Campus Life WEBインタビュー 
〜大学生協理事長へ伺いました〜

豊橋創造大学生協

朝元 尊 理事長

全ての在校生が入学時から生協を知る「完成年度」を目指し、
設立の熱意や感動を伝え、生協がある文化をみんなで創っていく

2023年11月に、全国大学生協連の新たな仲間として加わった豊橋創造大学生協。
食育を中心に据えた設立までの経緯や生協加入の想い、自立を目指す生協運営について、朝元尊理事長にお話を伺いました。

【参加者】

  • 豊橋創造大学生協 理事長 朝元 尊 先生
  • 豊橋創造大学生協 事業責任者 坂田 充宏

【聞き手】

  • 全国大学生協連 広報調査部
豊橋創造大学生協 朝元 尊 理事長

【参加者】

  • 豊橋創造大学生協 理事長 朝元 尊 先生
  • 豊橋創造大学生協 事業責任者 坂田 充宏

【聞き手】

  • 全国大学生協連 広報調査部

(以下、敬称を省略させていただきます)

生協設立への想い

聞き手:2023年10月25日の創立総会を経て、11月1日付で愛知県知事から認可を受け、同月に連合会へ加盟をされました。発足から一年数カ月経ちましたが、改めて生協設立までの経緯や想いをお聞かせください。

豊橋創造大学生協 理事長 朝元 尊 先生
豊橋創造大学生協 理事長
朝元 尊 先生

豊橋創造大学 朝元 尊(以下 朝元):全国的に言えることですが、当大学としても、学生数の確保の問題ということがまず一つありました。学生数の減少傾向の中でも、やはり学生の学食離れ、利用者離れというところも課題でした。

学生と言いますと、ファストフード的な手軽さや、提供の速さ、コストパフォーマンスなどを重視するような傾向があり、さらに言えばメニュー数の多さや、自分でチョイスできること、その時の気持ちでメニューが選べるという状況が、今は当たり前になってきています。そういう世代の学生たちを振り向かせるというところにおいては、外食産業さんを中心として、皆さん相当な努力をされているのではないかと思います。

私自身、ゼロ歳から就学までの子供たちを預かる保育園の運営に携わっていることもあり、特に幼少期の食の問題だとか、食育の大切さを常に実感しており、食には教育という部分も大きいと常々感じていました。自分がどういう食べ物でできているのかに関心を持たせること、食の大切さを教えていきたいというのは、現場でも共通認識としてあります。食事というのは、成長過程において身長や体重だけでなく、脳の発達や感性の豊かさなどに少なからず影響を及ぼすのではないかと思いますので、食育に関しては、とても大事なあり方として意識を持たせたいと考えています。そのように私自身が食への意識を高く持つべき状況にあるものですから、そこがまず根底にあって、やはり大学生にも毎日の食事で体ができるのだということを伝えていければということもあります。

そして実際に入学時の学生に対しては、生協とは何か、どういうものなのかというところの理解として、やはり食の安定性だとか、供給の安定性だとか、もちろん安心安全だとか、質のいい食事を摂取することの大切さについて説明をしています。保護者の方のほうがご存じの方も多く、なぜ生協なのかという疑問を持たれるよりも、なるほどと納得の上で理解されて、組合員になってくださる状況もあったかと思います。

聞き手:生協設立よりも前の業者さんへ食育への想いを共有することは、難しいものでしたか。

朝元:やはり難しかったですよね。生協設立よりも前の業者さんも、当然ながら逼迫した状況で運営しておられて、もちろんそれは抜けられてしまうと、やはり学生も困りますし、大学としても運営していただくだけのお金を別途支払いつつ運営のお願いをしていたということが、やはり生協設立への大きな分岐点にはなりました。

そこで、以前大学生協を利用していた教員などから提案が出てきて、大学組織内の「学生委員会」の方から提案をしていただき、大学の担当課から大学生協東海ブロックへ相談し、また、静岡県浜松市の静岡文化芸術大学生協などの見学をさせていただいて、学内で論議し、最終的には事務局から学長へ提案を行い、生協を設立すると判断したという経緯です。ですから、生協設立の考えの中で「食」に関することが一番大きく、期待以上の期待を寄せて、そこは半ばすがるような想いもありました。

設立後の変化や期待すること

聞き手:生協の設立によって変わったこと、またこれから変わっていくのではないかという期待などはございますか。

朝元:一年毎に学生が入ってくることで積み上げていく形になるので、全ての在学生の入学時に生協があったわけではなく、まだ生協の完成度でいうと不十分だとは思いますが、立ち上げのこの一年間でも組織の大きさということもあり、安定感や安心を感じています。

そして何よりも、事業責任者として携わってくださる坂田さんと、代表理事の清水さん(編集部注:愛知大学生協専務理事を兼務)のお二方に本当に、言葉に尽くせぬほどご尽力いただいている中で、今までになかった「みんなで作っていこう、関わっていこう」という一致団結した想いが生まれましたので、事務局や学生も今後が楽しみになってきているということは少なからずあります。

聞き手:大学の広報誌「創造学報」に、生協の清水代表理事のインタビューが掲載されたこともお聞きしました。あまり例のないことですので、大学側からの好意的な印象を受けたのですが、いかがでしょうか。

豊橋創造大学発行「創造学報2024年夏号」VOL.50
豊橋創造大学発行
「創造学報2024年夏号」VOL.50にて生協について掲載

朝元:小規模校ということもあり、さまざまな従来からの関係性がありますので、生協設立に際してはいろいろな意見がありました。徐々に生協が軌道に乗ってきたかなというところで、反対意見のあった方にも少しずつ認めていただけるようになり、そのタイミングで学報が出たので、相乗効果になって、更に生協に対する認識というか認知が進んだように思います。

学報を見る学生や親御さんにも生協の活動を実感していただくことになり、組合員になってよかったと思っていただくよう、本当に一つひとつを積み重ねていきたいと思っています。

豊橋創造大学生協 事業責任者 坂田 充宏(以下 坂田):私が事業責任者を拝命し、2024年6月からということで、ほぼ常駐で支援させていただいております。既存の関係性から他の業者さんが取り扱っている事業もあります。その中で、大学生協東海地区の枠組みの中で行えることとして、食堂と購買店舗の運営に携わっています。

食堂のご利用者は、生協設立前だと一日平均80数人で、非常に経営が苦しかったと伺っています。現在は、日によっては2倍近く、平均ですと100から140人に利用いただいています。購買店舗は160から200人に利用いただいています。先生のお話にあった「食」に関するご期待にも、ある程度お応えできているのではないかと思っています。

食堂運営に関しては、小規模ならではの苦労もあり、毎日同じようなメニューだと飽きられてしまいますので、事業連合からのメニュー提案を使用して、食材の仕入れや廃棄をコントロールしながら、いかに変化を出していくか努力しています。毎日のように来てくださる学生組合員さんがいますので、カウンターやレジで対応するパートスタッフ職員も顔なじみになり、声をかけて食べてもらうようなアットホームな関係を築けています。

希望としては、登校する学生さんのうち7割から8割に食堂を利用していただきたいのですが、まだ半分に満たない状況です。先生がおっしゃるように、一年毎に学生さんが入学してくることで、食堂できちんと食べる学生さんが増えていくことを私も期待していますし、食堂パス(編集部注:ミールシステムの東海地区大学生協の呼称)の利用や、大学生協アプリでの決済を促進することで、定期的な利用を促す仕組みを普及させていきたいと思っているところです。

聞き手:先ほどのお話の中でも、「みんなで作っていく生協」という言葉がありましたが、理事会での理事のみなさんの反応や、生協設立後の効果などはございましたか。

朝元:13名の理事の中で学生理事は3名です。彼らは学生会という自治会組織から生協の理事会に入ってもらっております。理事会での議論は活発なので、実際に利用する側の意見などは議長から意見を求められることも多くあります。そういう活動が、彼らからどのように学生同士に浸透していくのかもまだ手探りではあります。

教職員理事は比較的慎重なタイプが多くて、いろいろな事案に対して生協設立よりも前の業者と比較しながら、一つひとつ確かめながら進めていく感じです。学生理事の反応はあまり多くはない状況です。理事会というよりも、購買店舗にある「生協組声カード」(編集部注:一言カード)の方に多くの意見が出てきていますね。

聞き手:一言カードはたくさん集まりますか。

豊橋創造大学生協 事業責任者 坂田 充宏
豊橋創造大学生協 事業責任者
坂田 充宏

坂田:はい、多くいただきます。理事の先生などはしっかりとご意見や要望をくださいますし、学生さんからは商品の要望が多いです。例えば、肉まんなどを置いてほしいという要望もありましたが、まだ設備がなくて実現できておりません。前の業者さんと同じ程度にお湯のポットと電子レンジを増やしてほしいという要望は、何とか実現できました。

朝元:ポットや電子レンジ等は大学の福利厚生のアンケートでも要望されたことでもあり、学生からの要望が強く、実現したことに関しては、生協理事会での経営状況報告で清水さんや坂田さんからお話いただいています。

聞き手:食堂の利用者が増えたというお話もありましたが、学内の雰囲気や賑わいなど、活気あふれるキャンパスになってきている様子はありますか。

朝元:昨年卒業した卒業生が時々来てくれるのですが、学食を見るように促すとみんな驚いて「どうして私たちの時に作ってくれなかったの」と言われますね。

また、豊橋市役所と豊橋創造大学との連携協定で、地域の子育て支援に大学の教室を提供しており、それが生協食堂近くにある「つどいの広場」になります。そこに集まった親子連れが生協食堂に立ち寄って、お茶を飲んだり食事をしたりと利用してくださっています。

それと大きなこととしては、オープンキャンパスですね。今はオープンキャンパスに親子で参加される時代ですので、2種類ぐらいの食事を用意していますが、親子揃って大学で食事をしていただくことが具体的な大学選びの一つの選択肢になっていると感じます。大学生協が提供している食事だと理解いただき、食の観点から具体的な大学生活を思い描いていただくことで、ひいてはそれが入学に繋がっていくのではないかと考えています。

更に来年、もう一年経った時にどうなっていくのかが一つの課題ではありますが、そこは前向きに捉えて、また別の機会にご報告できればと思っています。

坂田:親子連れの方は、1日あたりの平均で4組から5組くらいの食堂ご利用があります。
オープンキャンパスは、年に9回開催され、大学の入試センターから生協に食事の提供に関して、大変期待をいただいています。今回は「丼祭り」、次は「屋台祭り」というようにテーマを決められて、それにまつわるようなメニューの考案をご相談いただいています。私と清水とで知恵を出し合い、メニューと予算をご提案し、この夏ですと480人のご対応をさせていただきました。とにかく美味しいものが大学で食べられること、それも大学の魅力の一つであることも踏まえた協力を要請されますので、そこは生協としても力を入れて、できる限りいろいろなメニューを実現したいと思っています。

今後の生協運営の展望

聞き手:今後の生協運営に対する展望や大学生協という連帯組織に対する要望のようなものはございますか。

朝元:やはり生協の学内における必要性や価値を広めていくこと、認知を広めていきたいと考えています。現在見据えているのは、来年度入学予定の学生に対しても、いかにそのことを伝えていくかを課題としていきたいということです。

また黒字経営を目指すことも課題で、現在は正規の職員お一人を常駐で支援派遣いただき、費用についても支援をいただいて運営しておりますので、自分たちで自立していけるような体制にしていくことが急務だと思っています。

とにかく一年一年の積み重ねになりますので、四年かけて全ての学生が生協の存在を知る時が完成年度であると捉え、そこを目指していくと共に、設立の感動や熱意というものを、当たり前に生協がある世代にも伝えていくことができるように、文化を作っていくような意識でありたいですね。

坂田:先生がおっしゃった「生協をみんなで作っていく」ということを、私たち生協職員側も大切にして、肝に銘じてやっていかなければならないと改めて思いました。「みんなで入って、みんなで使って、みんなの声で運営する」。それが大学生協であり、学生みんなが利用し続けることで継続することを伝え続けていきたいと思います。

聞き手:本日は、ありがとうございました。

豊橋創造大学生協 理事長 朝元 尊 先生 業務責任者 坂田 充宏

2025年2月4日リモートインタビューにて

豊橋創造大学生協 理事長 朝元 尊

玉川大学 文学部 芸術学科 児童専修課程卒業

2010/04 - 2012/03
静岡理工大学浜松情報専門学校 こども医療保育科 非常勤講師
2012/04 - 2020/03
豊橋創造大学短期大学部 幼児教育保育科 准教授
2020/04 - 現在
豊橋創造大学短期大学部 幼児教育・保育科 教授
所属学会:
日本保育学会

豊橋創造大学生協 朝元 尊 理事長