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2014年10月29日(水) | 新着情報

読書のいずみ「座・対談」
海堂 尊さん「書けるときは、必ず来る」



1.医療と学園物語!?

西尾 7月に発売された『アクアマリンの神殿』を早速読ませていただきました。海堂さんの作品は医療モノというイメージが強く今回も最初は“コールドスリープ(凍眠)”など医療ネタが出てきますが、それだけでなく学園的な要素もあり主人公が成長していく様子も合間に挟んでいきながらの展開でしたね。主人公と世代が近い私には読みやすく、考えさせられる作品でした。後半はページを捲る手が止まらなかったです。

海堂 ありがとうございます。楽しんでいただくのが何よりなので、そういっていただけると嬉しいです。

加藤 私は、前作の『モルフェウスの領域』では大人の恋愛の要素が強い作品だなと思っていましたが、今回は学生が出てきたので青春を感じながら、そして彼らがそこから成長していく姿がとても面白かったです。いままでの医療が主体の物語とは違う新しい形だったので、すごく楽しく読みました。

海堂 確かに前作は大人の女性の愛で、正直なところ書くのがきつかったんですけど、今度は若い男の子なので書くのが楽でしたね。昔を思い出しながらね。

西尾 やはりご自身が投影される部分はあったのですか?

海堂 多少はありますね。

西尾 すごく楽しい学生生活を送ってこられたのかなぁと感じました。学園祭のシーンとか。

海堂 そうですね。楽しく読んでもらうのが大きな目標なので、その辺は自分が楽しくないと他の人も楽しくないだろうと思ったので、楽しんで書きました。

西尾 『モルフェウスの領域』や『アクアマリンの神殿』は、凄く描きにくいテーマを採用されているなという印象を受けました。いままではAiなどある種明快な問題に切りこんでいたと思うのですが、今回のようなテーマにされたのは、何かあったのですか?

海堂 これは未来時制なので、もともと少しSFっぽいものにしようと思ったんです。そしてもうひとつは、そもそも『モルフェウスの領域』を書いた理由というのが、破たんしたこれまでの物語のつじつまを合わせるため。アツシの年齢が『医学の卵』と合わなくて、5年おかしいんですよ。「5年、落第? それなのに飛び級?」と思って。落第でもよかったんですけど、飛び級だとおかしい。もうどうすることもできなくて、この際眠らせてしまおうと。『野性時代』で海堂尊特集をやってもらったときに短編を入れたんですが、短編ならアツシが「眠っていた」といえばつじつまが合うと思って、それで書いたんです。それがまさかあんなふうになるとは思わず、こんなものが出ると思わず(笑)。

 

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