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特集「時間ものがたり」記事一覧

 
現代、過去、未来、「あのころ」が描かれた一冊……。
本で贅沢な時間旅をお楽しみください。
選書・コメント=いずみ委員

未来 
現代 
昭和40〜50年台 
1920年台(日本が大正時代のころ) 
明治時代 
17世紀オランダ黄金時代 
戦国時代
 

未来

村上龍
『オールド・テロリスト』
文藝春秋/本体1,800円+税
2018年の日本は不景気続きで政治不信が加速。そのくせ国民は黙り込むばかり。そんな閉塞感を劇的に破ったのは連続テロで……これは本気で日本を変えようとしたオールド・テロリストたちの話だ。人生の酸いも甘いも噛み分け、金も力もある彼らがいかに日本を変えようとしたか。もう200日もしないうちにこの未来はやって来る。(杉)

 

現代

道尾秀介
『鏡の花』
集英社文庫/本体640円+税
当たり前にいる人がいなくなったら、なんて考えたことはあるでしょうか。そのとき人は誰を責めるのでしょうか。
姉(翔子)を亡くした弟(章也)の話の、次の章では弟(章也)を亡くした姉の(翔子)話に。誰かがいて誰かがいないパラレルワールドの世界に引き込まれていきます。「織り重なっていく」というイメージを読み終わったあとに抱いた一冊。今側にいる人を大切にしようという気持ちが生じます。(田)
 

 

柳澤桂子
『すべてのいのちが愛おしい』
集英社文庫/本体620円+税
この本を読む度、私の体の中の水面が静かに揺れる。生命は全て海の中で生まれたという事にはっとさせられた。海から受け継いできた生命は遺伝子という手紙を何通ももらって、命を巡り私が生まれたのだ。「時間」という海の中で生きる私たちは、これからどんな旅をしていくのかな。膨大な時間と生命の尊さをかみしめる一冊。(頼)
 
 

昭和40〜50年台

石井好子
『東京の空の下 オムレツのにおいは流れる』
河出文庫/本体690円+税
好子さんの作る料理はフランスの文化が影響していて、日本風というよりも欧風だ。生クリームやバタ、フォアグラに仔牛のレバ……。初版当時の読者は彼女が綴る、聞いたこともない料理に夢や希望を抱いただろう。時を経て、各国の料理が身近になった。彼女の食への愛が多様な食を日本に広めたのだろうな、と思うのである。(頼)
 

 

庄司薫
薫くん四部作
『赤頭巾ちゃん気をつけて』
新潮文庫/本体460円+税
『さよなら快傑黒頭巾』
新潮文庫/本体490円+税
『白鳥の歌なんか聞えない』
新潮文庫/本体550円+税
『ぼくの大好きな青髭』
新潮文庫/本体550円+税

大学闘争の煽りで東大入試が中止された年、高校三年生の薫くんは東大が第一志望だった。大学生にならなかった薫くんの青春は、私たちのそれとはどこかが違う。恋もする。友情も育む。けれどその根底にある考えや、学生のカタチそのものが違う。それも当然で時は1969年——薫くんは私たちの祖父母と同級生なのだ。(杉)

 
 

1920年台(日本が大正時代のころ)

フィツジェラルド(野崎孝=訳)
『グレート・ギャツビー』
新潮文庫/本体520円+税
1922年、ニューヨークのお膝元。ニックが越してきた先の隣人ギャツビーは、豪華絢爛なパーティを開き続ける。謎に包まれたギャツビーが待っているのはただ一人、青春の日々のあの人だった。狂騒の20年代、その光と隣り合わせに、闇と悲劇は潜んでいる。(任)
 
 

明治時代

畠中恵
『アイスクリン強し』
講談社文庫/本体552円+税
明治23年。江戸が東京に変わり、物事は目まぐるしく変化した。士族は禄を失い、成金が台頭し、築地の居留地には外国人が住むようになる。真次郎は西洋菓子屋・風琴屋を開店するが、絶えず騒動が持ち込まれて営業そっちのけでてんてこ舞いする羽目になる! 読めば元気になる一冊。ただしダイエット中の方はご注意くださいね。(北)
 
 

17世紀オランダ黄金時代

トレイシー・シュヴァリエ(木下哲夫=訳)
『真珠の耳飾りの少女』
白水Uブックス/本体950円+税
家族を助けるため女中となった少女フリートは、センスが認められ、画家である主人の右腕となる。しかし夫人や意地悪な娘の奸計が、彼女を追い詰める。光と陰を操る、色彩の魔術師フェルメールを描く歴史小説。極上のドラマに紡がれて、誰もが知るあの絵が、運河の街に生き生きと立ち現われる。(任)
 
 

戦国時代

万城目学
『とっぴんぱらりの風太郎 上・下』
文春文庫/本体(上)720円・(下)690円+税
時は豊臣から徳川へ——。
忍びの国の伊賀から放逐され、京でのんびり暮らしていた風太郎。ひょんな事から喋るひょうたんと出会い、導かれる運命により、様々な人と出会い、彼は今戦乱の中にいる。「風太郎もいつか誰かを救えばよい」という言葉から彼が選んだ道とは。緊張感のあまり息を飲んでしまう一方、ニート暮らしっぷりにクスッと笑ってしまうところもある一冊。(田)
 

 

和田竜
『のぼうの城 上・下』
小学館文庫/本体(各)457円+税
23,000人対500人。誰がどう考えても前者の圧勝だ。そもそも負けると分かりきっている戦いに身を投じるなんて、愚かしいにもほどがある。家臣や領民のためにもさっさと降伏し、無駄な流血を避けるべきだ。しかし忍城の城代「のぼう様」は無謀にも戦を決意する。天正18年(1590年)6月4日、歴史に残る壮絶な戦いが幕を開けた。(北)
 


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