「2014年大学生の意識調査」概要報告

※データの無断転載はお断りいたします。

全国大学生活協同組合連合会

2015年4月17日

「2014年大学生の意識調査報告書」のご案内

自分の足元を見つめ、将来に向け着実に歩む大学生
しかし日本の未来には7割が不安

~豊かでありつつも停滞した経済状況のもとに生まれ、
就職氷河期世代の背中を見ながら育った世代の意識~

<データの特徴>

  1. 授業出席重視の学生が8割を超え、高校生までの『生徒』状態を継続している。
  2. LINEのグループ加入率は94.7%。学年が上がるほどツールを用いた交友関係の維持に頼らない傾向が見られる。
  3. 『嫌消費』ではなく『嫌浪費』。「多少高額でも欲しいものは買う」が5割。
  4. 海外留学への関心は高く7割弱。しかし海外での仕事への意欲は低い。
  5. 規範意識、社会への関心は高いが日本の未来に対して「明るい」は3割と悲観的。
  6. 将来は地元で暮らしたい学生が半数を超える。
  7. 家庭環境によって、大学入学するまでの生活および進路に差異がみられる

全国大学生活協同組合連合会では、例年実施している「学生の消費生活に関する実態調査」が2014年に50回を迎えるにあたって、現代の大学生の意識をより深く探るために「2014年大学生の意識調査」を行いました。
「内向き」「ゆとり」「さとり」といった言葉で表現されることが多い現代の若者像ですが、今回の調査からはその言葉では表現しきれない、社会的変化を背景に育ってきた大学生たちの姿が見えてきます。
長い時間をかけて学生像が変化している様子を捉える「学生の消費生活に関する実態調査」と併せ、大学生の「今」を的確に捉えた調査データとしてご活用ください。

※なおこの調査の実施にあたっては以下の方に企画・分析を依頼しました。

濱嶋 幸司(同志社大学 学習支援・教育開発センター 准教授)
谷田川 ルミ(芝浦工業大学 工学部 准教授)

<調査概要>

調査実施時期:2014年11~12月

対象:全国の国公立および私立大学の学部学生

方法:スマートフォン利用を前提としたWeb調査

回答数:3,583(回答率 32.6%)

<調査サンプル>

本調査データは、男子学生が56.1%で、女子学生が43.9%と男子学生のほうがやや多いサンプルとなっている。

学年別では、1年生30.0%、2年生25.5%、3年生23.6%、4年生20.9%となっており、1~2年生が55.5%とやや多くなっている。全学年からの回答が2割以上確保されている。

所属学部別では、「文科系」52.4%、「理科系」36.9%、「医歯薬系」7.3%、「その他」3.4%となっている。「医歯薬系」の割合が少ないものの、「理科系」と合わせた「理系」学生で44.2%となる。文系、理系学生が偏りなく回答している。

なお「文科系」には女子学生がやや多く、「理科系」には男子学生が多い。また、所属学部別に性別と学年の構成割合をみても、「その他」を除いては、大きく偏った傾向はみられない。

1.授業・学業への姿勢

学業への意欲は高く、好きな勉強をしたり、友人との議論も好む
授業中心の大学生活で、高校までの「生徒」状態を継続している

(1)学内生活にはかなり満足

大学生たちの大学内での満足度は高い。「そう(とても+やや)」の全体の回答割合をみると、「クラスや学科の友人との関係に満足している」(81.5%)、「大学生活全般に満足している」(80.8%)、「自分の通っている大学が好きである」(80.7%)の項目で8割を超えている。また、「大学の中に落ち着ける場所がある」も72.2%を占めている。「教員との関係に満足している」は61.1%と低くなっているとはいえ、6割を超えている。このように大学生たちは、自分が通う大学での生活にかなり満足している様子がうかがえる。

性別では、女子学生のほうが、男子学生よりも、「大学生活全般に満足している」、「自分の通っている大学が好きである」、「教員との関係に満足している」で回答割合が多い。

学年別では、1年生に「大学の中に落ち着ける場所がある」の回答割合が多いものの、4年生に「クラスや学科の友人との関係に満足している」、「大学生活全般に満足している」、「自分の通っている大学が好きである」、「教員との関係に満足している」の回答割合が多い。在籍年数が長いと、自分が通う大学への満足も増加している。とくに、「教員との関係に満足している」において、1年生(52.5%)<2年生(56.4%)<3年生(65.8%)<4年生(74.0%)と学年を経るごとに回答割合が多くなっていく。上級学年になるほど、ゼミや卒業論文指導を通じて、教員に満足を感じるものと考えられる。

(2)学業への意欲も高い

大学生の学業への意欲は高い。「そう(とても+やや)」の全体の回答割合をみると、最も多いのが「履修した授業の成績が気になる」(92.3%)。次に、「実験やゼミ形式の授業を履修したいと思う」(70.0%)、「授業に関係なく自分の好きな勉強もする」(64.7%)、「友人と議論することが好きである」(62.7%)と続く。授業に限らないが、学習に熱心である。しかし、「先生に質問や相談をする」(36.7%)学生は少ない。特に1年生に低い。

(3)「生徒化」する大学生

しかし、高校までの勉強生活と変わらない側面も多い。「そう(とても+やや)」の全体の回答割合をみると、「履修した授業は必ず出席する」(87.4%)、「就職に役立つ授業を履修したいと思う」(85.5%)と出席重視、実学重視の傾向が強い。「卒業単位にならない授業は履修しない」(60.5%)も多い。「先生はもっと学生を指導すべきだと思う」(54.1%)と感じる学生も半数を超える。このように大学が「学校化」し、学生が「生徒化」している傾向も本結果から読み取ることもできる。

この「生徒化」の傾向は、性別では女子学生、学年別では1~2年生にやや多くみられる。


2.日常生活について

堅実さが見られる消費(経済)感覚と健康志向

(1)浪費でもなく、倹約でもない消費感覚 

商品を購入する際には、「インターネットからの情報を参考」にしている(79.3%)、「将来を考えて、情報収集や準備」を意識した経済感覚を持っている(54.8%)、また、半数近くの学生が「欲しいものは我慢しないで買う」(48.1%)ことからも、倹約志向が強いわけではない。必要なものであれば、「多少高額なものであっても、自分の趣味のためであれば購入」(60.3%)している。
「ブランドを気にする」学生も43.6%おり、しかも男子学生(46.7%・女子学生39.6%)に多い。質素を好んでいるともいえない。情報に基づいた良いものであれば、高額なものでも手に入れたいと思っており、消費をしないのではなく浪費をしない堅実な経済感覚を持っている。
このように「嫌消費」ではなく「嫌浪費」の大学生が多いことがデータからうかがえる。


 

(2)半数以上が、食事・睡眠に気を配った生活

大学生の健康への捉え方について、食事・睡眠・運動の項目で尋ねてみた。「そう(とても+やや)」の全体の回答割合をみると、「一日三食きちんと食事をとっている」(67.5%)、「睡眠時間が十分とれている」(58.7%)、「栄養のバランスを考えた食事をしている」(55.1%)の項目で5割を超えている。また、「健康を意識して体を動かすようにしている」も48.2%と5割に近い。半数以上の学生は食事に気を遣い、よく眠る生活をし、適度に体を動かしていることがわかる。

性別でみると、食事について、女子学生のほうが、男子学生よりも、「一日三食きちんと食事をとっている」、「栄養のバランスを考えた食事をしている」と回答する割合が高い。一方、運動については、男子学生のほうが、女子学生よりも、「健康を意識して体を動かすようにしている」と回答する割合が高い。つまり、食事と運動では男女差がみられている。なお、睡眠(「睡眠時間が十分とれている」)については、男女による差異はない。

居住形態別でも、食事について、自宅通学者のほうが、それ以外よりも、「一日三食きちんと食事をとっている」、「栄養のバランスを考えた食事をしている」と回答する割合が高い。

3.人間関係

身近なところから、学年を重ねるごとに徐々に成長していく人間関係

(1)身近な人間関係を大切にし、維持する傾向

調査対象の大学生たちの9割以上が「家族との関係は良好」と回答しており、「高校までの友人と今も交友が続いている」と回答している割合も8割以上となっている。

人間関係を維持するために「異なる考え方を持った人とでも仲良く」している。これまでと、学内の友人関係を大切にしていることがわかる。一方で「大学に入ってから大学外の友人が増えた」が「そう」だと答えるのは半数弱となっている。

交友の際には、メールやLINEを活用しており、LINEのグループ加入率は94.7%となっている。LINE加入グループ数は全体の平均値で20.0(女子学生22.8>男子学生17.7)となっており、女子学生のほうが多くのLINEグループとやりとりをしている。学年でみてみると、2年次にLINEグループ加入数が24.3とピークを迎え、3年では19.2、4年で14.0と上級学年になるほど減少していく傾向がみられる。

(2)学年を重ねるごとに人間関係も成長し「大人」になっていく

大学内で仲良くしている人数は全体で14.6名(男子学生15.9名>女子学生12.9名)となっており、男子学生のほうが広く浅い友人関係であることがうかがわれる。また、学年を重ねるごとに友人の数が減少していく(1年 15.4名>2年 15.0名>3年 14.3名>4年 13.3名)。LINEのグループ加入数も学年が進行するにつれて減少しているが、入学当初の人間関係拡大期を経て、3年次以降は安定した人間関係が出来上がってくると解釈することもできる。

学年ごとの人間関係の変化については、「大学に入ってから大学外の友人が増えた」、「異性の友人が多い」に対して「そう(とても+やや)」と回答する割合が学年を重ねるごとに増加しており、大学在学中に人間関係の幅が広がっている様子がうかがわれる。一方で「友人とのやり取りにLINEやメールは欠かせない」の回答割合は学年が上がるごとに微減傾向となっている。4年間の大学生活を送る中で人間関係の幅を広げつつ、ツールを用いない関係が構築されているものと考えられる。

また、「異なる考え方を持った人とでも仲良くできる」、「グループの中でリーダー的な役割を果たすことが多い」の回答割合も学年が上がるごとに高まる傾向がみられている。一方「一人で食事をしているところを人に見られたくない」といういわゆる「便所飯」「ランチメイト症候群」といった傾向は学年を重ねるごとに減少している。大学在学中の4年間の様々な経験により、人間関係の幅の広がりのみならず、質の面でも変化がみられており、いわゆる「オトナ」の関係を構築するようになっている。

(3)友人よりも恋人を優先するのは女子学生よりも男子学生

「異性の友人が多い」と回答している割合は、全体で39.5%となっており、4割近くが異性を含めた友人関係を築いている。「異性の友人」は、男子学生よりも女子学生、1、2年生よりも3、4年生、理科系よりも文科系のほうが多い傾向がみられている。

「異性との交際」については、「面倒だと感じる」ものが36.7%となっており、4割弱が異性との交際を面倒だと思っている。その一方で、「友人よりも恋人との時間を大事にしたい」と思っている学生は33.0%となっている。この割合を男女別にみてみると、女子学生が24.4%であるのに対して男子学生が39.7%となっており、女子学生よりも男子学生のほうが「友人よりも恋人」を大事にしたいと感じていることがうかがわれる結果となっている。

4.将来への展望

意識はグローバル、行動は現実を受け止めたローカルな志向

(1)海外への関心は高く、留学希望も67.6%

大学入学後の海外経験は4人に1名ほどである。しかし、学年が進むにつれて海外経験割合は増加している。男子学生よりも女子学生のほうに海外経験が多い。  

「今後は英語がより必要とされる社会になる」(91.1%)と多くの学生が感じており、グローバルを意識した感覚を持っている。可能であれば、「長期休みに海外旅行」、「留学をしてみたい」と思っている(それぞれ70.3%・67.6%)割合も高い。また、「英語以外の外国語を習得したい」(58.0%)とも思っている。異文化に触れたいと好奇心を持っていることがうかがえる。

一方で、「将来は海外で仕事をしてみたい」、「留学生と話すことがある」については少ない。グローバルな感覚はあるが、現実としてローカルな志向が維持されている。

近年の大学教育政策においてはグローバル人材の育成が打ち出されているが、なかなか留学をしたがらない「内向き」な大学生が多いということが言われている。しかし、今回の結果を見てみると「機会があれば、留学してみたい」学生は67.6%(とても+やや)にのぼっており、留学への意欲は決して低いわけではない。しかし、その裏側では「暮らし向き」の良し悪しによって留学への意欲に差がみられてもおり、大学生の心性以外にも経済的な要因が留学への意欲に影響していることがうかがわれる。

(2)規範意識、社会への関心は高いが日本の未来に対しては悲観的

大学生の規範意識は概ね高い。「年上の人、立場が上の人を敬うべきである」と思っている学生は89.4%と9割近くとなっている。「選挙には投票に行く」割合も全体で74.7%となっており、選挙権を持っていないものが大半であろう大学1、2年生では8割近くが(選挙権があれば)選挙に行くという意識を持っている。また「自分のことよりも周りの人たちのことを優先したい」割合も53.5%となっており、とかく自分中心と言われがちな若者ではあるが、半数以上は周囲を慮る意識を持ち合わせている。

社会意識についても「若者の雇用問題」、「犯罪の取り締まり」といった社会問題については8割近くが、「高齢者福祉」には6割以上が関心を持っている。特に福祉や雇用といった問題には女子学生のほうが関心を寄せている。一方で、「日本の未来は明るいと思う」学生は28.9%となっており、規範意識、社会意識の高さと裏腹に日本の未来に対しては悲観的な意識を持っている

ジェンダー意識については、「男女による差別はないほうがよい」と思っている学生の割合は88.8%と9割近くが男女差別に反対している。また、「男性は外で働き、女性は家で家事・育児をするほうがよい」は26.4%で、多くの学生は男女の固定した役割にも否定的である。ただし、これらのジェンダー意識においては、男子学生よりも女子学生のほうが平等志向の強い傾向がみられている

(3)半数以上が「将来は地元で暮らしたい」  

大学卒業後は「会社に縛られない生き方をしたい」学生が67.6%、「働かなくてもよければ働きたくない」学生は56.2%となっている。以前の時代の大学生とは異なり、大学での勉強や就職活動で多忙な日々を送っているからか、将来はできれば自由な生き方をしたいと望んでいるようである。

「将来は地元で暮らしたい」と回答している割合も5割を超えている。束縛されない自由な生き方を望むのと同時に、慣れ親しんだ土地での生活を望んでいる様子がうかがわれる。こうした地元志向の強さは、海外での就職志向とも強く関連している。地元志向が強い学生は非地元志向の学生と比べて海外就職志向が低い傾向がみられている

(4)将来は夫婦で家事・育児を分担しながら仕事も続けたいと考えている

結婚を含む将来のキャリア展望としては、68.5%の学生が「仕事に就き、結婚したらパートナーと家事育児を分担しながら一生働く」(分担・両立志向)という生き方を希望している。男女差で見ると男子学生のほうが女子学生よりも分担・両立志向である割合が高い(女子学生63.7%<男子学生72.3%)。

「結婚したら、家事や子育てを主にした生活を送る」(家庭志向)という生き方を希望している割合は全体で9.2%と1割を切っている。しかし、男女別でみると、男子学生が2.6%であるのに対して女子学生は17.5%となっており、家庭志向を希望している女子学生は2割弱程度存在している。 近年、若年層の結婚意欲がなくなっていると言われているが「結婚せずに一生働く」と回答している割合は4.1%にとどまっており、「自分の趣味や好きなことに打ち込む」(趣味志向)と合わせても15%ほどでしかなく、多くの大学生たちは将来のキャリア展望の中に結婚を位置づけて考えている様子がうかがわれる

将来のキャリア展望について、性別役割分業意識との関連を男女別にみてみると、男子学生は性別役割分業意識によるキャリア展望の差はほとんど見られない。しかし、女子学生においては、性別役割分業意識に「賛成」しているものは「反対」しているものよりも家庭志向を希望する割合が高くなっている。また、性別役割分業に「反対」しているものは「賛成」しているものよりも「分担・両立志向」を希望している割合が大幅に高い傾向を示している。女子学生はジェンダー意識によって将来のキャリア展望に大きな違いが生じているものと思われる

5.家庭環境がもたらす進路への影響

大学入学までの生活や進路に影響する親の最終学歴。現在の家族関係への影響はない

子どもの頃(12歳ごろ)の暮らし向きを父親、母親の最終学歴別にみたところ、「高等学校」卒業の親を持つ学生に「普通」が多く、「大学、大学院」卒業の親を持つ学生に「大変楽な方」の回答が多い。

また、「高等学校」卒業の親を持つ学生は「普通の大学への入学者が多い学校」へ高校進学したのに対し、「大学、大学院」卒業の親を持つ学生が「国公立大学や難関大学への入学者が多い学校」へ高校進学している。

家庭環境によって、大学入学するまでの生活および進路に差異があることが読み取れる。

同様に、大学入学後の海外経験についても、父親が「大学、大学院」卒業の学生、母親が「短期大学、高等専門学校」、「大学、大学院」卒業の学生に多い。これは留学希望についても、同様の傾向である。

一方で、「家族との関係は良好だ」については、父親、母親の最終学歴にかかわらず、「そう」と大多数が回答している。家族との関係と学歴には関係がみられない。

「将来は地元で暮らしたい」と思う学生は、父親が「大学、大学院」卒業に比べ、「高等学校」卒業に多い。一方、母親の最終学歴による差異はみられない。

このように、大卒以上の親を持つ学生のほうが、高等学校卒の親を持つ学生よりも、意識が海外へ向く割合が高く、地元志向になる割合が低くなる傾向を読み取ることができる。

本調査の企画・分析者から

「内向き」「ゆとり」「さとり」と様々なラベルを貼られている若者の状況を、改めてデータに基づいて、問い返す時期がきたのではないか。そこで今回、「大学生活」「消費」「人間関係」「社会意識」「将来」の局面から2010年代の大学生の実態を映し出す調査を企画した。調査対象となった彼らは、1990年代後半に生まれ、日本経済の低成長期を過ごしてきた層である。

調査結果からみえてきたことは、大学生が今置かれた状況を自分なりに考え、将来に向けた着実な行動をしているということである。必ずしも明るいと思えない将来ではあるが、自分ができることは精一杯がんばろうとする姿がみられる。自分が今置かれた状況への対応に熱心になれば、自ずと行動範囲は限定される。その意味で「内向き」とみえるかもしれない。だが、「さとり」と呼べるほど、達観はしてはいない。彼らなりに悩みも葛藤もある。

回答者が入学難易度の高い層、およびスマートフォンを所有している層であるとの但し書きがつくものの、彼らの日常は大学内の活動、とりわけ授業を優先していることがわかった。授業にほぼ毎回出席し、良い成績が取れるかどうかを気にする。加えて、教員から学生への指導を求める意識は、高校までの生活と変わらない「生徒」の感覚が続いているとみることもできる。

彼らの家族との関係は子どものころから良好である者が多い。高校時代の仲間とも大学生となった今でも続いている。さらに今の大学内での人間関係も大事にしている。周囲と調和し、「これまで」のつきあいと、「これから」のつきあいを維持しつづけることが、彼らに求められている。

また、子どもの頃と今の暮らし向きは悪くはない。しかし、浪費を嫌い、自分にとって必要なものを見極めて購入しようとしている。そのためにネットや知り合いからの情報を収集する。モノの良し悪しを考慮したうえで、入手する志向性がある。単に「消費をしない」というわけではない。

最後に、留学への希望はあるものの、その機会に恵まれているとはいえない。経済的な要因もある。国際化は身近なものではあるが、自身の生活に組み入れるには少々ハードルが高い。何が彼らの留学の実現を阻害しているのかを明らかにし、大学のカリキュラムの整備と、留学希望者を支援する体制づくりが必要なのではないか。

濱嶋 幸司(同志社大学 学習支援・教育開発センター 准教授)

谷田川 ルミ(芝浦工業大学 工学部 准教授)