ピース 又吉直樹氏と語る「本」の素晴らしさとは・・・

又吉直樹、島へ行く。
母の故郷~奄 美・加計呂麻島へ DIRECTOR'S CUT
※ 番組に込められた秘話とは・・・・
※(2014年3月8日BSジャパンにて放送、第51回ギャラクシー賞 テレビ部門選奨作品)

三浦:では、座談会を始めていきたいと思います。又吉さんは、大阪のお生まれと聞いています。 高校ではサッカーをされていて、インターハイにも出られたと伺っています。高校を出られてから、大阪の人でありながら、東京の(※3)NSC東京に来られたというふうにお聞きしております。

その高校から東京に移られるときに、お母様の故郷 奄美大島の加計呂麻島に行かれた・・・そういう出だしから始まる番組がBSジャパンで今年の3月8日に放映されて、この番組がギャラクシー賞テレビ部門選奨というものに選ばれたということで、大変な賞を取られたということで、私もそのDVDを拝見させていただきました。

又吉氏:ありがとうございます。

三浦:全部で4章の構成で、大阪のお母さんに送った手紙というのが大変印象的でした。例えば「好きなことで苦しむ人、生きるために必要なことを楽しめる人」とか、「抑圧の中で生まれた島唄が誰かの魂と並走する」というような、大変味わい深い手紙を書かれて、お母さんに対する想いなどが非常に伝わってきました。又吉さんがなぜ高校のときから東京に行くときに1回島に行って、そして再びまたこの島に行く。島に行ってどういったことに気付かれたか。また大阪から東京に行ったのかということも、もし関連することがあるのでしたら、ぜひお話くださいますか。

又吉氏:なぜ東京に来る前に島に行ったか。 それは、父親は沖縄出身で、沖縄の島は何回も行ったのですが、母親の生まれた島は行っていなくて、母親はテレビで奄美大島が映るたびに「ここは私が生まれたところや」って楽しそうにしゃべるのです。事実、自分が生まれ育った島に22年も帰っていない母親へ、「1回母親の産まれた島へ行きたい!」と言ってみました。普通に考えたら行きたいわけないんですけれど・・・(笑)。東京行く前に、なかなか一緒に旅行することもできないでしょうし、「1回見ときたいねんけどな~」みたいなこと言うて、「ほんなら行こか~」って行ってきました。

そのとき僕は上京を控えていたので、ほとんど東京のことで頭がいっぱいで・・・(笑)。新しい環境のこと、それまでサッカーやっていてお笑いやったことなかったんですけれども、奄美大島を見てても、それを見ながら島と会話することもなく・・・。見ながらずっと東京のことや今後の自分の人生のことばかり考えていたんで、あんまり印象に残っていることというのがなくて・・・(笑)。このタイミングでもう一回ちゃんとあのときの加計呂麻島を今度ほんまにちゃんと見たいと思って・・・。見にいきたいというところから今回の番組企画は始まっていったんです。

東京に来たのは、いろんな理由はあるのですけど、やっぱり東京が魅力的やったっていうのと、あといろんな感覚の人が集まっているというのと。あと、「お笑いは大阪なんやろ、大阪じゃないの?」という質問をよく受けるんですけれども、やっぱり僕、本好きやったっていうのも影響しています。例えば僕が中学時代からずっと好きやった太宰とかって、読みながら笑ってまうことってよくあったんです。だから、僕の中学・高校の時点で、「面白い人は大阪人」ていう図式ではなかったんです。僕の好きやった人は、お笑い芸人のダウンタウンさんが好きやったんですけど、ダウンダウン、太宰治、マラドーナやったんで、1組関西ですけれどもあとはもう、アルゼンチンと青森やったんで、大阪っていうのがなくて・・・(笑)。あと芥川が好きやったりとか、近代文学とかそういうの読んでるときの東京って憧れもあったり。面白い人が集まってる街なんやろなという印象があり、行きたいなと思っていましたね。

三浦:再び島を訪れてみて、感じたこととか伝えたいこととか、何かありますか。

又吉氏:やっぱり18の頃は、これからの自分の人生のことばっかり考えていたんで、一方的に島の特徴とか島の声とか一切聞かんと、一人でずっとしゃべってる状態ですよね。実際にはしゃべってないんですけれども、「こうやな」「こうやな」「こうやな」っていうのをただただ歩きながら、それは別にどこでもできた作業を加計呂麻でやってて・・・。今回行ったときは、今も別に当時と変わらず、今後どうなるか分からんという状況ではあるんですが、でも1回こう! どういう島なんかちゃんと見て、何言ってんかというのをちゃんと聞いた上で会話できたという印象です。

※3 NSC東京(吉本総合芸能学院) 吉本興業が1982年(昭和57年)(東京校は1995年(平成7年)[1])に創立した、主に新人タレントを育成する目的で作られた養成所のこと。