読書のいずみ

読書マラソン二十選!

あと少し頑張れば、夏休み。今年の真夏の夜の読書のおともに、昨年の全国読書マラソン・コメント大賞で寄せられた全応募用紙のなかから編集部が掘り出した20点をご紹介します。

『ゼツメツ少年』

表紙

重松清/新潮文庫

自分のことが大嫌いなほうが、人間としてまし——僕はこの言葉の意味がわからなかった。自分のことが好きだと思うことよりも大嫌いなほうが人間としてまし。一体どういうことだろう。自分が嫌いな方が向上心を持てるし、他人よりも優越感に浸ることがないということだろうか。人が人を嫌いになるとき、いじめるとき、根底にあるものが、自分が思い込んでいる、そうと決めつけていることからズレてしまっている、ということではないだろうか。自分が好き=自分が基準になってしまうということなのだろうか。ゼツメツしてしまう少年たちと同じ思いを抱えている人は沢山いる。その人たちのことを知ってほしいからこそ、読んで欲しい。

(東京学芸大学/ヨコッチ)

『未来いそっぷ』

表紙

星新一/新潮文庫

〈アリとキリギリス〉〈ウサギとカメ〉
誰もが知っている、昔話。そんな語り継がれてきた物語だって、星新一さんの手にかかれば “今風" に姿を変える。よく知っている物語だからこそ、そのパロディーは深く心に残る。作り変えることで何が言いたいのか? 
どんな意味があるのか?スピードを出しすぎたウサギはスピード違反の取り締りにあい、働き者のアリは貯えが必要以上にあることに気づき、踊りはじめる。読めば一瞬の爽快感と後に残る感動を得ること、間違いなしです。

(横浜国立大学/ゆー)

『最後のトリック』

表紙

深水黎一郎/河出文庫

あなたは今までの人生で、小説を読んで、「犯人は自分だ」と思ったことがあるでしょうか? きっとこの本を読んでいないすべての人が、「ない」と答えるでしょう。本の中の会ったこともない人物を殺すのは不可能だ——今までの常識はそうでした。しかし、それは可能だったのです。作者のあるアイディアがそれを可能に変えました。「自分が犯人になれるはずがない」と思っている人にこそ、この本を手に取ってもらいたい。……殺人犯になる準備はできていますか?

(立命館大学/まる)

『有頂天家族』

表紙

森見登美彦/幻冬舎文庫

登場人物は狸に天狗と奇想天外。しかしそこに繰り広げられるは、人間といたって変わりのない日常なのである。なかでも「面白きことは良きことなり!」という矢三郎のセリフが心にささる。人間世界も狸世界も決して面白きことばかりではないだろう。しかし、矢三郎は常に面白く生きている。人間である我々が、矢三郎をそっくりそのまま真似て生きることには無理がある。しかしこう考えてはどうだろうか。人生も面白くすれば面白くなると。私はしばしば落ち込みもするがゆえに、常に面白い人生ではない。だが矢三郎のこの言葉を胸に自分で人生を面白くしたいと思う。

(同志社大学/森亮子)

『左京区七夕通東入ル』

表紙

瀧羽麻子/小学館文庫

読んだ後、元気が出て幸福感に包まれるような、そんな本です。女の子でよかったなぁと思います。自分に無いものをもつ相手に惹かれる文系の女の子が、理系の男の子に恋するお話です。何か熱中できるものに出会いたい。この本に登場する大学生たちをすごく羨ましく思いました。甘酸っぱい、キラキラ、青春……そんな言葉がピッタリの本です。自分の毎日までもがいとおしく感じられました。ステキな女の子にぜひ読んでほしい本です。

(跡見学園女子大学/ Chacha)

『「現代版」絵本御伽草子 うらしま』

表紙

日和聡子=文・ヒグチユウコ=絵/講談社

浦島太郎の妹の話だ。亀を逃がしてやった次の日、兄は漁から帰らなかった。両親の悲嘆に堪えかねて、妹は兄を探しに行く。豪華絢爛にみえた竜宮城は、書割の松と薄板の池に海藻でできた水鳥が泳ぐ無人の御殿だった。彼女は日が落ちた浜へと戻り、両親が待つ家へと急ぐ。巻き貝ひとつを袂に入れて。兄への手がかりは、無い。途中、出会った女が彼女に言う。「そんなに行きたければ、そこからまっすぐ行けばいいのよ。この先は誰も文句は言わないし、誰にも文句は言えないのよ」自由と責任を引き受けて生きてきたのだろう。彼女の言葉が心に残った。

(お茶の水女子大学大学院/壁紙の花)

『不機嫌な姫とブルックナー団』

表紙

高原英理/講談社

ブルックナーのオタク、通称「ブルオタ」。そんな人達が集まった団体の入団試験にびっくりしてしまった。「ブルックナーの交響曲は全曲、全楽章ごとに主題の区別ができる」「ブルックナーの交響曲の版ごとの違いがすべて分かる」「交響曲第3番初演と聞くと涙が止まらない」など、予想以上のオタク度を求められる条件が連なる。ただでさえ、とっつきにくいクラシック音楽の中でも、長くて繰り返しのフレーズが多いことで有名な作曲家、ブルックナーである。そんな不器用とも言える偏屈なおじさんの音楽を愛するブルオタ達と、それとは一線を引きながらも足繁く演奏会に通う女性が語らう物語。名付けて、「ブルタメ」小説!

(慶應義塾大学/シベロク)

『モップの精は旅に出る』

表紙

近藤史恵/実業之日本社

普段、ほとんどの人は自分がゴミ箱に捨てるものに注意を払うことは少ない。だが、優秀な清掃員のキリコは、ゴミ箱の中身を手がかりにして職場で起きた事件を解決する。キリコの洞察力の鋭さには舌を巻くが、これからはゴミ箱にものを捨てるときは少し気をつけようと思う。

(高知大学/侘助)

『あこがれ』

表紙

川上未映子/新潮社

この本は小学生である少年と少女の視点で描かれた物語なのだが、読んでいて自分の小学校時代を思い出して懐かしくなった。今ではくだらないと思うようなことについて真剣に考えたり、妙なルールを作って友達と遊んだり……。そのような思考回路はこの時期の子ども特有のものであり、成長してからは失われてしまう。その意味で、この本を読んで、やはり子どもはこの世の宝だなぁと感じた。以来、近所で小学生を見かけると、社会の貴重な存在として愛でる気持ちが湧いてくる。

(東京大学/バボちゃん)

『喜嶋先生の静かな世界』

表紙

森博嗣/講談社文庫

ゆっくりと主人公の日常が進んでいく……そして気付けばこの素敵な世界にのめり込んでいた! 
この一冊を読み進めると、自分の周りで起こっている出来事に向けていた意識が、まるで、シンとした静かな世界の中にいる様に、だんだんと研ぎ澄まされていった。大学生になった現在だからこそ、勉強と研究の違いに納得できるのかもしれない。この本が伝えてくれることを吸収できるのかもしれない。決して堅くない、穏やかな、生きることの素晴らしさと難しさを考えさせられる語りに惹きつけられてゆく。何度読んでも、人生の節目節目で出会うであろう壁に、自分なりの解を導くことができる、そんな自信を与えてくれる、日常を本棚の片隅から支えてくれる一冊だ。

(立命館大学/佐々木友理)

『異性』

表紙

角田光代・穂村弘/河出文庫

男性として読み、二人の女性観に膝を打つだけでなく、穂村さんの “同性観" に「そうそう!」と全力で同意し、角田さんの “異性観" に驚き、うなだれ、納得しながら読むことができた。タイトルは「異性」ではあるが、「同性」つまり自分たちがどう思われているか?というのも知ることができる。それにしても、僕が毎晩のように布団の中で考えているようなことで、ここまで理解かつ的確な言葉を当てはめることができる著者二人に大いに尊敬の念を抱いた。ただ、異性あるいは同性に対して理解が深まったとしてもそれを活用できるかどうかは全く別問題であるから、単に「異性ウケ」を狙う人にはお勧めしない。男子校/女子校出身者にはオススメ。

(慶應義塾大学/ Spica)

『さよなら、ニルヴァーナ』

表紙

窪美澄/文藝春秋

心も、頭も、ぐわんぐわんする。読後の衝撃に呆然とし、必死に冷静になろうとしているけれど、目の前の景色が現実ではないような気がしてくる。うまく、言葉が、でてこない。題材が題材なだけに、この小説で傷つく人も、この小説を非難する人もいるだろう。それでも、これを読んで、多くの人がいろいろなことを感じて、考えて、答えのない問いに向きあっていくことが必要なのではないかと思う。生きるということは、大切なものを得て、失って、傷つけて、傷つけられて、幸せでも辛くても見えない終わりに向かっていくということなのだと思った。

(明治薬科大学/海野もずく)

『死んでしまう系のぼくらに』

表紙

最果タヒ/リトル・モア

最果タヒの詩は言葉だけで形作られたn次元の空間へと僕を引き込む。そこは慌ただしい日常から解放され、自分の心臓の拍動と同じリズムで時間が流れる唯一の場所だ。明るい光が射し込むわけではない。孤独、憎しみ、虚しさ、欲望、そして死……。自らの中にある曖昧な暗がりが果てしなく広がっている。けれども、そんな闇の中に、たとえわずかであっても、不完全であっても「真実」の存在を信じられることに僕は不思議な安らぎを覚えるのだ。

(信州大学/冬木旅人)

『同性婚』

表紙

南和行/祥伝社新書

「同性婚は……(中略)柔らかいソファなのかもしれない」と本文は締めくくられる。LGBTに対する課題の解決は「少数派に権利を認められること」ではなく「もともと同じ権利がある」ことを私たちは忘れている。本の第一章は著者の体験談から始まる。パートナーと出会い、人生の分かれ目に立ち、悩む。恋愛小説を読んでいるかのごとくである。著者は弁護士という立場にあるため、法的解釈の勉強にもなる。多様化が求められる今日、知らないでは済まされなくなる。自分には関係ないと思わず、読んでほしい一冊である。

(茨城大学/ Shion)

『えーえんとくちから 笹井宏之作品集』

表紙

笹井宏之・伊津野重美・斉藤倫/パルコ出版

短歌って……なんだったっけ? 五・七・五? 季語のいらないやつだっけ? 
などという漠然としたイメージで読み始めた一冊。一頁ずつ開いてゆくと、はっきりいって、とても驚いてしまった。一首一首の中から広がってゆく世界が、僕たちが普段日常で使っている言葉の垣根を鮮やかに越えて、どこか懐かしい匂いで現れるからだ。一頁に載せられている短歌は一首か二首なのに、読み終えた後には、とっておきのおとぎばなしを読み終えた後のような感覚が広がる。透明な短歌の世界にとらわれて、時間が知らぬ間に流れていた。短歌という敷居をまたぐと、そこにはとっておきの読書体験が待っている。

(佐賀大学/無名)

『シャルリとは誰か?』

表紙

エマニュエル・トッド〈堀茂樹=訳〉/文春新書

あのテロ事件はどうして起きたのか? 
外部から何か恐ろしいものが、国内に入り込み我々の生活を脅かしている……どれほどの人々がそんな思いに悩み考えを巡らせているだろうか? 
イスラムの恐怖、それによって問題の根本的な部分が隠されてしまっている。私たちが見つめ直すべきは、その宗教ではない。社会の不平等に不満を抱く若者たちの心を感じ取り、その問題解決に懸命に取り組む姿勢を見せなくてはならない。見ないふりはもう効かない。

(東京外国語大学/K.A)

『美しい夏』

表紙

パヴェーゼ〈河島英昭=訳〉/岩波文庫

なんだか独特そうな本だなぁ。ロマンなのか、訳ありなのか。一体どう美しいの。詩的な美への安易な期待なら、早々に裏切られる。あれ、自分は女なのに「女ってなんだろう」。日常でふっと感じる、「何かがおかしい」という物憂さ。安っぽい恋愛至上主義に、内心ウンザリしている? 
そして自分は結局何をどう表現すればいいのか分からない……という歯痒さ。潜在意識まで全部そのまま表現してみせた天才作家のこの一冊は、私の宝物となった。

(慶應義塾大学/菫)

『恋愛論』

表紙

スタンダール〈大岡昇平=訳〉/新潮文庫

 ああ、スタンダール先生、あなたはなんて大天才なのでしょう!
 私自身でさえ数ヵ月間持て余していた、この、キュッと締めつけられるような心の痛みの仕組みを、まるで解剖して見てきたように的確にそして論理的に、鮮やかに暴いてしまったのですから!
 なるほど、今の私の症状は恋愛の第6段階、「疑惑」。つまりこの苦しさは、次の第7ステージ「恋の結晶化」に移行するまで、あと少しの辛抱なのですね!
 恋愛は古今東西、男女の関心事だ。著者の深く鋭い洞察に基づき導かれた恋愛の法則は、人間の心理、本質に迫っている。だからこそ、200年前の著作といえども色あせることなく、今なお私たちの心理を見事に言い当ててしまう。これぞ不朽の名作。今まさに恋の病の真っ直中なあなた、恋人とちょっぴりマンネリ気味なあなた、恋を夢見るオトメなあなた、そう、そして、恋愛に興味のある全ての皆様!!
 この駆け込み寺でスタンダール大先生が、あなたにピッタリな処方箋を出してくださること請け合いです♥

(東京大学大学院/しらたま)

『フラニーとズーイ』

表紙

J.D. サリンジャー〈村上春樹=訳〉/新潮文庫

小さな宗教書だけを手に、あらゆるしがらみから逃れたくなった時、この本のことを思いだすと思う。競争すること、その勝ち負けではなく、「競争心をもつこと」それ自体が恐ろしいのだというフラニー。彼女の兄ズーイは、責め立てるようなありったけの言葉で妹をすくい上げようとする。フラニー、フラニー、聞いているかい。フラニー、よく聞くんだ。何度も何度も名前を呼んで、叱り、なだめて、手を伸ばしてくれる。彼の言うように、わたしたちに救いがたい部分なんて、もともとはひとかけらもないはずなのだ。

(金沢大学/水無月)

『帰ってきたヒトラー 上』

表紙

ティムール・ヴェルメシュ〈森内薫=訳〉/河出文庫

上に立つ者として、「責任」と「覚悟」はあるだろうか。すべてを引き受ける、その強さは持っているだろうか。読み終えて、私の問いが繰り返しめぐっている。
レトリックを用いているヒトラーの凄さ。例えば自分自身の予期せぬことが起きたとき、人はどうするだろうか。彼は現実を受け入れ、適応するために、一つ一つを細かに分け、理解し、疑問を解決しようとする。現代を生きる私たちに、彼のような、真の強さはあるのか……と考えさせられる。

(茨城大学/なっち)


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