第52回学生生活実態調査の概要報告

※データの無断転載はお断りいたします。

CAMPUS LIFE DATA 2016

2017年2月23日

はじめに 調査概要とサンプル特性について

<調査概要>

調査実施時期
2016年10〜11月
調査対象
全国の国公立および私立大学の学部学生
回収数
10,155(30大学・回収率33.1%)
調査項目の概要
属性、住まい、大学生活(登下校時刻・サークル・就職など)、日常生活(生活時間・悩み・政治への関心など)、経済生活(暮らし向き・アルバイト・奨学金・1ヶ月の生活費・半年間の特別費など)、大学生協について(店舗の評価・活動の認知)、大学生協や大学への意見
平均値の表示
「0」を除いた平均値(額)を「有額平均(または有額)」、「0」を含めた平均値(額)を「平均(または実額平均や実額)」として表示

<サンプル特性>

  1. 第52回学生生活実態調査は85大学生協が参加、20,115名から協力を得た。ただしここで紹介する数値は、経年での変化をより正確に見るために、毎年指定している30大学生協で回収した10,155名の平均値である。
  2. 全体的に昨年の構成比と比べ大きな差異がなく、経年での比較にも耐え得る調査である。
  3. 専攻別の男女の構成比は、文系4.4:5.6、理系7.1:2.9、医歯薬系4.0:6.0となっており、文系と医歯薬系の特徴は女子の影響を受けやすく、理系の特徴は男子の特徴を受けやすくなっている。

1.学生の経済状況

「小遣い」「仕送り」減少も「アルバイト」で生活の充実をはかる
今の生活は「楽」であるが、将来の不安のために「貯金」はかかせない

(1)自宅生の生活費(図表1)

「小遣い」は40年前の金額まで減少
「アルバイト」収入増が「貯金・繰越」の増加につながる

  1. 自宅生の収入合計は62,310円。前年から120円増加し4年連続増加。
  2. 費目別には「アルバイト」が35,770円で、前年から1,810円増加。5年連続増加となり、2001年以降最も高い金額となった。
  3. 「小遣い」14,270円(前年-770円)、「奨学金」10,770円(前年-700円)など「アルバイト」以外の費目は減少。「小遣い」は金額、生活費に占める割合ともに40年前の1976年以降最も低い数値となり、「奨学金」も3年連続減少している。
  4. 支出合計は60,690円で、前年+800円。15年ぶりの6万円台となった。
  5. 費目別には「食費」12,580円(前年+330円)、「日常費」4,900円(前年+100円)、「その他」3,180円(前年+770円)、「貯金・繰越」18,090円(前年+900円)が増加。「貯金・繰越」はこの費目として調査し始めた1980年以降最も高くなった。
  6. 減少費目は「住居費」160円(前年-120円)、「交通費」8,830円(前年-190円)、「教養娯楽費」8,240円(前年-250円)、「書籍費」1,450円(前年-230円)、「勉学費」960円(前年-160円)、「電話代」2,280円(前年-390円)。「書籍費」は70年以降の最低金額を更新し、「電話代」は項目として独立した2000年以降最も低い金額となった。

(2)下宿生の生活費(図表2・3)

「仕送り」「奨学金」は前年から減少。「アルバイト」収入は70年以降最も高い金額に

  1. 下宿生の収入合計は120,820円。前年から1,760円減少した。
  2. 費目別には「アルバイト」が27,120円で前年から1,800円増加。70年以降最も高い金額となり、収入に占める比率も、22.4%と金額同様に過去最高となった。
  3. 「アルバイト」以外の「仕送り」70,610円(前年-830円)、「奨学金」21,260円(前年-2,010円)、「定職」30円(前年-200円)、「その他」1,800円(前年-520円)は減少。
  4. 「仕送り」はこの5年間増減を繰り返し 7万円前後を推移している。「仕送り」の金額帯は0円が下宿生の8.0%と前年から1.1ポイント減、10万円以上も1.4ポイント減少している。
  5. 支出合計は117,610円で、前年から590円減少。
  6. 費目別には「食費」24,770円(前年+10円)、「日常費」5,810円(前年+270円)、「貯金・繰越」13,270円(前年+770円)、「その他」3,220円(前年+790円)が前年から増加。下宿生の「貯金・繰越」も80年以降最も高い金額となった。
  7. 前年から減少した費目は「住居費」51,990円(前年-1,110円)、「交通費」3,280円(前年-40円)、「教養娯楽費」8,800円(前年-440円)、「書籍費」1,590円(前年-130円)、勉学費1,360円(前年-130円)、「電話代」3,510円(前年-590円)。自宅生同様「書籍費」は70年以降最も少なく、「電話代」は2000年以降最も低い金額となった。

(3)暮らし向き

暮らし向き「楽」は引き続き半数以上
「苦しい方」は減少するも、「大変苦しい方」が1.4%と少数だが一定数が存在

  1. 暮らし向きが「楽」(「大変楽」+「楽な方」)52.2%(自宅生55.1%・下宿生50.3%・寮生40.1%)前年比-0.5ポイント、「ふつう」38.7%(自宅生36.0%・下宿生40.7%・寮生45.1%)前年比+1.1ポイント。「苦しい」(「苦しい方」+「大変苦しい方」)8.9%(自宅生8.4%・下宿生8.8%・寮生14.9%)前年比-0.5ポイントであった。
  2. 今後の見通しについては「よくなる」(「かなりよくなりそう」+「少しはよくなりそう」)が18.1%(自宅生15.3%・下宿生20.3%)前年比-0.2ポイント。
  3. 収入面の対策は「アルバイトを増やす」50.7%(自宅生52.1%・下宿生49.4%)で、前年比+3.6ポイントと、引き続きアルバイトに積極的な傾向が見られる。「特にない」22.9%(自宅生24.8%・下宿生21.6%)、「我慢する」14.7%(自宅生13.2%・下宿生15.8%)、「奨学金を申請する」5.5%(自宅生5.5%・下宿生5.4%)は前年から減少している。
  4. 節約・工夫したい費目のうち最も多いものが「外食費を含む食費」65.1%(自宅生60.2%・下宿生69.6%)だが、前回調査の14年比-2.6ポイント(自宅生-3.8ポイント・下宿生-0.9ポイント)と微減。増やしたい費目は「貯金」が45.6%と引き続き高い。

(4)アルバイト(図表4)

就労率、収入金額ともに前年より増加基調

  1. 調査時のアルバイト就労率は71.9%(自宅生78.4%・下宿生66.8%)で、データがある08年以降最も高く、この半年間のアルバイト就労率も77.5%(自宅生81.4%・下宿生74.3%)と高い就労率であった。
  2. アルバイトの1週間の就労時間は平均時間12.5時間で、10時間以上15時間未満が18.4%、20時間以上も13.9%を占める。
  3. また夜10時から朝5時までの深夜時間帯にも20.7%(就労者を100として28.8%)がアルバイトしており、その平均日数は1週間のうち2.2日であった。
  4. 半年間のアルバイト収入の用途は「旅行・レジャー」24.3%、「生活費のゆとり」22.3%、「生活費の維持」19.2%のほか「貯金」も17.7%(自宅生22.6%・下宿生13.5%)と高い。

【図表4】アルバイト就労率と1ヶ月のアルバイト代

(5)奨学金(図表5)

受給者、受給額の減少傾向は続くが、貸与型奨学金受給者の7割が返済に不安を感じている

  1. 何らかの奨学金を「受給している」は33.5%(自宅生27.3%・下宿生37.5%)。下宿生の受給率は緩やかに下降傾向が続いており、受給率が最も高かった09年から7.1ポイント減、受給額の平均も3,230円減少している。
  2. 受給者のうち「日本学生支援機構の奨学金」29.7%、「日本学生支援機構以外の貸与型奨学金」2.1%と、貸与型奨学金を受給しているのは31.2%であった。また「大学や財団などの給付型奨学金」3.2%であるが、このうち「貸与型奨学金」をあわせて受給している学生も1.4%いるため、「給付型奨学金のみ」は1.8%(受給者の5.4%)。「貸与型奨学金のみ」が全体の29.8%(奨学金受給者を100として89.0%)を占める。
  3. 貸与型奨学金のみの受給平均額は56,910円(自宅生55,280円・下宿生57,970円)、貸与型+給付型奨学金の平均額は70,500円(自宅生67,380円・下宿生73,450円)。
  4. 給付型奨学金の受給者は国立が2.4%(自宅生2.3%・自宅外生2.4%)に対し、私立は4.9%(自宅生4.0%・自宅外生6.8%)。給付型奨学金のみの受給平均額は57,900円(自宅生58,160円・下宿生56,710円)であった。
  5. 奨学金の使途は「授業料などの大学納付金」16.7%(自宅生20.5%・下宿生13.0%)、「食費や住居費などの生活費」16.1%(自宅生3.9%・下宿生25.4%)と、住まいにより使途の違いが見られる。

【図表5】奨学金受給者

(6)貸与型奨学金受給者の暮らし向き(図表6〜10)

返済に対する不安を感じ、アルバイトの就労時間も長い

  1. 貸与型奨学金受給者(全体の31.2%)を100とすると、将来奨学金を返済することに対して不安を「感じている」(「常に」+「時々」)は73.4%、そのうち「常に感じている」が20.8%に上る。
  2. また全体では半数以上が「楽」(「大変楽」+「楽な方」)と感じる自身の暮らし向きも、受給者は「楽」(「大変楽」+「楽な方」)が37.1%で、非受給者の59.0%と比較すると20ポイント以上低い。
  3. 受給者は非受給者よりアルバイトの就労率、1週間の勤務日数、半年間の収入金額のいずれも高い傾向がある。
  4. アルバイトの目的も「授業料」「生活費の維持」は受給者が多くあげており、「貯金」は非受給者の方が多くあげている。

【図表6】暮らし向き(貸与型奨学金受給の有無)

【図表7】貸与型奨学金の受給とアルバイト

(7)半年間の特別費(図表11・12)

国内旅行の実施増。就活時期の変更で文系4年生の行動も変化

  1. 2016年4月〜9月までの生活費以外の特別な支出(特別費)の実額平均合計は189,100円で、前年+200円であった。前年から増加した費目は「運転免許」(+2,900円)、「国内旅行」(+1,900円)、「海外旅行」(+1,400円、15年は-5,900円)で、「国内旅行」は実施率、平均額(実額・有額)ともにこの3年間増加しており、「国内旅行」として調査し始めた96年以降の最高値を更新している。
  2. 有額平均合計は198,700円で前年から+900円だが、費目別にみると「留学」(-53,000円)や「海外旅行」(-27,400円)は大きく減少している。
  3. 前年減少した文系4年生の「国内旅行」は平均額、実施比率が増加。逆に15年に平均額が増加した「就職活動」は平均額が減少している。就職活動時期の変更が大きく影響したと見られる。

【図表12】文系4年生の半年間の特別費(4〜9月の実施)

2.就職について(図表13・14)

就職に対しての不安を「感じる」は73%
「就職先が安定しているか」の不安は縮小傾向が続く

  1. 就職に対する不安は全体の73.0%、就職予定者(58.5%)を100とすると75.3%が感じており、前年から0.4ポイント減少した。就職のための何かを「している」(「している」+「まあしている」)54.7%、就きたい職業を「決めている」(「内定している」+「未内定だが決めている」+「だいたい決めている」)69.4%といずれも前年からの変化は小さい。
  2. 就職に対する不安の内容をみると、文系4年生の就職予定者のうち「就職先が安定しているか」は9.3%と前年から5.5ポイント減。「就職できるか」の不安は前年と同じ14.2%であった。
  3. 継続中の人も含め、就職活動を行ったことが「ある」は15.7%で、4年生では53.4%。
  4. 4年生の就活した人を100とした場合、困ったこととして「出費が多い」59.1%(11年67.7%)、「落ち着かない」56.6%(11年61.5%)、「授業やゼミに支障が出る」26.4%(11年41.2%)などがあげられるが、「身体的な疲労・健康を害した」13.1%(11年9.7%)以外の項目で5年前と比べ減少している。
  5. 「面接・選考時や内(々)定後にハラスメントを受けた」は男子0.8%に対して女子2.1%(いずれも全学年平均)であった。

【図表13】文系4年生(就職予定者を100として)の就職に対する意識

【図表14】就活の際困ったこと(4年生・就活した人を100として)

3.日常生活について

下宿生の投票率は31.5%と自宅生の半分以下。現住所に選挙権なく棄権の下宿生が4割
読書時間は減少が継続

(1)政治への関心(図表15〜19)

政治への関心は低下、日本の未来に対する展望も減少。
下宿生の4割が住民票を移さず投票しなかった参議院選。自宅生は75.2%が投票。

  1. 国内外の政治の動向に関心が「ある」(「大いに」+「まあ」)57.9%(男子60.4%・女子54.8%/文系65.3%・理系53.8%)。前年から6.6ポイント減となり、下宿生、女子、医歯薬系、4年生は7ポイント以上減少した。
  2. 日本の未来は明るいと「思う」(「とても」+「まあ」)26.9%と前年から6.3ポイント減少。男子(-7.0ポイント)、理系(-8.4ポイント)、4年生(-7.4ポイント)の減少が大きい。
  3. 16年夏の参議院選挙の投票に「行った」は51.4%。自宅生の75.2%に対し下宿生は31.5%と住まいで傾向がはっきり分かれた。15年に調査した「投票に行く予定」は71.1%(自宅生78.5%・下宿生64.7%)であったが、事前の投票予定と比較しても下宿生の投票率の低さが際立つ。
  4. 投票に行った理由は「行くのが当たり前」27.1%(投票に行った人を100として52.7%)が最も多く、「投票は権利だから」17.5%(同34.0%)、「投票してみたかった」11.4%(同22.2%)と続く。
  5. 投票に行かなかった理由は「今の住所に選挙権がなかった」22.1%(投票に行かなかった人を100として45.9%)で、下宿生は39.5%(同57.9%)に上る。
  6. 今回が初めての国政選挙となった人が多くを占める1年生の「行った」は全体で53.2%。自宅生は77.8%と全学年中最も高かったが、下宿生は29.8%で全学年中最も低い。下宿生1年生の「行かなかった」(69.7%)の理由は「今の住所に選挙権がなかった」が45.4%(行かなかった人を100として65.1%)を占める。
  7. 1年生の投票理由も「行くのが当たり前だと思った」28.1%(行った人を100として52.8%)、「投票は権利だから」18.6%(同35.0%)と全体と同じ傾向で「投票してみたかった」15.6%(同29.3%)は全体平均より高い。
  8. 政治に関心が「ある」層(全体の57.8%)のうち35.4%(関心が「ある」を100として61.2%)が参議院選で投票したが、関心が「ない」層の投票率は15.9%(関心が「ない」を100として38.1%)に留っている。
  9. 日本の未来を明るいと「思う」「思わない」のそれぞれを100とした場合の投票率は、51.3%と51.7%で、投票率には差がない。
  10. 投票理由については「当たり前」「権利」「投票してみたかった」のほか、政治に関心がある層は「政治に参加したかった」「自分の意思を表明したかった」が多く、政治に関心がない層の自宅生は「親や周囲に言われたから」が多い。
  11. 投票しなかった理由のうち「選挙に関心がなかった」「面倒だった」は政治に関心がない層で高く表れている。

(2)読書時間・勉強時間(図表20〜27)

読書時間「0」は49.1%に。平均時間も短縮
アルバイト時間が読書・勉強時間にも影響か

  1. 1日の読書時間は平均24.4分、有額平均48.6分と、前年からそれぞれ-4.4分と-4.3分となった。
  2. 1日の読書時間が「0」は49.1%(文系43.9%・理系50.2%・医歯薬61.6%)と、前年から3.9ポイント増加し、「0」が40%台になった13年以降3年間で8.6ポイント増となった。
  3. 04年以降常に2割前後存在した「60分以上」も19.1%まで減少した。
  4. 男女別には男子の平均時間が28.0分(有額52.5分)、女子20.3分(有額43.4分)。男女の読書傾向は平均時間が06年、「0分」は08年に逆転している。平均時間の男女差は7.7分と04年以降最も大きくなった。
  5. アルバイト就労の有無でみると、就労している学生の平均読書時間が22.1分に対して、就労していない学生は30.6分とやや長い傾向がある。
  6. また大学の予習・復習・論文など大学の勉強時間は1日52.8分で前年から-2.3分となった。文系37.0分、理系62.9分、医歯薬系71.5分。いずれも2年連続減少となった。
  7. 勉強時間もアルバイト就労者の平均時間が短い傾向が見られ、就労者は全体で13.4分、医歯薬系では22.2分短い。
  8. さらに、就労時間が長い傾向がある奨学金受給者の勉強時間は1日47.8分(文系34.3分・理系60.6分・医歯薬系60.7分)と短い。
  9. スマートフォンの1日の利用時間の平均は161.5分(前年+5.6分)、有額平均163.6分(前年+3.8分)。利用時間「0」は1.3%(前年2.3%)に過ぎず、ほぼ全員が利用している。


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