第48回学生生活実態調査の概要報告

※データの無断転載はお断りいたします。

2013年2月13日

第48回学生生活実態調査 概要報告

報告内容

はじめに 調査概要とサンプル特性

<調査概要>

  1. 調査実施時期 2012年10~11月
  2. 対象 全国の国公立および私立大学の学部学生
  3. 回収数 8,609(回収率29.2%)

<サンプル特性> (表1)

  1. 第48回学生生活実態調査は78大学生協が参加、18,948名から協力を得た。ただしここで紹介する数値は、経年での変化をより正確に見るために、毎年指定している30大学生協で回収した8,609名の平均値である。
  2. 全体的に昨年の構成比と比べ、大きな差異がなく、経年での比較にも耐え得る調査である。
  3. 今回に限ったことではないが、専攻別の男女の構成比は、文科系4.5:5.5、理科系7.5:2.5、医歯薬系3.9:6.1となっており、文科系と医歯薬系の特徴は女子の影響を受けやすく、反対に理科系の特徴は男子の特徴を受けやすくなっている。

【表1】

学生の経済状況

厳しい経済状況が固定化し、奨学金も減少。収入増はアルバイトに頼る
しかし暮らし向きは「楽」が大幅増加、今後の見通しも好転

1.自宅生の生活費(表2)

アルバイト収入は増加。奨学金の減少により、収入合計は6年連続減少

  1. 自宅生の収入合計は58,360円で前年比-470円。「アルバイト」収入は30,030円(前年比+530円)で、5年ぶりに増加。1年生+450円、2年生+1,420円増加し、アルバイトの就労率も1、2年生で3.1ポイントと1.2ポイント増加している。
  2. 「小遣い」は14,670円(前年比-400円)で、4年連続減少している。
  3. 「奨学金」は11,790円で前年比-600円。3年生-1,760円、4年生-2,350円と高学年で減少している。4年生の奨学金受給率は28.7%で前年から2.4ポイント減少、「奨学金をもらう必要性を感じなかった」が前年の42.2%から51.7%に大幅増加しており、将来返済すべきリスクについての意識が高まったとも考えられる。
  4. 支出合計は56,040円(前年比-950円)。「食費」(同+60円)、「教養娯楽費」(同+310円)を除いた費目で減少。
  5. 「貯金・繰越」は16,110円で前年比-110円。「奨学金」が減少しており自宅生の多くが奨学金を大学納付金のために貯金していることも減少の一因と思われる。
2
下宿生の生活費(表3 図1)

「仕送り」は引き続き減少。「アルバイト」収入増で5年ぶりに収入合計は増加

  1. 下宿生の収入合計は120,640円で前年比+1,740円。
  2. 「仕送り」は前年比-170円の69,610円で、減少幅はこれまでより小さいものの、6年連続減少となった。仕送りが「0」の割合も10.0%で4年連続1割を超え、「0」を含む5万円未満は25.1%から26.8%に増加した。
  3. 「奨学金」は25,380円で+30円と前年並みだが、3年生は-1,310円と減少が大きい。
  4. 「アルバイト代」は+1,560円の23,100円。1年生+960円、2年生+4,400円、3年生-480円、4年生+1,140円。アルバイトの就労率も1年生47.9%(2.8ポイント増)、2年生68.0%(3.5ポイント増)と増加し、収入合計も4,370円と2,690円増加している。
  5. 支出合計は115,570円で前年比+810円。「食費」22,900円(前年比+310円)、「住居費」53,420円(同+400円)、「貯金・繰越」10,710円(同+420円)などが増加している。
  6. 「食費」は前年比では増加したが、引き続き1976年(22,970円)並みの金額。1年生と2年生は食費での増加(それぞれ700円と770円)を始め、支出合計も+3,830円と+1,940円と大きく増加した。

3
奨学金の受給(表4・5)

自宅生は受給率、受給平均額ともに前年から減少

  1. 受給率は37.2%(自宅生29.5%・下宿生43.6%)で、09年37.2%(自宅生27.5%・下宿生44.6%)→10年37.3%(自宅生27.8%・下宿生44.4%)→11年37.9%(自宅生29.9%・下宿生43.4%)と推移。11年は自宅生のうち1年生が前年比5.4ポイント増と大きく増加したが、12年は1.3ポイント減となった。
  2. 自宅生は受給している学生の平均受給額も55,880円から54,460円に減少。1、2年生はそれぞれ2,020円と1,230円増加しているが、3、4年生は6,580円と4,290円と減少額が大きい

4
暮らし向きに対する意識(図2 表6)

「大変楽な方」「楽な方」が増加、今後の生活も「苦しくなる」は減少
アルバイト収入増や就職状況の好転で経済生活は安定の見通し

  1. 暮らし向きについて「大変楽な方」+「楽な方」50.5%、「ふつう」38.7%、「苦しい方」+「大変苦しい方」10.2%。「ふつう」は前年から4.4ポイント減少し、「大変楽な方」が5.5ポイント、「楽な方」が1.6ポイントそれぞれ増加している。
  2. 自宅生は「大変楽な方」+「楽な方」が53.0%で、前年から+9.4ポイントと、特に増加が大きい(下宿生は4.8ポイント増)。
  3. 今後の見通しについては「かなりよくなりそう」2.7%(前年比+0.7ポイント)や「少しよくなりそう」13.7%(前年比-1.5ポイント)は前年並みだが、「少し苦しくなりそう」18.2%(同-8.6ポイント)や「かなり苦しくなりそう」3.7%(同-1.7ポイント)が減少し、「変わらない」が50.8%(同+10.1ポイント)と大幅に増加。現状、今後ともに楽観視する学生が増加した。

就職について

就職内定者の4人に1人は中途退職や転職を考えている
就職率の好転により不安内容にも変化の兆し

1
就職への不安(図3 表7)

就職内定率の上昇。学生の不安は“内定”から“自身の働き方”にシフト

  1. 就職に不安を「感じている」は全体で75.3%(昨年比1.4ポイント増)、就職予定者を100とすると77.6%で昨年比1.7ポイント増となった。
  2. 就職予定者の不安については「就職ができるか」50.4%(11年51.0%)、「自分が何に向いているか」29.4%(11年30.5%)の変化は小さく、「希望の職種に就けるか」29.2%(11年32.6%)や「就職先が安定しているか」14.8%(11年17.1%)は減少。
  3. 「自分が仕事を続けられるか」は11年の13.6%から16.3%に増加傾向。就職予定の4年生は23.4%から28.5%へと大きく増加しており、特に内定者は11年の25.4%(n=764)から34.8%(12年n=793)と不安の拡大が大きい。
  4. 就職予定の4年生のうち非内定者(11年n=361、12年n=415)の「就職ができるか」といった不安は11年の45.2%に対し12年は46.7%と大きな変化はないが、「希望の会社に入れるか」は13.9%から9.4%に減少傾向となった。※“内定者”“非内定者”のデータは11年以降。 就職活動を行うにあたっては、就職希望先の範囲を広げることも内定獲得のための定石として定着し、実際に就職率の上昇につながっているとされている。しかしそのことにより、内定後その職場で継続して働くことへの自信や意欲が薄れ、また非内定者にとっては就職先の“希望”自体が縮小する傾向となったのではないか。

2
転職や中途退職について(図4~7)

内定者の転職や中途退職について考える学生は26.7%
女子の1割以上は「結婚や妊娠を機に退職」を希望

  1. 卒業後最初の職場について、転職や中途退職を考えている学生は15.3%。そのうち「具体的に考えている」2.4%、「結婚や妊娠を機に退職」5.2%、「具体的ではないが、したい」7.7%。
  2. 「転職や中途退職はしたくない」は44.0%で、男子46.7%、女子40.6%と男女差はあるが、学年毎の差は小さい。
  3. また、学年が上がる毎に「具体的に」や「具体的ではないが…」が増加する一方で、「わからない・考えたことがない」(全体36.8%)は学年が上がると減少しているため、「わからない…」も転職や中途退職を考える“予備軍”として存在しているように見える。
  4. 「具体的に」考えている転職・中途退職までの勤続年数は平均6.2年。男子が7.2年に対して女子が4.7年と短い。
  5. 就職予定の4年生のうち就職内定者の26.7%は、転職や中途退職について考えており、そのうち5.9%が具体的な年数も考えている。また非内定者も26.9%がいずれかの時期に転職を考えている。内定、非内定にかかわらず、自身で納得のいく就職や就職活動ができたかによる影響が大きいのではないか。
  6. 大学生活の重点が「資格取得」の学生は、転職や中途退職を「したくない」が54.5%と多く、特に男子は62.3%(女子47.6%)と、この傾向が強い。
  7. 「結婚や妊娠を機に…」は女子の11.7%(男子0.1%)を占めている。この層は大学卒業後に「結婚して家庭を持ちたい」に対して「そう思う」が85.9%と女子全体の平均61.7%を大きく上回っており、結婚に対する意識も高い。また、非内定者の女子は「結婚や妊娠を機に…」が14.3%(内定者9.9%)と高い傾向にある。

大学生の勉強時間

最新の大学生の勉強時間(1日)は、文系28.4分・理系48.3分・医歯薬系52.1分
入試形態による自主的な勉強時間の差も見られる
(表8~11 図8~10)

<大学の勉強時間> 予習・復習・論文など(1週間単位で調査)

<大学以外の勉強時間> 就職に関することや関心事(1週間単位で調査)

<授業時間> 出席コマ数×90分(平日の1日で調査)

<大学生活の重点>
1)勉強や研究を第一においた生活(勉強第一)
2)サークル・同好会の活動を第一においた生活(サークル)
3)自分の趣味(車・スポーツ・音楽・パソコンなど)を第一においた生活(趣味)
4)よき友を得たり豊かな人間関係を結ぶことを第一においた生活(人間関係)
5)将来就きたい仕事や就職のために資格取得や大学外の学校に通うことを第一においた生活(資格取得)
6)アルバイトをしたり、お金をためることを第一においた生活(アルバイト)
7)特別に重点をおかず、ほどほどに組み合わせた生活(ほどほど)
8)なんとなく過ぎていく生活(なんとなく)
9)その他

  1. 1週間における授業を除く「大学の勉強時間」は平均4.58時間(1日平均39.2分)。文系3.31時間(同28.4分)・理系5.63時間(同48.3分)・医歯薬6.08時間(同52.1分)と専攻による差は大きい。
  2. また、1年生3.60時間(文系2.83時間・理系4.22時間)・2年生3.68時間(文系2.80時間・理系4.34時間)・3年生4.18時間(文系2.96時間・理系5.06時間)・4年生7.21時間(文系4.98時間・理系9.38時間)と学年が上がる毎に時間は増える。
  3. 1週間の勉強時間が「0」は1年生7.6%(文系8.7%・理系6.3%)、2年生10.2%(文系12.0%・理系9.1%)、3年生11.7%(文系16.0%・理系7.6%)、4年生12.8%(文系18.2%・理系8.8%)と、文系は学年が上がるほど勉強時間の「0」が増える
  4. 理系は4年生の有額平均時間が10.31時間と最も長く、1年生4.51時間、2年生4.78時間、3年生5.48時間と、4年生で大幅に増える。学内で過ごす授業時間以外の時間が7.3時間(全体平均3.7時間)と長く、研究室での時間や大学院進学に向けた準備によるものと思われる。
  5. 就職に関して「就きたい職業や職種のために何かをしている」が65.6%と67.8%と多い文系3年生と4年生は「大学以外の勉強時間」もそれぞれ4.19時間と3.61時間と長い。就職活動や資格取得のための時間と考えられる。
  6. 大学入試の形態別に見ると文系、理系ともに推薦入試より一般入試の方が「大学の勉強時間」、「大学以外の勉強時間」ともに長い傾向があり、大学入試の際の学習習慣の違いが自主的な勉強時間に影響しているように見える。
  7. ただし「大学の勉強時間」が「0」の割合は一般入試10.3%(文系13.2%・理系8.0%・医歯薬7.8%)に対し、推薦入試11.1%(文系13.9%・理系7.1%・医歯薬7.0%)と、その差は小さい。
  8. 授業時間を含めた一日の「大学の勉強時間」は平均4.55時間で、一般入試4.55時間、推薦入試4.58時間と入試形態による差は見られない。
  9. 大学生活の重点別にみると、「大学の勉強時間」は、「勉強第一」の7.45時間が最も長く、以下「ほどほど」4.20時間、「人間関係」3.29時間、「趣味」3.28時間などが続く。「勉強第一」の理系4年生は平均11.71時間と長い。
  10. 大学以外の勉強時間は「資格取得」6.0時間で最も長く、文系の3、4年生は9.67時間。「勉強第一」も2.79時間と次いで長く、文系3年生は5.29時間となっている。
  11. 1日の読書時間と勉強時間の長さはほぼ比例している。