magnum)

アカデミック賞

『珍獣の医学』

『珍獣の医学』

田向健一/扶桑社

「獣医さんは動物のことなら何でも知っていて、どんな病気でも治せる動物のプロフェッショナルだ」と私は幼い頃から信じきっていた。飼っているウサギの具合が急に悪くなったら、どこの獣医さんでも診てくれると思っていた。しかし、ウサギを含む珍獣の診察はアマゾンへの冒険のようなものだったのだ。大学でも学ばない未開拓の地へ足を踏み入れる獣医師は日本でも僅かしかいない。そんな中、この本からは「どんな動物でも救いたい」という獣医師の熱意がひしひしと伝わってくる。その想いが、ページを捲る私の手を止めなかったのかもしれない。動物を飼ったことがある、飼おうとしている全ての人に読んでほしい。人間の身勝手で飼われ、病気になってしまう動物を一匹でも多く救うために。

(帯広畜産大学/Berry)

アカデミック賞

『考えること、建築すること、生きること』

『考えること、建築すること、生きること』

長谷川豪/INAX出版

建築とは更新してゆく作業なのかもしれない。時代をうつし、過去の営みを受け継ぎ、これからへとつながってゆく。家を建て、壊し、建てる。壊れても、なお建ててゆく。それは、人の肯定してゆく生き方に重なるように思えるのだ。人の暮らしを包み、まさに建築は人生とともにある。その建築に対する著者の語り、そしてひとつひとつの建築は味わい深く、視点や発想のひろがりを与えてくれる。「僕にとって建築をつくることは、現実を押し広げることである」と著者は人間の生がより豊かになる可能性を見出している。その姿勢は著者の生き方であるとともに、建築に希望の光を感じさせてくれるのである。

(名古屋大学大学院/織)

アカデミック賞

『幸福について』

『幸福について』

ショーペンハウアー/新潮文庫

最近、「幸せ」や「プラス思考」を求める人が増えてきている。心の不安は社会的な広がりを見せてきている。この本は、人としての幸福のあり方を考える上で大きな助けとなる。私が特に驚かされたのが、「幸福=苦痛の回避」という考え方であった。えてして私たちは、所有や名声を幸せと結びつけがちであるが、この本では、そんなものは人間の一大迷妄だと否定している。それは「幸福」ではなく「快楽」であり、快楽の追求は苦痛を伴うからやめろと言うのだ。私は衝撃を受け、目からウロコがボロボロ落ちた。それから私は、もう一度幸せについて考えてみた。すると、今までの日常の何でもないことが急に輝き出した。寝ること、食べること、寒さをしのげること。幸せは日常の平穏にこそあったのだ。私の心から幸せが失われる前にこの本に会ってよかった。もしかすると、この出会いが一番幸せかもしれない。

(山形大学/みそしる)

ナイスランナー賞

『人間失格』

『人間失格』

太宰治/新潮文庫

人間失格って何!? 人間って何!? 日頃脳みそを使わない私は頭が痛くなった。どうも人間は、道理にかなった生き方をするものがそうらしい。しかし、うまくいかず、道理にかなった生き方ができないやつもいるかもしれない。どうしても憎悪だとか恐怖だとか常に感じずにはいられないやつだっている。そいつらは人間じゃないのだろうか。わからない。感じ方は人それぞれだ。ただ言えることは、生きている限り価値のあるものだということだ。人間失格したってまた人間合格すればいい。ただ、それだけだ。

(山形大学/うっちー)

ナイスランナー賞

『銀河鉄道の夜』

『銀河鉄道の夜』

宮沢賢治/集英社文庫

宮沢賢治の作品を読むといつも、自己犠牲ということについて深く考えさせられる。それは登場人物たちがしばしば見せる献身的な姿のせいであろうが、不思議と悲しい気持ちにはならない。なぜなら彼らの行動が、「自己犠牲」という言葉よりも「恩返し」という言葉の方がふさわしいような、清く、美しく、純粋で水晶のような輝きを放つものだからである。そのようにポジティブな自己犠牲だからこそ、ネガティブな自己犠牲しか知らない人々の胸に強く響くのだろう。

(東北大学/ヒツジ)

ナイスランナー賞

『ジェノサイド』

『ジェノサイド』

高野和明/角川書店

さながら右手にポップコーン。目の前には巨大スクリーン。まるで一流ハリウッド映画を観ているかのよう……!! 世界観にのめりこんでしまえば、もうこれは手に汗握る、最後のページをめくるまで結末予測不可能の予断を許さない、映像のような錯覚をおぼえる作品である。完成度の高い映画を観ているようで、幾場面で心が揺り動かされたことか。新人類誕生における、米大統領の思惑。一傭兵の葛藤。日本人大学院生の世界スケールの活躍。様々な視点が入り乱れ、息をつかせぬストーリー仕立て。日本人作家の本領を見た!

(岐阜大学/かっぱ1556)

ナイスランナー賞

『肩ごしの恋人』

『肩ごしの恋人』

唯川恵/集英社文庫

こんな友だちの形はよくいると思う。本人たちにも「どうして仲良くなれたか」分からない親友。欲しいものは欲しい結婚3回目のるり子と、恋も仕事もクールな理屈屋の萌。私は萌のような女性にとても共感する。るり子の言った「女から好かれる女ほど不幸な女はいない」という言葉には本と分かっていても本当にムッとした(笑)。「何が自分の幸せか」というのは、人から決められるものではない。まわりから見た自分ではなく、自分から見た自分と向き合いたいものだ。その点ではるり子は自分の幸せを一生懸命に追っている。でも好きになれないのはなんでだろう……。幸せとはあいまいだ。

(早稲田大学/めんたい子)

ナイスランナー賞

『困ってるひと』

『困ってるひと』

大野更紗/ポプラ文庫

突如発症した難病との壮絶なつきあい人生の書。苦を乗り越えた人ってなぜこんなに軽く、ユーモアに富んだ物言いができるのだろうと感動する。大変な検査や入院、闘病の日々を支えた沢山の病院の先生方のネーミングセンスもすてき(宇宙プロフェッサー・キテレツ先生・ダンディ先生etc.)。どうしようもない苦と折り合いをつけながら「生存」している著者を心から敬愛しました。

(早稲田大学/さや)

ナイスランナー賞

『行かずに死ねるか!』

『行かずに死ねるか!』

石田ゆうすけ/幻冬舎文庫

地図帳が好きだ。国内でも、海外でも。佐田岬半島やペロポネソス半島の形は好きだし、スリランカの首都はもちろんスリジャヤワルダナプラコッテだし。地図上を旅することはいくらでもできる。いくらでも。でも、自分で行きたいなぁ。旅をする願望、本能はそもそも人類のDNAに刻み込まれているのではないか。旅をしながら人類は進化してきた。そうして、自分という一人の人間が生まれたはずである。だから自分もこの夏は旅に出る。旅先で見る景色、会う人間、食べるモノ、遭うトラブル、全てが自分の糧になるはず。DNAの声に耳を澄まして、旅をして、帰ってきて自慢気に地図帳をなぞろうかな。

(早稲田大学/タケ)

ナイスランナー賞

『卵の緒』

『卵の緒』

瀬尾まいこ/新潮文庫

家族に愛していると伝えている人はどの位いるだろう。私は今まで一度も言葉にしたことがない。家族だから分かってくれているはず……伝えなくても伝わっているだろう……でも、それは幻想なんだと初めて思った。主人公はたった一人の家族である母親と血がつながっていない。それでも二人の絆が他のどんな家族よりも強く、そして確かなものだったのは、自分が相手のことを愛しているということを必死で伝えようとしていたから。家族の絆を強くするのは、血のつながりでも、時の流れでも、心のないありがとうでもなく、ただただ懸命に伝える“愛してる”なのだと、この本は私に教えてくれた。

(早稲田大学/しずか)

ナイスランナー賞

『学校のセンセイ』

『学校のセンセイ』

飛鳥井千砂/ポプラ文庫

“良い先生”って何だろう。頭が良い先生? 怒らない先生? それとも友だちみたいな先生? この本を読み終えた時、私は正直こんな先生にはなりたくないなと思った。主人公の桐原先生はすべてにおいて適当だし、口癖は「面倒くさい」だし……。でも何でかな。私は不思議と彼に魅かれていた。これが教師の魅力ってものだろうか。『学校のセンセイ』は立派な教師になるための美しい成長物語なんかじゃない。私にとって桐原は反面教師だ。しかし、断言しよう。彼は“良い先生”である。

(千葉大学/あーみん)

ナイスランナー賞

『星やどりの声』

『星やどりの声』

朝井リョウ/角川書店

家族っていいな。家族に会いたい!って、読みながら思った。そのくらいこの家族は優しくて、温かくて、一生懸命で、面倒くさくて、哀しかった。ずっと今のままでいられたら。でも、それはきっと無理なんだろうな。そんなことにも気がつけるくらい、いつのまにか自分は大人になっていて……。あーあ、自分はこれからどうなるんだろう。そんな葛藤を抱き悩む兄弟たちに、今の自分の姿が重なった。だから、父からの「星やどり」に込められた兄弟たちへのメッセージに思わずウルッときた。今を思うように生きられれば、「それでいいんだよ」と、少し背中を押してもらえた気がした。新たな道へと踏み出すこの家族に、心からのエールを送りたい。

(山梨県立大学/ちょびん)


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