読書推進

 第10回 読書マラソンコメント大賞 優秀賞発表

【主催】全国大学生活協同組合連合会 【協力】朝日新聞社/出版文化産業振興財団(JPIC)

「4年間で本を100冊以上読もう!」を目標に、 全国の大学生協が実施している 読書推進運動「読書マラソン」。 毎年寄せられる本の紹介コメントには、 若さあふれる学生たちの思いが込められている。 今回も、心ゆさぶられる熱いコメントが数多く届いた。

記念すべき第 10 回の審査は ハイレベルな作品の戦いに

「本を読むっておもしろい」。そんな気持ちをみんなで伝えあいたいという思いからスタートした「読書マラソン」。全国の大学生協各店舗に置かれている専用のコメントカードに本を読んだ感想を書くと、1枚につき1個スタンプがもらえ、数に応じて大学生協で使える割引券などと交換できる。さらに毎年、寄せられたコメントの中から特に優秀なものを選んで表彰する「コメント大賞」を実施。11月4日、東京の大学生協杉並会館で選考会が開かれた。

10回目を迎えた今年の応募総数は、昨年を上回る6015点。このうち第一次選考を通過した227点と、専門書が対象の「アカデミック賞」候補34点が、評論家でフリーライターの永江朗氏をはじめ、生協職員、現役大学生ら8人によって審査された。「読書を通じて感じたことが明確に表現できているか」「コメントを読んで、その本を読みたいと思わせるもの」「学生ならではのコメントが書かれているか」など、各審査員が独自の視点で作品を選ぶ。長時間にわたり何度も投票が繰り返され、金・銀・銅賞とその他の受賞作品が決定した。

いずれの作品もレベルが高く、票が割れた今年の選考会。そのなかで、「共感できる」「作品を読みたくなる」という点で目を引いたコメントが賞に選ばれた。感性が豊かな学生時代は、自由に使える時間が多く読書に適した時期でもある。ぜひたくさんの本を読み、その感想をコメントカードにつづってもらいたい。

優秀作発表

県庁おもてなし課
藤本元子さん(千葉大学大学院1年)

県庁おもてなし課
書名『蝶々の纏足 風葬の教室』
新潮文庫/著者 山田詠美

書評

「『生々しさに呼吸が楽になる』という表現に強く引かれ、作品への興味がわく」「私自身もこの本を読んで救われた一人。同じように救われたことが感じられた」「このコメントを見て本も読んでもらいたい」など審査員から高い評価を得た。

●喜びの声

とてもうれしいです。どうもありがとうございます。


絶望名人カフカの人生論
栗林由布子さん(神戸薬科大学4年)

絶望名人カフカの人生論
書名『すみれの花の砂糖づけ』
新潮文庫/著者 江國香織

書評

最終行の「詩を通して、私たちは、同じ詩に共鳴する人たちと、つながることができる」ことに納得。具体的な内容が書かれているわけではないが、コメントから「本の雰囲気、性格、形がつかめる」という声も。

●喜びの声

この度はこのような賞をいただき、本当に光栄に思っています。ありがとうございます。まさか自分が銀賞をいただけるとは思ってもみなかったので、とても驚いています。

私は、この詩集を読んで、詩の面白さを知りました。エッセイとも、小説ともちがう魅力が、詩にはあります。“読まず嫌い”をしている人が、詩集を手にとるきっかけになればいいな。そしてその人が、私と同じようにお気に入りの詩を見つけてくれるといいな。そんな気持ちでこのコメントを書きました。みなさんも是非、心に残る一節を探してみてください。


舟を編む
西田将喜さん(帯広畜産大学2年)

舟を編む
書名『あなたの人生の物語』
ハヤカワ文庫/
著者 テッド・チャン(浅倉久志訳)

書評

イマジネーションを広げ、現代では実現できないものや世界を見せるのがSFのだいご味。そうした今までにない作品に出会えたことの喜びをコメントでうまく伝えている。

●喜びの声

このたびは名誉ある賞をいただき、光栄に思っております。かつて、私の敬愛する作家は書きました。『人間は物語でできている』と。

小説が好きで、映画が好きで、マンガが好きで、アニメが好きで、SFが好きで、ファンタジーが好きで、ミステリが好きで、私は「物語」が大好きです。私を形作るのは、そんな無数の物語であり、フィクションです。

残念ながら、彼は若くして世を去りました。しかし、彼の「物語」はいまだ私の中にある。そういう想いを込めて書いたつもりです。


銅賞

書名『キップをなくして』
角川文庫/著者 池澤夏樹

諏訪真奈美さん(東北大学4年)

こんな経験、ありませんか? 出かけるために電車に乗って駅に着き、ポケットを探ると…キップがない!!!こんなとき、どうすればいいのか知っていますか?答えはこの本の中にあります。切符をなくしてしまったときの対処法を知らなかった主人公を待ち受けていたのは、駅で働くという運命でした。これって不運?それとも…。 うっかり切符をなくしてしまった憂鬱な日も、この本を思い出せばワクワク気分に早変わり! だけど、切符は大切に。

銅賞

書名『思い出トランプ』
新潮文庫/著者 向田邦子

合田英美那さん(北海道大学2年)

「これを読むのはまだ早い!」…というのが、読み終えて最初に思ったことである。 丁寧に描かれた心のひだを追っていくと、どうも途中で「あ、このシーン面白いけど実感が湧かない」という壁にぶち当たる。そこには常に、社会や人間関係の波に揉まれた主人公達の諦めや虚無感が付きまとう。その一方で、何気ない日常のワンシーンから人生の回想へ広げていく筆者の手法は実に見事であり、えぐるような観察眼とは裏腹に、優しさのまなざしも感じとれる。上記の「壁」も相まって何とも不思議な読後感だ。 あなたはこの「壁」を感じるか。本書を読み、自らの成熟度を測ってみてほしい。

銅賞

書名『ビリー・バッド』
光文社古典新訳文庫/著者 ハーマン・メルヴィル (飯野友幸訳)

永島奏子さん(津田塾大学1年)

「法律はこの善を罰せざるを得ないのである―。」 かつてドイツの思想家のハンナ・アレントが述べたように、法の問題において正義や善の入り込む余地はない。価値が多元化した時代にあっても、絶対的無垢の存在であるビリー・バッドは罪から解放されることなく死刑を自ら受け入れる。メルヴィルの描く雄大な海と、人の生み出した法という秩序の織り成す、美しくも残酷な世界に触れ、「正しさ」とは何か、自問する1冊であった。


銀賞

書名『自由論』
光文社古典新訳文庫/著者 ジョン・スチュアート・ミル (斉藤悦則訳)

鎌田拓矢さん(北海学園大学2年)

「どうして多数決に従わないといけないの?」「みんなと同じじゃないっていうのは本当におかしいことなの?」といった疑問は誰しも幼少期から持っていたはずだ。その疑問を解決するためのヒントを与えてくれるのが、この本である。 自由とはいったいどういうことか、また、自由を守るためにはどうしたらいいのか、なぜ個性は尊重されるべきなのか、なぜ反対意見・少数意見は尊重されるべきなのか、という人類が今日に到るまでずっと抱えていた問題について詳細に、かつ丁寧に述べられている。150年以上昔に書かれた本なのに現在でもこの本の輝きは、全くといっていいほど失われていない。

銀賞

書名『カラスの教科書』
雷鳥社/著者 松原始

畠千尋さん(帯広畜産大学2年)

カラスというと一般的には、ゴミをあさったり、たまに人をおそったりと問題児のイメージが強い。しかし、私は、カラスはかしこくて、かっこいい!鳥だと思っていた。この違いは何なのか、私がおかしいのか?(笑)そんなときこんな帯が目に入った。「え?カラスはお嫌いですか?」 カラスにはいろんな種類がいる。人から見たら黒くて全部一緒じゃないか!と思うかもしれないが、よく見ると、口ばしの形、鳴き声、好んで食べるエサなど全然違うのだ。人をおそうのにも理由がある。なるほど!と思う知識だけじゃなく、カラスってマヨラー?カラスのフンは食べられる?カラスは死を意識する?などおもしろい質問・回答がいっぱいだ。せっかく一番近くにいる野生動物なのだから、この本を読んで、見つけたら、足を止めてみませんか?きっと、今までとは違う感覚が芽生えると思います。

銀賞

書名『現代語訳 文明論之概略』
ちくま文庫/著者 福澤諭吉(齋藤孝訳)

松尾美紗さん(立命館大学4年)

原著はまるで古文で情けないことに字面を見るだけで尻込みしてしまいました。ところが、現代語訳を手にとってみれば、多彩な例示がちりばめられているわ、西洋史から日本史、科学、経済とあらゆる学問がさらりと登場してくるわで「おもしろい!」とページを繰る手が止まらないのです。福澤諭吉という人物が生きた「いま」、その時代の日本という国に対する危機感、それを超えた「文明」への想い、そして後世の私たちの「いま」に託したかったことがひしひしと伝わってきます。福澤の示唆とは異なり挙国一致での戦を経験する一方で、福澤の指摘どおり国体と血統の混同を捨て去ることができず、今もって「自国の独立」に悩む現代日本は果たして、福澤の時代よりも進んだ文明の段階にあるのでしょうか。他国に遜色ない智徳を手にしたのは確かです。では、私たちは「いま」、何を文明の目的とすればよいのでしょうか。


奨励賞・ナイスランナー賞

他にも力作がたくさんありました。
選考会で注目されたコメントの一部を紹介します。

奨励賞

書名『数の悪魔 算数・数学が楽しくなる12夜』
晶文社/著者 ハンス・マグヌス エンツェンスベルガー(丘沢静也訳)

山下茉利乃さん(奈良工業高専1年)

自分は数学が好きな部類である。しかし、好きだからといってなんでもかんでもひょいひょい理解できるわけではない。時には理解できずにうんうん唸り、ジャンルによっては楽しくないと突っぱねてしまうことだってある。素数、三角数、フィボナッチ数、パスカルの三角形、オイラーの公式…高1の自分でもオイラーの公式は聞いたことがない。ましてや10歳の子どもにこれらが理解できるのか? それは、できる。しかも実に簡単に、楽しく、理解できてしまうのである。算数や数学が好きか嫌いかなんて関係ない。読めば分かる。きっとあなたも『数』が好きになる。もとから好きな人も、きっともっと好きになる。自分がそうだったから。数の楽しさを改めて感じられる、そんな本。

奨励賞

書名『「少年A」この子を生んで……』
文春文庫/著者「 少年A」の父母

山下莉采さん(立命館守山中学2年)

Aの母親の手記を読んで、私は目をふさぎたくなった。Aの母親は、Aがまだ生きていることを被害者の家族に謝っている。確かにAは人を殺した。だから、償っていかなければならないと思う。しかし、命の大切さを教えなければいけないはずのAの母親が、Aが生きていること、つまりAの命があることを謝罪している。この矛盾は余計にAを苦しめるだろう。愛情をうけている自分の幸せを実感できる一冊だ。

奨励賞

書名『いのちをはぐくむ農と食』
岩波ジュニア新書/著者 小泉武夫

有本朱里さん(立命館守山中学2年)

最近、輸入食品に関わるニュースをよく耳にするけど、この本を読んで、日本の「食」の問題がどれほど危ないところまできているのかということを知って、とてもショックを受けました。この問題を知らないまま、このままにしていたら本当に怖いことになるかもしれません。これからこの国で生きていくために、自分達ができることについて教えてくれるこの本をぜひみんなで読みましょう。この国がなくならないように。

ナイスランナー賞

書名『錦繍』
新潮文庫/著者 宮本輝

針生真依さん(東北学院大学4年)

「生きていることと、死んでいることは、もしかしたら同じことなのかもしれない」 この文章を初めて目にしたとき、正直、私は理解できなかった。だって、そうでしょう?生きている人にはまた会えるけど、亡くなった人にはもう二度と会えないから。 それでも、私は何かの折に触れ、ふとこの一文を思い出すのだ。悲しみにくれているとき、信号が青になるのを待っているとき、お風呂に入っているとき……。

何故かはわからないが、この言葉は私を掴んで放してはくれないのだ。

ナイスランナー賞

書名『スロウハイツの神様』
講談社文庫/著者 辻村深月

熊崎菜穂さん(金沢大学2年)

〈才能〉というものが存在する。〈才能〉をもつ人間が存在する。この世界にそれは残酷なほど確かなものとしてある。唯一無二の〈才能〉を、わたしたちは時に神様とも呼んで崇め、死にもの狂いで追いかける。だけど、いつだって、どこまで行ったって、遠くて、高くて、怖くなるくらい深い闇の向こうなのだ。苦しくて、もどかしくて、情けなくて、自分の無力に絶望して、それでも繰り返した感情をみんな抱きしめて、いつか。「あなたがわたしの神様でした」と、「あなたを目指してここまで来ました」と、胸を張って伝えることができるように。わたしもまだ、あきらめるつもりはない。

 

「ナイスランナー賞」を輩出した66校

  • 酪農学園大学
  • 札幌学院大学
  • 小樽商科大学
  • 帯広畜産大学
  • 北見工業大学
  • 室蘭工業大学
  • 弘前大学
  • 岩手大学
  • 秋田大学
  • 山形大学
  • 東北学院大学
  • 福島大学
  • 早稲田大学
  • 法政大学
  • 慶應義塾大学
  • 東京農業大学
  • 千葉大学
  • 桜美林学園
  • 昭和大学
  • 横浜国立大学
  • お茶の水女子大学
  • 東京外国語大学
  • 埼玉大学
  • 跡見学園女子大学
  • 東京学芸大学
  • 電気通信大学
  • 東京薬科大学
  • 白梅学園大学
  • 信州大学
  • 茨城大学
  • 名古屋大学
  • 名古屋工業大学
  • 愛知県立大学
  • 愛知大学
  • 愛知教育大学
  • 静岡大学
  • 京都大学
  • 同志社大学
  • 立命館大学
  • 立命館中学・高校
  • 京都府立大学 龍谷大学
  • 奈良工業高等専門学校
  • 龍谷大学
  • 富山大学
  • 金沢大学
  • 大阪市立大学
  • 大阪大学
  • 甲南大学
  • 兵庫県立大学
  • 岡山大学
  • 広島大学
  • 広島修道大学
  • 山口大学
  • 梅光学院大学
  • 松山大学
  • 愛媛大学
  • 徳島大学
  • 高知大学
  • 九州大学
  • 琉球大学

学生時代は多読するのがおすすめ 向かってくる本を読んでほしい

永江 朗氏
評論家・フリーライター
近畿大学非常勤講師
永江 朗氏

他の審査員もおっしゃっていましたが、今年は非常にレベルが高く、今の学生は書くことにたけていると感じました。しかも単純な感想文ではなく、「どうしたら人にアピールできるか」ということがよく考えられています。スマートフォンなどを使い、文字でコミュニケーションをとることがプラスになっているのだと思います。

読みやすい本が多かった昨年に比べ、古典、純文学、エンターテインメント、SFなど、今年はバラエティー豊かでした。読書マラソンは数を競うと思われがちですが、「どんな本を選ぶか」「どう読むか」「どれだけ深く読んで伝えるか」なども考えないといけません。そのことを理解している学生が多く、時代を超えて二十歳前後が読むべき本や感動した本など普遍性のある作品を選んで読んでいる印象を受けました。

読書マラソンのように第三者に文字で本の内容を伝えるためには推敲が必要になります。何度も自分の中で考えることで読書がより深いものになるのです。そしてコメントを書いている途中で、最初は気づかなかったことや誤解していたことに気づくなど新たな発見があります。こうした経験を感性が柔らかでしなやかな学生時代にしておくことは、その後の人生にとって非常にいいことだと思います。

学生時代はとにかく多読がおすすめです。本は向こうから読者を見つけてくれるものなので、真っ白な気持ちで本棚の前に立ち、飛び込んできたものを読んでみてください。たくさんの本に囲まれた大学生協を最大限に利用して、多くの本を読んでもらいたいです。(談)

「読書マラソン」がつなぐ素敵な出会い


もともと本好きな学生さんの多い同志社大学。読書活動も盛んで、書籍部の中には学生サークルがプロデュースする棚があり、いつも話題となっています。 

そんな同志社生協の読書マラソンでは、本を継続的に読むことを目指しています。コースは、100冊のフルマラソンコースと50冊のハーフマラソンコースの2種類で、ゴールまでの期限はエントリーした日から1年間。「なんだか大変そう」と感じるかもしれませんが、チャレンジを始めると読んだ本の冊数が増えていく達成感がヤミツキになるらしく、みごと完走する学生さんが年々増えています! 

集まったコメントカードから学生さんの目線で月ごとに旬の「テーマ」を設定して本を選び、店頭の読書マラソンコーナーでカードと書籍を一緒に並べて展開中です。コメントをいただいた多彩な本がひとつのテーマのもとに集まると、意外な発見や驚きがあり、学生さんにも好評です! コメントカードで紹介された1冊が誰かのお気に入りの1冊になるかもしれない……読書マラソンコーナーではそんな本との素敵な出会いをご用意してお待ちしています。

(同志社生協良心館ブック&ショップ 有馬久恵・小川七菜子)


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