わが大学の先生と語る「上間先生の推薦図書」


『最強の社会調査入門』
前田拓也・秋谷直矩・朴沙羅・木下衆
ナカニシヤ出版/本体2,300円+税
たったひとりでフィールドにたつ孤独を久しぶりに思い出しました。同時にこの本から伝わるのは、調査ってやっぱり面白い!ということです。どうぞみなさんも手にとって、そしてフィールドへ。

『子どもたちの階級闘争』
ブレイディ みかこ
みすず書房/本体2,400円+税
お会いしたこともない異国の子どもや女性を隣の誰かのように感じられる名著です。「政治は議論するものでも、思考するものでもない。それは生きることであり、暮らすことだ。」声高な主張はありませんが、人の暮らしが制度や政治とどうつながっているかが確かに伝わります。

『街の人生』
岸政彦
勁草書房/本体2,000円+税
語る人の人生と街の喧騒が匂い立つような本です。お書きになられた岸さんは、社会学者であり作家であり、そしてミュージシャンでもあります。いつまでも終わってほしくない名演奏を、どうぞお楽しみください。

『カミングアウト・レタ-ズ』
砂川秀樹
太郎次郎社/本体1,700円+税
ゲイやレズビアンの子とその親、生徒と教師の往復書簡です。身近な誰かとちゃんとつきあうためにカミングアウトをし、それに応答しようとする姿からは、ひとはこうやって一緒に生きていくのだなぁという福音が伝わると思います。

『心的外傷と回復』
ジュディス・ハーマン<中井久夫=訳>
みすず書房/本体6,800円+税
私は女性の話を聴き取ることが多いので、暴力と性の問題について考えることが多く、必要であれば介入もします。理論書ですがこれはバイブルで、人間が尊厳を失わず生きていくことの軌跡がわかります。回復の話は何度も勇気づけられました。

『屋根裏の仏さま』
ジュリー・オオツカ
新潮社クレスト・ブックス/本体1,700円+税
20世紀初頭、写真だけを頼りにアメリカに渡っていった写真花嫁たちの物語です。「わたしたち」という主語で語られる、ささやくような声がさざなみのように広がり、やがて聞こえなくなります。

『ルポ 虐待』
杉山春
ちくま新書/本体840円+税
子どもを育てることが、社会的な支援を抜きにはできないことがわかる本です。杉山春さんの丁寧な取材は、「母」が「母」をするためには何が必要であるのかをあぶり出します。

『虹の鳥』
目取真 俊
影書房/本体1,800円+税
占領軍と暮らす日々、暴力がすぐとなりにあるなかで生活を重ねる理不尽さをこの作家は確かに書いた、と思います。沖縄の夜の漆黒を、暴力にまみれながら大人になる子どもたちを、この作家は確かに書いた、と思います。
P r o f i l e

上間 陽子 (うえま・ようこ)
1972年、沖縄生まれ。琉球大学教育学研究科教授。
専攻は教育学、生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究。1990年代後半から2014年にかけて東京で、以降は沖縄で未成年たちの調査・支援に携わる。

■著書・共著 著書に『裸足で逃げる』(太田出版)、共著に『若者貧困』(明石書店)がある。

 


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ