全国高等学校PTA連合会 前会長 牧田和樹氏

全国高等学校PTA連合会 前会長 牧田和樹氏
牧田 和樹 (まきた かずき)  55歳

富山県富山市在住 / 富山県高等学校PTA連合会所属

平成26〜27年度 富山県高等学校PTA連合会 会長
同    富山県立富山中部高等学校PTA 会長
平成28年度 全国高等学校PTA連合会 副会長
平成29年度〜全国高等学校PTA連合会 会長

株式会社牧田組(富山県射水市) 代表取締役社長
射水商工会議所 会頭 (49歳での会頭就任は当時全国最年少)
富山経済同友会 副代表幹事
長女は社会人、長男は大学1年生


インタビュアー
全国大学生協連 専務理事 
毎田伸一

毎田:どのくらいPTAと関わっておられますか。

牧田:娘が小学校2年の時からで、今26歳になりますから、20年近くになりました。

毎田:きっかけは、どのようなことでしたか。

牧田:青年会議所の先輩たちがずっとPTAをやっていて「お前のところも入学したんだろう、そろそろそういう世話をしろよ」みたいな話で引っ張られたというのが、きっかけですね。そうこうしているうちに、あれよあれよと「じゃ会長な」と言われて。ちょうどうちは上の子と下の子が6歳離れていて、上の子が中学校の時は下の子は小学校にいたので、幸い中学校の会長はやってないですけど、下の子が中学校に上がった時にはすぐに引っ張られて、高校のPTAと中学校のPTAを同時にやっていた頃がありましたね。

毎田:なかなかそれは大変ですよね。半分しょうがなくという感じ、でも半分くらいは楽しいという感じですか。

牧田:大変、ほんと大変だったですね。
基本的に頼まれたことは断らないようにしているんですよ。これは高P連の会長になった時もご挨拶で申し上げたんですけど、中村文昭という方が全国で講演しているキャッチフレーズに「頼まれごとは試されごと」という言葉があるんですよ。僕はその言葉がとてもに好きで、これはどういうことかと言うと、人が物を頼むというのは、ただ頼むのではなくて何かを期待しているんだと思うんです。だから頼まれたら、その期待を超す、その期待以上のことを返すというのが勝負なんだという話なんです。例えば、100円渡されて「ジュース買ってこい」と言われた時に、100円もらった途端に猛ダッシュしてあっという間に買ってくる。そうすると「なんだお前、こんな早く買ってきたのかよ」っていうことになって、びっくりする。だからそういったことが、いい意味で期待を裏切るということなんだという話を聞いて、なるほど確かにそれはそうだなというのはずっと頭にあって、いろんなことを頼まれて、いま商工会議所のお世話とか経済界のお世話とかをしているんですけど、そういうのはやっぱり言われたら「よし、じゃあそれ以上のことを返してやろう」というような気持ちでやっています。だから基本的なスタンスはそういうかたちかな。

毎田:恰好いいですね。そうは言ってもオーバーフローしたりとかはないんですか。

牧田:すごく僭越で生意気なことを言うようですが、意外と出来ちゃうんですよね。なんで出来るかというのを考えると、大体の組織運営というのは一緒なんですよ。なんとなく流れを見ていて、ここで躓くなという時に必ず躓くんですよ。それがなんだかわかるんですよね、いくつもやっていると。なんとなく様子が変だなと思うと、だいたい人間関係が上手くいってないとか、こいつは上手くいっていないから、なにかいずれ起こるなというのも分かるわけですよ。それはもう慣れですかね、慣れからくる勘みたいなものが働いていて、意外とそういうのは苦労せずできます。

毎田:確かに、「急ぎの仕事は、忙しい人に頼むのが一番早く仕上がってくる」とよく聞きますけど。

牧田:それは真理だと思いますよ。

毎田:PTAを続けてこられた原動力は何になりますか。

牧田:根底にあるのは、すごい負けず嫌いなんだと思いますよ。頼まれて断るということがあまり好きじゃない、だから腹の中で「やってやるよ」という気持ちがあるんだと思いますね。それだけですよ。だから本当に時間的にいうと、ものすごいキツイですよ。キツイですけどね、しょうがない。そんなことで弱音を吐いてはいけないし、そんな情けないところを見せてはいけないというくだらない意地(笑) そんなとこですよね。

毎田:逆にお子さんはどうでしょう。親御さんが学校に頻繁に来ることに対する抵抗感などはなかったですか。

牧田:もう慣れっこでしょうね。運動会などでも挨拶をしたりするじゃないですか、そんなのを見ても「お父さん、今日は何喋るの?」とかね。生意気にも「あの話はよくなかった」とか(笑)。 このやろう、という感じですよ(笑)。

毎田:親子の会話のネタになるのであれば、それはそれでよかったですね。


牧田:そうですね。だから全く嫌がるというのはなかったですね。逆に先生もからかって、掃除の時間に息子に「お父さんがあそこに来ているから、そこに掃除に行ったら」とかね(笑)。ことPTA、PTAだけじゃないかな、意外と人の繋がりというのが組織運営の大きなカギを握っていると思っていて、仲良くなれたらそれで組織はまわると思っているんですよ。だからPTAの時も積極的に先生方と会食に行きましたよ。そういう意味では、先生たちは近くの友達みたいな感じで接してくれますね。歳が近ければ友達みたいな感じで接してくれますし、年下の先生は兄弟までとは言わないけど、そういう関係で、子供が卒業した今でも用事があって学校に行くと、何人かの先生はすっとんで来て「飲みましょうよ」って(笑)。そういうのがやっぱり大事なんじゃないかな。どんな組織でも、ことPTAに関しては、保護者と先生とが仲良くなるというのが一番のPTA運営の秘訣だと思いますね。それができないと上手くいかないですよね。

毎田:PTA活動が活発な高校の特徴は人対人だというお話でしたが、会長さんや校長先生の間柄は結構関係ありますか。

牧田:ありますね。人柄と言うとすごい生意気なことを言うようですが、少なくとも校長先生と会長が腹を割って話せる関係が出来たら、これは強いですよ。それは一番だと思いますね。例えば学校であってはいけないことが起こった場合、関係が出来てない校長先生と会長だったら、会長に正確に情報が伝わらないわけですよね。それが実は事態をどんどん悪化させるんですよ。だいたいコトが起きるというのは、先生と子供がもめたりとか、先生と保護者がもめたりするわけでしょう。そこのクッションになるのがPTAだから、そこで上手くいってないと、問題なんてほとんど解決しないわけですよ。


毎田:本業もある中でそこまで深く関わるというのは、かなりのエネルギーが必要だと思いますが、その源というのは何でしょうか。

牧田:多分、本質的にはおせっかいやきなんだと思いますよ。なんだか放っておけないんですよね。校長先生から相談があって行くと、この世の終わりみたいな顔をしているんですよ。そういうのを見るとね、なんかしょうがないな(笑) ちょっと何とかしてあげなきゃなって思うんですよね。まあね、本当にそれだけですね。

毎田:学校の先生は、かなり精神的につらい場面があるとお聞きしていますが、ある時には抑える部分もあったり、支える部分もあったり、そういう役割でしょうね。

牧田:そこまでの強い力はないけど、ニュートラルな立場で双方の話を聞いてあげることができるというのは、やはりPTAのいいところだと思いますよ。よくPTAは親の会だと勘違いされているけど、これはPとTのAssociationなので、それを学校の先生にもしっかり理解してもらうことは大事だと思います。

毎田:会長職に就かれて半年経ちましたが、お仕事についてはいかがですか。


牧田:実は役割は2つあると思っていて、1つ目は、加盟校・各都道府県市連と全国高P連、その上に文科省やネット関係で総務省があったり、もちろん大学生協さんとか、日本学生支援機構さん、そういうところと加盟校を結ぶ連絡調整機関というのが一つの役割だなと思っています。その役割を考えた時に、今の全国高P連に必要なのは、いかにスピーディーに内部で情報をやりとりするかということで、このツールを何か考えなければいけないなと思っています。近々新しいツールを、実は導入しようとしているんです。それができれば、瞬時に日本全国の加盟校の反応を吸い上げることができるし、また逆にこっちが仕掛けて集約した意見を、審議会で発言するというようなことが出来るようにしたいですね。
それぞれの学校のPでありTである方たちの声を、きちんと伝えていくことが一番大きな役割だと思っています。そのインフラ整備を、とにかく私の時にやらないと駄目じゃないかと思ってやっています。

毎田:現場の生の声が、きちんと伝わる仕組みが大切だとお考えですね。

牧田:組織のトップになるとね、大体皆さん何か自分の功績を残したいという人が多いんですよ。それで何か事業をするとか、そういうことに一生懸命頭を巡らせるんですけど、全国高P連っていうのはそういう組織じゃない、まさに連絡調整機関だと思っているので、だからあくまでも活動の主体としては、対PTAの活動をちゃんとできればいいわけですよね。そのサポートのために本当は都道府県市連があって、またその全国的な調整機関として全国高P連があるというスタンスだと思うんですよ。そこはやっぱり崩しちゃいけないと思いますね。
もう一つの役割が私は「交流」だと思っていて、その「交流」のメインイベントが全国大会なので、これはさすがに主管をいただく連合会にご協力をいただかないといけないのですけど、これの充実を考えています。実は今までのガイドラインというか、大きく全国大会を変えようと思っています。今は1日目の朝から次の日の昼まで2日間びっしり行っているんですけど、これを1日目の午後から始めて翌日の午前で終わらないかなと。そうすると、場所によりますけど宿泊の期間が減るし、主管の負担が減ることになると思っています。

毎田:準備されているほとんどの方々は、いわゆる専業ではなくて、皆さん普段はお仕事をされている親御さんや先生方ですよね。私もこの間参加させていただいて、すごい大会だと実感しています。


牧田:だけどそれをやらなければいけないだろうと思いますよね。これから子供たちも減っていきますし、これは大学生協さんも同じだと思いますけど、人数が減るということはお金が減るということとイコールですから。これはもう運営ができなくなりますから、本当に大変なことだと思いますよ。

毎田:大学の中でいえば、2018年問題とずっと前から言われていて、18歳人口がもう一段階減り始めるのが、2018年です。大学は2018年問題と言っていますが、高校はその前の段階で既にそういう時代に突入されているわけですよね。これはなかなか学校としては、大変なんじゃないかなと。高校の場合、ほぼ進学率が100%に近いのであれば、絶対人口と全く同じようになるでしょうね。大学はまだ、今回はさすがにそうはならないと思いますが、進学率がどうなるのかにもよって大学も大学生人口というのが決まってくるので。

牧田:そうですね。だから、今の大学入試制度改革が、吉と出るか凶とでるか、まだちょっと分からないですよね。

毎田:実は私どもが全国高P連さんとお付き合いを始めた時に、高校生や親御さんの実態があまりよくわかっておらず、どちらかと言うと入ってくる瞬間に「ああ、こういうことか」ということが多かったほうですから、全国高P連さんとのお話の中で今の高校生の実態を知り、その上で新入生やその保護者の方を迎えないといけないということを改めて感じています。

牧田:基本的に大学生協さんというのは、高校時代と大学時代とのギャップを縮めるということが本質的な役割だろうと思うんですよね。そのギャップを縮めてきたところで、今度はスムーズに移行できたら、後は大学生活が待っていて、ハードの提供の次はソフトの提供としてニーズがあるということは大いに大事だと思います。


毎田:各大学生協では、大学にもよりますがこの5〜10年前頃から保護者説明会を開催し始めています。以前、私たちが大学生活のこと授業のことなどを伝える対象は新入生でしたが、ここ10年くらいは新入生の保護者も対象にして、大学生協のことや大学生活のことを先輩学生が説明してイメージを持ってもらい、保護者にも新入生にも大学時代を送るにあたってのモチベーションが上がるような取り組みをしています。親御さんに、自分の大学生活と今の大学生活が全然違ってきているということをご理解いただくために、このような話を私たちのような大学生協職員ではなくて、在学している学生が行っています。

牧田:私たちの時とは、確実に 役割が変わってきたということですね。

毎田:私たち大学生協は、単に本を売っているとかカレーを売っているだけではなく、勉強の仕方とか食生活のあり方とかをお伝えしています。一人暮らしをすることは親御さんご自身は不安かもしれませんが、学生本人にとってはすごく成長に繋がるんですよという話を女の子の先輩がお話をしたりしています。

牧田:文字通り、生活協同組合になってきたんですね。昔は共同購入組合みたいな感じだったけど、今は生活にしっかり根付いていますね。

毎田:高校生から大学生になる時の接点で、生活も勉強の仕方も大きく変わります。特に一人暮らしをされる学生にとっては、生活がガラッと変化し、今までの小学校から中学校とか中学校から高校とは桁違いに大きく変わる瞬間でもあると思います。

牧田:数々の大学生の「変化」に伴って、大学生へのサポートや生活面の支援・勉学時の援助などを益々継続されますことを希望致しております。

毎田:今回はお忙しい中 対談の機会を頂きましたこと、お礼申し上げます。

2017年12月1日(金) 富山大学生協にて

全国高等学校PTA連合会とは。http://www.zenkoupren.org/

高等学校のPTA 活動を通じて社会教育、家庭教育の充実及び学校教育との連携に努め、わが国の次代を担う青少年の健全育成を図り、生涯学習社会の形成に寄与することを目的に結成された連合組織です。団体を構成するのは都道府県市の連合会50 団体です。(47 都道府県と京都・大阪・神戸3市の連合会です。)
各連合会は独自の定款・規約をもつ独立の組織であり、全国で9つの地区ブロックで連合会を組織しています。それらの9地区から全国連合会の理事が選出され、会の運営に当たります。
全国連合会は、学校単位や都道府県市あるいは地区連合会ではできない全国的な課題や事業に取組んでいます。主なものは全国的な調査活動、広報活動、啓発活動、政府・国会等への要請行動などです。また会長をはじめ役員は政府等の各種審議会や協議会の委員に委嘱され、保護者の立場から意見表明を行っています。