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電子教科書ならではの
強みを生かした
教育改革を

全国大学生活協同組合連合会 常務理事
三浦 貴司

初等教育から大学教育まで、日本の教育は今、大きな変革の波にさらされています。ICTを活用した新しい大学教育のあり方を模索してきた大学生協は、現在「DECS計画」を掲げて電子教科書・教材の活用による教育イノベーションの推進に力を注いでおり、大学における教育の新しい可能性を切り拓く試みとして注目を集めています。大学生協のICT分野におけるこれまでの取り組みと、今後目指していく方向、ビジョン等について、三浦貴司常務理事に聞きました。

電子教科書をぜひご活用ください

ビューアの開発に本腰を入れて取り組む

──大学生協が電子機器による教育改革に取り組むようになった経緯を教えてください。

三浦

大学生協のそもそもの使命は、学生や教職員の皆さまのご要望、ニーズにお応えするということです。この使命に基づいて、従来は紙ベースの教科書、教材をご提供してきたわけですが、教育を取り巻く状況が変化していくなかで、パーソナルコンピューターの普及が進んできました。そこで、大学生協としてコンピューターを使って教育効果を高めるためにどんな貢献ができるか、という課題に取り組むことになりました。それが、1990年の「HELP計画」です。当時は高価だったコンピューターをいかに学生に活用してもらうか、そのための方法を探ったり、大学内にLANを構築するなどインフラの整備に努めてきたのです。

──電子書籍が登場するなど、教育を取り巻く環境はさらに変化してきましたね。

三浦

電子書籍については、ブームの兆候が表れては消えていく、ということが何度か繰り返されてきましたが、2010年ごろになりますと、海外で電子書籍が高等教育機関で使われはじめるなど動きが本格化し、日本でも本腰を入れて取り組むべきだと感じるようになりました。
そこで、大学生協でも電子書籍、電子教科書に力を入れていくことになり、翌2011年に事業計画の策定など具体的な検討が始まりました。

──2013年1月には、電子書籍サイト「VarsityWave ebooks」の開設に至ったわけですね。

三浦


はい。そして同じ年にDECS計画(Digital Educational Contents Support Plan)が策定され、電子教科書・教材を活用した教育イノベーションへの取り組みがスタートしました。グローバル化の進展に伴い、国が音頭を取る形で高等教育の改革が進められていくなか、ICTを活用したアクティブラーニングの確立を支援していこうという計画です。教育効果があり使い勝手も優れた電子教科書ビューアを用意し、コンテンツも提供しながらこの流れをサポートしていこうということで、まずはビューアの開発に取り組んできたわけです。

予想以上に多い自作テキストの活用

──最初の電子教科書ビューアが完成したのは、2015年秋ですね。

三浦

そうです。ただ、機能のうち未完成な部分もあり、いくつかの授業で実験的に試していただいただくという段階でした。その後、機能の補完や改良を施し、2016年から初号機と言えるビューアを提供できるようになり、9つの授業で採用していただくことができました。
実際にお使いいただいてわかったことは、先生方が自作のテキストを活用されるケースが予想以上に多かったということです。そうしたニーズがあるということに気づいたわけです。
また、機能面では、先生方や学生の皆さんから感想や改善への要望などを伺うことができ、その後の改良、バージョンアップに反映させていただいています。現在のバージョンは4・5です。

──バージョンアップが進むにつれ、採用される大学や先生方も徐々に増えてきた?

三浦

この春までに38大学にご採用いただきました。計画ではもう少し増えるのではないかと思っていましたが、授業のICT化に躊躇される先生方もまだまだ多いようです。

──どのようにICT化を進めたらいいか、戸惑われているのでしょうか?

三浦


やはり、長年紙文化に親しんできたわけですから、簡単には切り替えられないのでしょうね。また、ICTの導入には環境の整備も必要になりますし。
大学や学部単位で導入されれば、活用計画を立てて組織的に取り組む、という形になるのでしょうが、現状ではそのような例は少なく、ICTに関心のある先生が個人として試行錯誤しながら試されている、というのが実態だと思います。
ただ、広島大学のように学部単位で積極的に活用しようという動きもありまして、そうした流れが広がるよう、電子教科書の普及・啓蒙に努めていきたいと考えています。

真のアクティブラーニングを実現するツールへ

──電子教科書導入の流れは、今後加速していくでしょうか。

三浦

そう思います。電子教科書には、紙ベースの教科書にはない電子教科書ならではの“強み”があります。その強みが新たな教育効果をもたらし、教育の現場を変えていく原動力になると確信しています。導入を阻む課題を一つひとつ解決することで、普及に弾みがつくのではないかと考えています。

──今後、大学教育は大きく変わっていくと言われていますが、電子教科書の果たす役割への期待も高まりそうですね。

三浦

電子教材の活用は、まず大学よりも小学校、中学校、高等学校で先行して進んでいます。一方、高校と大学が一体となって教育改革を行う「高大接続改革」という課題もありますので、大学教育の場でも電子教材をシームレスに活用していこうという機運は高まっていくでしょう。私たちもその動きを見据えて、しっかりとノウハウを蓄積し、改善を重ねながら、真のアクティブラーニングを実現するツールへと磨き上げていくつもりでおります。

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