読書のいずみ

読書マラソン二十選!

★もうすぐ夏休みがやってきますね。皆さんは何をして過ごしますか? 旅行をしますか? それともアルバイト? 何か新しいことに挑戦しますか? 読書も忘れてはいけません。たっぷりとある時間を有効に使って、今年の夏もたくさん本を読みましょう! 昨年の全国読書マラソン・コメント大賞に寄せられたコメントから、20点ピックアップしてご紹介します。

『骸骨を乞う』
雪乃紗衣/角川書店

『骸骨を乞う』

物語はハッピーエンドの方が好きだ。誰かに死んでほしくなんかない。この本には本編があり、その段階では「めでたし、めでたし」で終わっていた。しかし、大人になった登場人物たち、徐々に闇を背負っていく姿は読んでいて悲しくて苦しかった。それはきっと今の私にはまだない闇なのだろう。それでも「骸骨を乞う」という表現に込められた強さと潔さに憧れの念を感じずにはいられない。ハッピーエンドには続きがある。幸せな時で区切るか否かの違い。小説の外に生きる私たちだって同じ。本当の終わりとは最期のことなのかもしれない。

(東京外国語大学/高月朝)

『年金風来坊シゲさんの地球ほいほい見聞録』
金井重/中公文庫

『年金風来坊シゲさんの地球ほいほい見聞録

古今東西、旅は万人の心を解き放つ。シゲさんは50歳になってからバックパッカーとして旅を始めた。その行動力はすさまじいものである。はじめはアメリカ、それから中米、南米へと巡る旅。スペイン語どころか英語すらままならないシゲさんだが、不思議とコミュニケーションには困っていない様子だ。出会いより多い別れはない。面白いのは、行く先々で出会った人々と再会を果たすところだ。学生だけでなく大人の人も、頭と心をゆるめる旅をしてほしい。

(東京外国語大学/ざきさん)

『見えないドアと鶴の空』
白石一文/光文社文庫

『見えないドアと鶴の空』

「人との絆」が最近ではよく注目されている。近しい人との仲を表すこともあれば、恋人、友人、家族……様々な人との絆があるだろう。では、故人との絆はどうだろうか。今、一緒の時を生きていなければ、絆は途絶えてしまうのだろうか。答えはもちろんNoだ。私の中にはその人の存在が生き続けるし、何度も思い出すことができる。一緒に生きた時を覚えている限りは、大丈夫だ。人の魂に触れること。言葉で捉えてしまうと不可能なことのように思えるが、「大切な思い出を忘れない」ならできるはず。

(東京外国語大学/蒼の風)

『アルジャーノンに花束を』
ダニエル・キイス(小尾芙佐=訳)/早川書房

『アルジャーノンに花束を』

学力重視の風潮の中、知能指数は高い方が良く、「頭が良くなりたい」というのは誰もが一度は抱く願望だろう。しかし、幸せに知能は必要なのだろうか。この本の主人公のように、手術によって高い知能を得られたとしても、見えてくるものは暴力や嘲笑、嫉妬、虚栄など社会の醜くて脆い側面ばかりなのかもしれない。人間にとって知能指数がどれほど価値をもつのかということを、深く考えさせられる一冊である。

(東北大学/ヒツジ)

『おちくぼ姫』
田辺聖子/角川文庫

『おちくぼ姫』

日本版シンデレラ。王朝版シンデレラ。色々な呼び方をされるけれど、ええい、誰がなんと言おうと、これは“日本最古の純恋愛文学”だっ!! 古典は苦手だって? いやいや、そんなの関係ない! 人の心は今も昔も変わらないんです。素敵なあの人に恋をして、苦しんで……おちくぼの姫にも少将にも共感して、一緒に胸を焦がす思いです。時代モノといえば武士だろうって? そんな人にもおすすめなんです! なんといってもこの物語のポイントは登場人物の魅力! 脇役こそ良い味を出しています。中でも特に、おちくぼ姫に仕える阿漕と少将に仕える帯刀。彼らの主人を思う献身っぷりっといったら! 貴族の優雅なお話……のはずが、武士魂すら彷彿させます。読めば恋がしたくなる。それも、全力の恋を。ん? もう胸がどきどきしているぞ? そうか、2人の恋に恋をしたんだ。

(東北大学/じゅんじゅん)

『ハーモニー』
伊藤計劃/ハヤカワ文庫

『ハーモニー』

日本は協調性の国だ。個人の前に、世間が立ちはだかる。この小説では、「協調」が世界を支配している。いじめも、プライベートもない。個人がないからだ。自分が生命であるという意識もない。私は個人として生きているだろうか。匿名でなければ、自分の本音を、意見を、はっきりと主張できない。かつて生きることに疲れて、このような世界を望んでいた自分を思い出して、はっとした。個を奪われた人間は、生きた死人のようである。優しさとは、厳しさに裏打ちされたものだ。個人として世間のなかで闘った者でないと、本当の優しさは手に入らない。

(広島修道大学/ねこ)

『レインツリーの国』
有川浩/新潮文庫

『レインツリーの国』

裸足で踏み込める関係っていいなと思う。飾らない自分で近づく距離はかけがえのないものだなぁと。人はみんなそれぞれの人生を歩んできている。だから、何が琴線に触れるか、何が逆鱗に触れるかなんて予測できない。分かりあうということにはそれ相応のハードルを伴う。でも、逃げないで、向かい合ってぶつかり合うなんて、それだけ人生で深く関わっていける大事な人なのだと思います。二人のこれからに、幸あれ!

(愛知大学/琴音)

『神様2011』
川上弘美/講談社

『神様2011』

くまが近所に引っ越してきたら、どうしますか? しかも、そのくまに散歩に誘われたらどうしますか? そしてそのくまがとっても気の遣えるやつだったらどうしますか? 私だったら、すべての答え、取り乱して逃げる、です。しかし、謙虚でどこか憎めないくまを目の前にしたら、仲良くしてみようかなと思うのかもしれません。そうして、だんだんと、くまが近所の熊みたいなおじさんに思えてくるのです。「あのこと」以来、川原や道やそれこそくまが、貴重なものに感じてしまうのは、とても悲しい。

(東京農業大学/もやしかめ)

『四畳半神話大系』
森見登美彦/角川文庫

『四畳半神話大系』

大学1年生のときにこの本と出会った。異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などなんとも冴えないキャンパスライフを送っている「私」だなと思った。自分はピカピカの1年生、バラ色のキャンパスライフを送るのはこれからだとドキドキしていた。当時の自分には無限のキャンパスライフが広がっているように感じてならなかったのだ。大学3年生になって再びこの本を読んだ。そこには今の私と似ている「私」がいた。数少ないキャンパスライフ、今からでも取り戻せるだろうか。

(松山大学/パンナコッタ)

『烏に単は似合わない』
阿部智里/文藝春秋

『烏に単は似合わない』

これが同じ大学生の作品かと脱帽した。若宮の妻に選ばれるために、4人の姫君が登殿する。それぞれに事情を抱え、対立を繰り返して四季はうつろう。しかしいつまでも若宮は現れない。そうこうするうちに、侍女の転落死という事件が起こる。松本清張賞受賞作だが、ミステリーというよりファンタジー要素が多い。人ではなく八咫鳥が支配するという世界観、そして姫君たちの装束や宮中の四季のうつろいの描写は、ため息が出るほど美しい。その一方で次第にきな臭くなり、姫君たちにひずみが生じていく過程には、いやが上にも緊張感が高まる。誰が妻になるかも最後の最後まで分からない。目が離せない。

(大阪大学/みなぽん)

『星やどりの声』
朝井リョウ/角川書店

『星やどりの声』

同じ母親と父親から生まれた兄弟姉妹でも、わかりあえないことってある。長子だとか末っ子だとか真ん中だとか。男女で違う感覚だとか、親と過ごしている時間の長さとか。今でも私は上手く立ち回ることのできる下の子に憧れることはあるし、悩みがちな性格は長子だからなのかな、と思うこともある。だからこそ真歩の視点の章では兄弟姉妹の中で一番落ち着いているその雰囲気を羨ましく思ったし、琴美の視点の章での琴美が父から託された役割には、悪気はなくとも胸が痛んだ。実家に帰ったら弟と話をしよう。なにはなくとも。そんなふうに思う。

(福井大学/なゆた)

『とある飛空士への追憶』
犬村小六/小学館

『とある飛空士への追憶』

ひたすらに胸を打った。たまらなく愛おしい気持ちになった。本には人を動かす力がある。そう改めて痛感させられた。この本にはなにも高尚な文学でも度肝を抜くようなトリックがあるわけでもない。ただ一人の男の子が好きな女の子のために頑張る。ただそれだけだ。それだけなのに心を惹きつけて離さない。男の子の不屈の精神に胸が熱くなる。女の子の報われない恋心に胸が引き裂かれそうになる。そして読了後、私は眼を閉じ追憶するのだ。とある飛空士と気高き皇妃の一万二千キロの間で生まれた「これまで」についてを。そして二人のたどる「これから」についてを。

(日本大学/さしすせそ)

『蜩ノ記』
葉室麟/祥伝社

『蜩ノ記』

この本には、命の尊さと、人の情の深さと、家族の愛がつまっている。武士として武士らしく戦場で死ぬのではなく、10年後の切腹を命じられた秋谷と、見張りとしてやってきた庄三郎。自らの“命日”にむかい、毎日をまっすぐに生きる秋谷と、その家族にふれて少しずつ変わっていく庄三郎が、何を思い、何を信じ、何を支えにして生きるのか。そして、父の“命日”を知った子どもたちの感情。どうしようもない運命の中だからこそ見える純粋な心や、ひたむきな気持ちが、志を全うする秋谷の生き様そのもののようで、心に響くものがある。人肌にふれるような温かさと、優しさを教えてくれる、感動の一冊だ。

(愛知教育大学/碧海)

『僕は長い昼と長い夜を過ごす』
小路幸也/ハヤカワ文庫

『僕は長い昼と長い夜を過ごす』

人は人に影響を与え、人を変えることができるのだ。もちろんいい意味だけじゃないかもしれないけど。50時間起きて20時間眠るメイジは他人や社会となかなか生活リズムが合わない。それでもメイジは1人にはならなかった。それはすごいことだと思う。本人の努力と他人のちょっとした優しさによって「信頼」というものは作りあげられることがわかった。自分にとってはちょっとしたことでも、相手にとっては「特別」だったり。人と人との関係は予測できないからこそおもしろいのかもしれない。

(愛知教育大学/たけのこ)

『がらくた』
江國香織/新潮文庫

『がらくた』

地球上に人はこんなにも沢山いるけれど、その中で自分が関わりをもつ人はごくわずかである。この本を読むまでは、私はより多くの人を知りたいと思っていた。狭い人間関係の中で毎日を過ごすというのは、もったいないことなのではないかと考えていたのだ。しかし、考え方が少し変わった。私が今まで出会ってきた、そしてこれから出会うことになる人々は、やはり特別な何かがあって出会う、大切な人々なのだ。従って、彼らについてより深く知り、仲を深めることをおろそかにしてはいけないのだ。

(お茶の水女子大学/かなちゃん)

『いちばん初めにあった海(化石の樹)』
加納朋子/角川文庫

『いちばん初めにあった海(化石の樹)』

木はなんでも知っている。私が生まれる何百年も前のこと、そして私が死んだ何百年も後のこと。今は目の前に立っているこの木はどんな秘密を守り続けているのだろう、とふと考えさせられた。この木に出てくる金木犀も大きな秘密をかかえていた。一番近くにいるのに心はとっても遠く離れたところにあり、わかりあえずに一生のさよならをすることになってしまった親子のこと。最後にはどんな親でも子どもを一番に思っているのだと教えられ、涙がとまらなかった。

(お茶の水女子大学/みお)

『旅行者の朝食』
米原万里/文春文庫

『旅行者の朝食』

鯨を食べる文化、うさぎを食べる文化、馬を食べる文化。牛や豚を食べる文化。お互い不思議に思ったり、非難しあったり。食事って文化や生活に密着しすぎて、私たちの考えは多分とっても保守的。じゃがいもがヨーロッパで受け入れられるまでに、こんな歴史があったなんて! 異文化について学び、食欲をそそられ、また食の大切さについて改めて考えることができた。さて、次の旅行では何を食べよう。いつかあの絶品トルコ蜜飴とやらをぜひ食べてみたい。

(東京外国語大学/千亜)

『恋愛寫眞』
市川拓司/小学館文庫

『恋愛寫眞』

生涯に一度だけ、真の恋があるとしたら、本当の愛があるとしたら。あなたは信じますか? 「私はあなたが好き。そしてあなたも私が好き」これで初めて成立する、この“両想い”の世界。「私はあなたが好き」これだけで成り立つ“片想い”の世界があるのなら、どんなに良いか……。でも、この難しい世界で相手の気持ちが返ってくる……それは“奇跡”で、とっても幸せなこと。男の子なら女の子一人分の、女の子なら男の子一人分の「幸せ」をその手に持っている、“奇跡”をその手に持っているんだよ。これから、その“奇跡”に出会うのかもしれない。そんなステキがこの世界には溢れている。「愛」っていったって、ぼんやりしてよく分からない。でも、陽だまりみたいにあたたかくて、まんまるな「愛」は確かにそこにある。そう感じる物語。

(神戸大学/つき)

『Round the world in eighty days』
Jule Verne/Penguin

『Round the world in eighty days』

主人公は80日で世界一周できるか、という賭けをし、お付きの者を率いて突然旅に出た。交通もそこまで整ってはいない時代、大金を賭けた旅に間に合うのかどうか、とてもハラハラした。旅の途中でいけにえにあいそうな女性を助けたり、上手く交渉して個人の船で海を渡ったり……いろいろなハプニングにあいながらも着々と進んでいく様子から、あきらめなければ何とかやり遂げられるという気持ちにもなった。旅の賭けには勝ったが、それ以上にうれしい出来事は、寡黙で友という友もいない主人公に妻ができたこと。お金よりも人との絆を得られたことが、この旅の収穫だろう。

(お茶の水女子大学/いくら)

『The Card』
Arnold Bennett/Oxford Univ. Press

『The Card』

生まれは決して裕福な家庭ではないデンリーだが、一つ一つのチャンスを見逃すことなく、逆境も成功としてしまう。なんだか元気づけられてしまう一冊だ。おまけに「彼が何をしたか」という問いに対して、登場人物が「ただ私たちを笑わせただけだ」という答えを返したように、うじうじと悩んでいないで、ただただよりよい未来のために目を見張り、耳をそばだて常に行動し続けることの大切さを教えてくれた。そして慎重になりすぎることなく笑顔が欠かせないものであるということも。少し疲れを感じてしまっている人に、ぜひ読んでみていただきたい。

(東京外国語大学/高月朝)


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