米村でんじろう先生インタビュー

でんじろう先生の大学時代の生活や勉強について

ー大学に入学されて、大学生活で充実されていたポイントというか、何か印象に残っていらっしゃることはありますか。

大学生活そのものが僕にとっては、開放感のあるいい場所でしたね。だって3年も鬱屈していたわけですから。やっと人並みに大学生になったので、ものすごくホッとしました。でも最初は大学生活になじめなかった。教室に行っても一番後ろのできるだけ隅の方に目立たないようにして講義を受けていた。自分はちょっと挫折してきているし、年もいってるし、なかなか皆とは馴染めないだろうと思い、すごくイジけた学生生活のスタートを切りました。でも何週間か経ち、懇親会とかがあって、話してみると結構他の大学から来たとか、何年か浪人していたとか、いろんな学生がいて、世間っていろいろだなと思いました。話してみると1年2年の年の差なんて全然関係ないですね。あっという間に友達もできて、仲良くなって、すごく楽しい大学生活に変わりましたね。
新生活に対する期待もあったしね。でも勉強への意識はあまりなかったかな。 それでも1、2年生はなんとかなっていたんですよね。だけど僕がやっぱり失敗したなと思うのが、小さい頃から学習の習慣を身に着けなかったことですね。それが大きな反省になりましたね。大学に行ってもノートはとらない、講義はながらで聞いている、予習も復習もしない。ある程度最初は何とかなるけど、そのうち、難しくなってくるともうダメですよね。で、単位を落としかねない状況になる。僕は要領が悪いし、単位をボロボロと落とし始めていきました。でも一応、大学に入ったし、若者だから希望はあるわけですよ。だからしっかりと勉強して、いろんな知識をたくさん身に着けるんだとも思っていました。本を読むのは嫌いじゃなかったから、古本屋さんで安い文庫とかを読んだりしていたし、やる気がないことはないんです。でもそのやる気が一度折れました。「なんでわからないんだろう?」と思いました。勉強が足りない、努力が足りない、勉強の仕方が悪い、もしくは自分の能力が足りない、足りないのであれば頑張らなくてはいけないのかとか、ずっと悩むわけです。だけど結論を出さないといけないので、「ひょっとして自分はやはりバカだったか」というところにたどり着きました。「そうなんだ、バカなんだ、大学の先生は頭良くて、だから難しいことが分かっている。自分はバカだから大学の先生の言っていることが全然理解できないんだ、全然違うんだな」とある時ふと思ったわけです。それで悩みは少し軽くなったんだけど、余計単位が取れなくなった。
大学4年になった時かな、研究室に入るんですよ。卒業研究という単位を取る必要があるから、研究室に行って「入れてください」って教授に頼んだら、その教授に「単位いっぱい落としているね研究室入るのはダメだねあんた、卒業できないじゃない」って怒られました。このままだと本当に卒業できなくなるので、二度三度通って、なんとか。少数制だったので、先生1人に対して学生2、3人しかいないこともあるんですよ。だから、ほぼゼミ形式になっちゃうんです。ゆっくりゆっくりで、なんと進みの遅いこと。それくらいゆっくりやっていると少しは分かるよねっていう話。そうすると、強烈なコンプレックスが少し和らいだね。当時はたまたま、アップルが出た頃なんですよ。パソコンの黎明期。モニターがカラーで映るようになって、しかもプログラミング言語もえらい簡単。その代りフロッピーディスクも何もない時代。だから最初は手入力です。自分で入力したものをワーっとメモしていて、もう一度入力して。それを何とか教育利用できないか色んなシミュレーションを試しました。太陽の周りを回る地球や惑星、衛星の運動とか、先生が課題を出すのでそれをやっていました。そうするとやっぱり若者は新しいものの吸収が早いから、簡単な物理のシミュレーションなど、先生に言われたことが出来るようになるわけですよ。

これは他の物理の学問と違って素地がいらないから、マニュアル見ながら試行錯誤でやっていけば分かる。そこで学んだのは、自分も理解ができる学問があるということでした。もう一つ学んだことがあります。研究室に入ってパソコンいじるようになって、プログラムを作るようになった時、当たり前なんですけど、プログラムだってバグが1個でもあると動かないんですよね。今みたいな修正機能も何もないから。そうすると、僕の勉強の仕方が適当だったことが分かる。適当に話を聞いて、適当にやって、分からないと答えを見て「あぁそうか」とそのままにしておくから力がつかない。自分で徹底的に考えて身につけることをやらなかった。ところが簡単なプログラミングをやってみたら、適当では全くダメだった。きっちりとその通りにやらないと動かないし、逆にきっちりやってやれば正直に動いてくれるというのが、とてもいい訓練になりましたね。ただ丁寧に時間をかけてやるんだと、そういうものなんだなと。「あぁ、勉強ってこうやって一つひとつすごく時間をかけてやるものなんだな」ってことと、やればやったなりの成果はあるんだなということがようやく分かった。それが、僕が大学に行った意味としてはとても大きかった。