新入生の保護者20,906名から集約
「2016年度保護者に聞く新入生調査」概要報告

※データの無断転載はお断りいたします。
2017年1月10日

<2016年度の特徴>

  1. 受験から入学までにかかった費用
    受験・入学費用に貯蓄を切り崩す家庭が増加。奨学金や学資保険は敬遠する傾向に

  2. 入学の際の保護者の関心
    オープンキャンパスへの同行、受験・入学までのスケジュール管理と、親子で迎える大学入学
    入学式への父親参加も3割に

全国大学生活協同組合連合会(以下 全国大学生協連)では、2007年から毎年4月〜5月に新入生の保護者を対象とした「保護者に聞く新入生調査」を実施しており、2016年は122大学生協の20,906名の方から回答を頂きました。

この調査は毎年、受験から入学までにかかった費用をはじめ、受験から入学までに困ったこと、大学生活を送る上での不安といった保護者の意識と併せ、大学生協の事業に対する評価を調査しています。
今回の調査結果からは、就職状況への不安からは解放されつつも、大学での授業や単位取得、人間関係にも心配がおよぶ保護者の様子が見えてきました。
また保護者自身が受験から入学までの慌ただしいスケジュールを管理し、奨学金に頼らない費用準備をするなど、短期、長期にわたって子どもの将来を見据えながら大学入学を迎えていることもわかります。

<調査の概要>

【調査の目的】 新学期の大学生協の取り組みについての保護者の評価や、新入生が入学までにかかる 費用、具体的なスケジュール、住まい探しや商品購入の際の意識を調査することによ り、新学期事業の総括および次年度提案の基礎データとする。
【調査対象】 2016年に入学した新入生(学部生)の保護者
【調査期間】 2016年4〜5月
【調査方法】 郵送調査(一部手渡しの生協あり)
【回収数】 20,906(回収率 29.3%)

サンプル特性

グラフ

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1.受験から入学までにかかった費用
受験・入学費用に貯蓄を切り崩す家庭が増加。奨学金や学資保険は敬遠する傾向に

平均額について

  • 各費目の平均額および合計の平均額は、それぞれ「0」と無回答を除いた数値の平均である「有額平均」で表示しています。
  • 費目のいずれかに「0」が含まれていても合計の平均額には反映されるため、各費目の平均額を合計したものと、合計の平均額は一致しない場合があります。

各費目の内容

A.出願をするためにかかった費用 受験料/願書を取り寄せた費用
B.受験のための費用 交通費/宿泊費/滞在費・その他
C.入学した大学への学校納付金 入学金/授業料/施設拡充費・その他/寄付金・学校債
D.合格発表や入学手続きのための費用  
E.入学式出席のための費用  
F.教科書・教材購入費用 パソコン/教科書/電子辞書/教材/その他
G.住まい探しの費用

交通費/宿泊費・滞在費/礼金・入館金・敷金/斡旋手数料/前家賃や日割分・その他

H.生活用品購入費用

寝具/家具/家電用品/自炊用品/電話加入権・配線工事費/電話機/日用雑貨・自転車・バイク/衣類

I.その他の費用 引越し代・荷物の送料/4月分の生活費/予備の貯金/保険料/生協出資金/お礼・お祝い返し・その他

(1)受験から入学までにかかった費用(図表1〜4)

国公立・自宅・医歯薬系の1,239,600円から私立・下宿・医歯薬系の2,927,700円まで

  1. 自宅生の受験から入学までにかかった費用

    ○国公立1,256,300円・私立1,492,100円

    • 国公立文科系1,259,700円・国公立理工系1,256,500円・国公立医歯薬系1,239,600円
    • 私立文科系1,374,300円・私立理工系1,674,500円・私立医歯薬系2,269,200円
  2. 下宿生の受験から入学までにかかった費用

    ○国公立2,008,000円・私立2,222,700円

    • 国公立文科系1,976,700円・国公立理工系2,006,500円・国公立医歯薬系2,138,400円
    • 私立文科系2,097,700円・私立理工系2,457,600円・私立医歯薬系2,927,700円

図表

図表

図表
2016年は「C.入学した大学への学校納付金」に近日中に支払う予定の金額を含んでいます。

図表
2016年は「C.入学した大学への学校納付金」に近日中に支払う予定の金額を含んでいます。

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各費目の平均額および合計の平均額は、それぞれ「0」と無回答を除いた数値の平均である「有額平均」で表示しています。
費目のいずれかに「0」が含まれていても合計の平均額には反映されるため、各費目の平均額を合計したものと、合計の平均額は一致しない場合があります。

(2)受験から入学までにかかった費用の特徴 (図表5〜8)

「奨学金」や「学資保険」より、「貯蓄の切り崩し」で乗り切る家庭が増加

①受験から入学までの費用は設置者、専攻、住まいなど進路により大きく違い、平均額は国公立・自宅・医歯薬系の1,239,600円が最も低く、私立・下宿・医歯薬系2,927,700円が最も高い。医歯薬系は受験した学部数の平均が2.6学部と文科系(3.3学部)、理工系(3.2学部)と比較して少ないこともあり、「受験料」が114,600円と他の専攻(文科系143,300円・理工系131,000円)より低い。

②教科書・教材購入費用は15年から11,100円増加しており、理工系(12,600円)、医歯薬系(19,000円)の増加が大きい。内訳として価格が値上がりした「パソコン」の12,700円(文科系11,100円・理工系13,900円・医歯薬系14,000円)増加が大きく影響している。

③費用面の準備として「学資保険に入っていた」が53.9%と最も多いものの、これまで最も高かった13年の61.9%からは3年間で8.0ポイント減少しており、私立自宅生は10.5ポイント減少した。

④一方「貯蓄を切り崩した」34.9%は11年の29.0%から5.9ポイント増加した。設置者、住まいに関わらず増加傾向が続いている。

⑤「奨学金を申請した」は34.4%で全体では前年比0.3ポイント増だが、5年間で4.0ポイント減少している。国立下宿生の「奨学金を申請した」は前年マイナス2.0ポイントで、5年間で7.6ポイント減少している。

ここ数年の変化では、表題のように奨学金と学資保険が減少し、貯金の取り崩しの増加で対応している。但し奨学金は2016年は前年より若干増加であり、政府の給付型奨学金創設などの動きもあり、引き続き今後の動向に注目すべきであろう。

※2016年の調査では大学納付金の金額を「近日中に支払う予定の金額も含めて」との注記を設問に追加したため、全体の合計金額が昨年までより大きく増加しているが、各費目ごとの費用についての平均値には影響していない。

図表

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2.保護者の意識
オープンキャンパスへの同行、受験・入学までのスケジュール管理と、親子で迎える大学入学
入学式への父親参加も3割に

(1)受験から入学までの保護者の意識(図表9〜12)

「設置者」「大学の所在地」への関心は高く、就職率への関心は落ち着く

① 大学選びの関心事のうち最も高いものが「設置者」58.5%で、国公立では78.4%(私立24.2%)、学部別では医歯薬系が72.9%と高い。また「大学の所在地」も全体で53.1%、自宅生は64.5%と特に高く、「設置者」と並び大学生活を送るための費用への影響が大きいことに関心が多く寄せられている。

② 国公立では前回調査の2014年から「就職率などの就職実績」が2.2ポイント減少している一方、「授業や研究内容」が2.2ポイント増加した(文科系+2.0ポイント・理工系+2.4ポイント・医歯薬系+0.7ポイント)。

③ 大学生活を送る際の保護者の心配についても、「就職や将来のこと」は39.1%(文科系43.8%・理工系37.5%・医歯薬系15.5%)と、前年より増加しているものの、2010年以降は入試形態や専攻によらず減少傾向が続いている。理工系では2008年比マイナス7.5ポイント、文科系も5.6ポイント減少した。

④一方「大学での授業や単位のこと」は40.2%と2008年比10.7ポイント増加。入試形態や専攻にかかわらず10ポイント以上増加している。また「友達付き合いや人間関係のこと」もこの9年間増加傾向が続いており、自宅生5.8ポイント、下宿生6.8ポイント増加した。

⑤受験から入学までに困ったこととして「スケジュール管理」は08年と比較すると4.9ポイント増加。一般入試では5.4ポイント増加している。

保護者の心配事はここ数年で見ると、「就職や将来」から「大学での授業や単位」「友達付き合いや人間関係」へと、二極化と言われているとはいえ就職率の好転もあり、子どもの大学生活自体に移っているようだ。但し、2016年は「就職や将来のこと」が前年より増加しているので、今後の変化に注目が必要である。

図表

図表
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(2)入学までの行動(図表13〜14)

オープンキャンパスには母親の半数、入学式は父親の3割が参加

①入学した大学のオープンキャンパスには新入生の48.5%が参加している。推薦生は76.3%と参加した比率が高く、前年から4.4ポイント増加であった。推薦生の中でも参加率は自宅生が84.6%と高いが、下宿生も67.8%で前年比+5.5ポイントと増加が大きい。

②推薦生のオープンキャンパスへの参加は「母親」が同行している割合も33.3%と一般生11.0%と比べて高く、推薦の自宅生は前年の27.2%から7.1ポイント増加し34.3%となった。

③入学式には97.4%の新入生が出席し、そのうち72.2%には同行者がいる。同行者で最も多いのは「母親」で67.2%(自宅生72.5%・下宿生63.1%)、「父親」も29.1%おり、「父親」は自宅生28.4%、下宿生29.8%と下宿生の参加が多い。

④また推薦生のうち下宿生は「父親」の入学式への出席が35.1%と、自宅生(27.6%)より7.5ポイント高く、前年からも4.8ポイント増加した。また「母親」の参加は69.7%と自宅生(74.9%)より低いものの、前年から5.0ポイント増と、父親、母親ともに参加が増えている。

数年のスパンで見ると、オープンキャンパス・入学式とも家族の同行は、わずかではあるが増加傾向にある。

図表
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