読書推進

本との出会いを目指して ~20年以上続く書評誌『ほんのこべや』~ 新潟大学生協

大学生の読書離れが取りざたされる中 新潟大学生協(以下、新大生協)では教員中心に書評誌を発行し続けています。

教科書でさえ購入が落ちていると言われる状況の中で 書評誌『ほんのこべや』を発行する編集委員会を訪ねました。

読書の楽しみを 知ってほしい


書評誌『ほんのこべや』は、当初、学生の手で作られていたものを教職員委員会が引き継いで現在に至ります。新大生協には15人からなる教職員委員会があり、その内の4人のメンバーが編集委員会を担っています。編集会議は新大生協藤田和則専務理事が進行役を務めて昼休みに行われ、後日、教職員委員会に報告をして、ほかの教職員委員のメンバーも作成に協力します。

春と秋の年2回の発行で、2011年から春号は3500部、秋号は1800部を発行しています。春号は、生協オリエンテーションで新入生全員に配布されます。今年の春号は100ページを超えるものとなりました。A5版で手に取りやすく、気軽に読める工夫がされています。

編集会議では必要なコストについても議論され、どれくらいのコストをかけているのか確認しながら進められます。今回訪問した編集会議では、冊単価が上がっていることへの質問が出され、藤田専務に説明を求める一幕もありました。さらに、執筆者への謝礼の増額に関する藤田専務からの提案に対し、慎重な話し合いの末、確認されました。

執筆メンバーは教職員だけではありません。一般募集で院生や学生、卒業生からの寄稿もあります。ペーパー応募のほかに、メールによる応募も受け付けています。執筆者の責任を明らかにするために匿名やペンネームは認めず、堂々と実名で掲載されます。

書評誌の構成は「特集」「教職員から学生に推薦する本」「学生・院生が推薦する本」「自著を語る」等から成り立っています。寄せられたアンケートの声や読書マラソンのPOPカードも紹介されているので、ちょっとした読書交流の場にもなり、店頭に行かなくても読書のきっかけに触れることができます。

テーマの出し合い


特集のテーマについては話題性やタイムリーなものを出し合います。今回は「ワールドカップ」も飛び出しました。サッカーの書籍は少ないのですが、選手たちの著作や組織論、戦術論と話は膨らみます。また、今までに出されてきたテーマ候補も書き溜めて、議論の対象にします。「地域に立脚した大学ということも話題になっているので『越後・佐渡』などのテーマも面白いが、学生が興味を持つかどうかが疑問」という意見も出されていました。

さらに、時事的な話題として「TPPについて考える」というテーマも出されました。専門はどこになるのか、先生方の間でも農業経済学か法学か意見が交わされます。

また、「大学と国際化」についても話題性があると提起されました。最終的には、「TPPについて考える」を第一候補とし、「大学と国際化」を予備のテーマとすることで確認されました。ここからが大変です。5冊以上、10冊くらいをめどに関連書探しを進めることになります。

書評誌と店舗の 連携を強める


藤田専務は、読書マラソンのカードが激減していると言います。

「想像以上に活字離れが進んでいるのではないかと思います。上級生になると教科書も買わなくなる傾向にあり、学生は何を読んだらいいかわからなくなっているのではないかと思います」 『ほんのこべや』は春の新学期と秋の読書週間に合わせて発行されます。春は新学期のイベントで配布されますが、秋はなかなか配布が進みません。生協のイベントの機会に配布してはいますが、今後の課題です。

会議では、『ほんのこべや』で紹介された本を店舗に揃えて、書評誌を導入本として手に取ってもらってはどうかという意見が出されました。文庫や新書は店頭にあるものが多いので紹介するようにしようということになりました。また、アンケートで寄せられた著作や著者のランキングを出してみたらどうかという意見もありました。学生はランキングが好きなので、興味を持ってもらえるのではないかという意見です。

岐阜大学生協の書評誌『あくりもにあ』(『UNIV. CO-OP』399号で紹介)のように、新大生協でもこれから書評誌『ほんのこべや』と店舗との連携が始まりそうです。読書時間が減ってきていると言われていますが、感想を書き込んだアンケートは、現在約40人の方が返してくれています。かつては100人を超える時もありました。発行し続けることで読書推進、「本との出会い」を進めてほしいと思います。

(編集部)

『Campus Life vol.40』(2014年9月号)より転載