理系の大学院進学はあたりまえ
4人に1人が大学入学前に大学院進学を意識
7割の親が学費を負担

2014年6月26日
※データの無断転載はお断りします

第8回全国院生生活実態調査より

全国大学生活協同組合連合会(以下 全国大学生協連)は、2013年秋に第8回全国院生生活実態調査を実施いたしました。

全国院生生活実態調査は、大学院生の生活実態を調査し、院生生活を向上させるために3年に1度実施している調査です。全国規模で大学院生の生活について調べた調査は希少で、「普段どんな生活をしているかわからない」と言われることが多い大学院生の生活の実態を知る上で貴重な調査となっています。

<今回の調査結果の主なポイント>

1
理系院生の4人に1人が、大学院進学を「大学入学前」に決定している。進学理由としては「進学が当たり前」「就職に有利」などの理由が多く、理系では修士課程を含めた「大学6年間」という考え方が浸透してきている。
2
女子院生は約8割が「悩み・ストレスがある」。女子の構成比が低い大学院で人間関係に悩む女子が多い。
3
文系院生は研究活動にかかる自己負担額が理系に比べて5万円以上多い(半年間)。理系院生の場合は研究費用を大学が負担することが多いことが要因の一つと考えられる。

はじめに 調査概要とサンプル特性について

<調査概要>

調査の目的

大学院生の経済的生活、日常生活、研究生活、進路、生協事業のとらえ方などを明らかにし、結果を大学生協の諸活動や事業活動、大学院生の研究生活向上にいかす。

調査方法

Web調査。各生協の組合員名簿などから抽出し、調査回答用のURLを案内し、回答を得た。

調査実施時期 

2013年10月17日~11月8日

調査対象 

全国の国公立および私立大学に在籍する修士課程(博士課程前期)博士課程(博士課程後期)専門職学位課程の大学院生

回答数 

4,114

<サンプル特性>

  • 第8回全国院生生活実態調査は21大学生協が参加、4,114名から回答を得た。
  • 前回の構成に比べ、国公立大の比率が増加、私立大の比率が減少していることから、単純な経年比較が難しい項目もある。ただし、男女や文理の構成比については大きな変動がないため、国公立大・私立大の構成比によらないと思われる項目については経年比較についても取り上げた。
  • 今回に限ったことではないが、専攻別の男女の構成比は、文科系5.5:4.5、理科系8.1:1.8、医歯薬系5.1:4.9となっており、理科系の特徴は男子の影響を受けやすくなっている。また、調査における専攻比は文科系2.4:理科系6.9:医歯薬系0.6となっており、調査全体の結果として理科系の影響を受けやすくなっている。

サンプル特性
サンプル特性

1.大学院進学は進路検討材料の一つに
文系の3割は就活後に進学決定か。

(1)大学院進学(修士課程)を決めた時期(図表1)

  1. 大学院修士課程への進学は、21.7%が「大学入学前から決めていた」と回答した。この数字はこの項目の調査を開始した2004年から増加している。文系が12.1%であるのと比較して、理系では25.2%(04年18.8%→07年17.9%→10年22.0%)であり、4分の1を超える院生が大学入学前から院進学を決めていたということになる。
  2. 特に理系については、入学案内等で院への進学率等が説明されており、学部の4年間に修士の2年間を加えた6年間大学に行くということが周知されてきているためであると思われる。
  3. 進学を決めた時期で最も多いのは、全体では学部3年時の33.6%となった。しかし文理別でみると、文系は学部4年時の30.7%(理系19.8%)が最も多く、差が見られる。
  4. 学部3年時が多いのは、就活開始時に就職か進学かの決断をする学生が多いためであると思われるが、文系の学部4年時が多いのは、就活終了後に大学院進学を決めた人がいるということも考えられる。

図表1

(2)大学院に進学した動機(図表2)

  1. 進学した動機として最も多いのは「専門知識を身につけたかった」(全体71.1%、文系68.6%、理系71.7%)であった。学部より大学院の方が専門知識を身につけられるというイメージがあると思われる。
  2. 文系と理系の進学理由の差が大きいものとして
    • 「資格を取るため」(文系34.1%・理系3.7%)
    • 「就職に有利」(文系9.0%・理系47.2%)
    • 「進学が当たり前だと思った」(文系8.3%・理系41.9%)
    • 「まわりの人が進学した」(文系3.4%、理系18.8%)
    があり、文系の院生は「資格を取るため」などの能動的な動機が多かったのに対し、理系の院生は「進学が当たり前だと思った」「周りの人が進学したから」といった受動的な動機が多い。

図表2

2.大学院生の就職活動期間は短縮傾向
理系は「希望の職種に就ける」「推薦が得られる」が大学院進学の強みに。

(1)大学院生の就活期間(図表3)

  1. 就活期間を2か月ごとにみた場合、最も多いのは6ヶ月の17.2%であり、平均期間も6.5ヶ月となった。就活期間は12月スタートのため12月から6月中旬までが平均的な就活期間であると思われる。
  2. 前回調査(2010年)時の就活開始時期が10月から今回は12月に変更されていることもあり、平均的な就活期間は短縮され、またばらつきも減少していることから、院生は就活前であれば、研究に時間を充てやすくなったと思われる。

図表3

(2)大学院生のインターンシップ

  1. 就職活動をした人のうち、大学院進学後にインターンシップに参加した人は30.2%(文系33.3%、理系30.4%)で、この結果には文理の差は見られない。
  2. インターンシップをした人の役立ち度は「大いに役立った」「まあ役立った」が86.4%と多くを占める。一方で、インターンシップをしなかった人のうち「大変興味がある」や「少し興味がある」は2010年の64.3%から2013年は53.2%になり、関心が薄れたようにみえる。

(3)卒業・修了後に考えている就職先(図表4)

  1. 大学院修了後に考えている就職先では、文系理系で差が見られ、「一般企業」が73.0%(文系45.0%、理系80.3%)、「公務員」が8.6%(文系25.0%、理系5.7%)であった。
  2. 文系は大学院で研究した専門性を活かせる職業(場面)が理系より少なく、就職先に公務員が検討されることが多くなると思われる。

図表4

(4)就職活動の進め方

  1. 就職活動の進め方については、文系では自由応募:学校推薦≒80:1、理系では自由応募:学校推薦≒2:1となり、理系では学校推薦を利用する比率が大きくなるという結果になった。
  2. また、大学院進学が就職に有利だったこととして、「考える時間がある」8.7%(文系7.4%・理系9.0%)、「希望の職種につける」7.8%(文系2.4%・理系9.3%)、「推薦が得られる」7.3%(文系0.2%・理系10.0%)などが多かった。
  3. これらの結果に加え、院進学の動機で「就職に有利」が文系9.0%、理系47.2%であった結果も考えると、理系は大学院へ進学することが就職に直接関わる傾向が見られる。

3.大学院生の日常生活
研究活動や将来の進路を中心に、8割の女性が「悩み・ストレス」。

(1)悩み・ストレスについて(図表5~7)

  1. 「悩み・ストレスがある」と答えた大学院生は68.7%で、男性の64.7%に対し、女性は79.5%と高い。
  2. 大学院生が抱える悩みとして最も多いものは「研究活動」が46.4%で、「将来の進路」が44.3%と続く。
  3. 「将来の進路」については文系の大学院生が53.7%で、次いで高い「研究活動」42.4%と比較しても10ポイント以上高い。加えて理系(41.3%)や、医歯薬系(41.6%)と比較しても高い傾向にある。
  4. 男性と女性を比較すると、「政治や社会」、「その他」を除くすべての項目について女性の比率が男性を上回った。「学内や研究室の人間関係」に悩みを抱える女性は3割近く(文系女性23.9%、理系女性29.3%、医歯薬系女性30.4%)に上っており、研究室における女性比率の低さが影響しているとも考えられる。
  5. 悩み・ストレスについての相談相手が「いる」大学院生は78.0%(男性73.8%・女性87.0%)で、相談する相手(単一回答)としては「友人」が最も多く23.9%、次いで「親」14.9%、「恋人」12.0%であった。「教員」は2.2%(男性2.5%・女性1.7%)にとどまっており、研究室においては教員が学生と離れ、個室で研究を進めていることが多いことも背景として考えられる。

図表5

図表6

図表7

(2)電子機器および情報媒体の使用(図表8)

  1. 2010年から2013年の大きな変化としては「スマートフォン」が急速に普及し、メディア接触時間の傾向が大きく変化した。「スマートフォン」は2010年の「携帯電話」と比較しても使用時間が長く、「テレビ」、「PC」の使用時間も減少傾向にある。
  2. 文理による使用時間の平均に差はあまり見られないが、文系は「新聞」 12.7 分(理系6.7 分)、理系は「PC」 76.0 分(文系63.7 分)の接触時間が比較的長い。

図表8

4.大学院生の経済生活
親の7割が学費負担をし、奨学金は月々の生活費に。

(1)1ヶ月の生活費・自宅生と下宿生(図表8・9)

  1. 自宅生は収入・支出ともに増加。金額、収入に占める構成比は「奨学金」が減少し、「小遣い」が増加している。

    ① 収入

    「合計」87,540円(10年比+1,440円)、「奨学金」27,070円(同-2,680円・構成比-3.7ポイント)、「小遣い」22,930円(同+3,740円・+3.9ポイント)、「アルバイト収入」21,080円(同-340円・-0.8ポイント)

    ② 支出

    「合計」85,750円(10年比+2,540円)、「食費」17,690円(同+620円・構成比+0.1ポイント)、「趣味・娯楽費」11,620円(同-610円・-1.1ポイント)、「交通費」9,050円(同-200円・-0.5ポイント)、「住居費」7,960円(同+3,650円・+4.1ポイント)

  2. 下宿生は収入・支出ともに減少。「アルバイト収入」は増加したものの「仕送り」の減少額が収入合計の減少に大きく影響している。支出は「住居費」をはじめ多くの費目で減少。

    ① 収入

    「合計」132,250円(10年比-5,650円)、「仕送り」56,260円(同-10,660円・構成比-6.0ポイント)、「奨学金」43,810円(同+300円・+1.5ポイント)、「アルバイト収入」20,940円(同+3,160円・+2.9ポイント)

    ② 支出

    「合計」131,330円(10年比-3,060円)、「住居費」49,960円(同-3,190円・-1.5ポイント)、「食費」28,990円(同-240円・+0.3ポイント)、「貯金・繰越」15,890円(同+3,230円・+2.7ポイント)、「趣味・娯楽費」11,940円(同-820円・-0.4ポイント)

図表9

図表10

(3) 奨学金の受給、学費の負担(図表11・12)

  1. 奨学金の受給率は50.2%(自宅41.2%・自宅外57.7%)。3年前と比較し、自宅は0.2ポイント減、自宅外は3.1ポイント増となった。
  2. 奨学金の使途については自宅、自宅外ともに「大学納付金」が減少、「毎月の食費や住居費などの生活費」が増加している。
  3. 学費の負担者をみると、「親」が70.4%(自宅66.1%・自宅外74.1%)を占め、「本人」20.3%(自宅25.4%・自宅外15.9%)、「奨学金」12.6%(14.8%・自宅外10.8%)が続く。「本人」、「奨学金」、「免除」は10年から減少傾向となっており、学費の負担が分散から「親」へと集中傾向にある様子がうかがえる。前述のように大学進学前から大学院への進学を決めることが浸透しており同時に「親」も大学院分の学費負担を予定して大学進学を迎えているのではないか。

図表11・12

(4) 暮らし向き 学部生と院生/文系と理系(図表13~17)

  1. 現在の暮らし向きは「大変楽」+「まあ楽」が38.6%(自宅40.0%・自宅外37.4%)と学部生(「楽な方」53.6%・自宅55.3%・自宅外52.1%)との感じ方の違いが明らかになった。
  2. また、暮らし向きの感じ方は院生の中でも文理の差があり、「大変楽」+「まあ楽」は理系42.1%に対して文系30.9%、反対に「やや苦しい」+「苦しい」は文系32.3%に対して理系21.6%と、理系と比較して「苦しい」と感じる文系院生が多い。
  3. 1ヶ月の生活費をみても、文系は「書籍購入費」の構成比が6.4%と理系より4.0ポイント高く、理系は「趣味・娯楽費」が11.0%で、文系より3.2ポイント高い。金額では文系の「書籍購入費」が8,250円と理系より5,570円高く、「趣味・娯楽費」は文系9,920円、理系12,140円と理系が高い。これは研究活動として実験やシミュレーションが多い理系に対し、論文調査が多い文系といった違いによるものが大きいと思われる。
  4. 研究活動の自己負担額も専攻による大きな違いが見られ、研究活動内容の違いのほか、理系の研究室の場合は研究資材の提供をはじめ、研究費が大学負担のことも多く、そうした研究費が文系には十分にいきわたっていないとも考えられる。
  5. さらに、学費の負担者は文系の「本人」が29.1%(理系15.5%)、「親」が62.4%(理系75.1%)と本人の負担割合も大きい。また学部生の74.2%が「楽」と感じている暮らし向きが、院生になると30.9%にまで下がる(理系は学部生52.7%、院生42.1%)ことも、文系院生の暮らし向きの特徴でもある。学部生時の文系学生は理系学生と比べて時間的な余裕があり、サークルやアルバイトの就業率、海外旅行の経験率が高い傾向にあり、その分、大学院進学後の時間的・経済的な制限を苦しく感じる文系院生も多いと思われる。

図表13

図表14

図表15

図表16

図表17


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