全国大学生協連60周年記念 特設サイト

全国大学生協連 60周年にあたって

ご挨拶


全国大学生協連 前会長理事
(東京大学名誉教授)
古田元夫

法人化60周年にあたって

 大学生協連は、1959年に生協法に基づく法人として出発をいたしました。それから数えますと今年は大学生協連の発足60周年ということで、記念行事も予定をさせていただいております。この60年の歴史を振り返ってみますと、大学生協の活動は大学との関係をどう作っていくのかということと、個々の大学にある生協の間の連帯をどのように構築していくのかという2つのテーマをめぐって歩みが築かれてきたといってよいかと思います。

 まず、大学との関係ですが、1970年代が一つの大きな転換点でした。当時、会長をしておられました福武先生のもとで、大学との関係について新しい方向が提示をされました。それまでは、一部に大学生協と学生運動の一体化や、それによる過度の政治化ということが起きており、大学との関係が悪化したり、紛争による営業不振といった問題がありました。そういう状況の中で福武会長は、大学生協は大学と闘争をする存在ではなく、協力しあう、大学コミュニティを支える存在であるということを強く主張され、新しい大学生協のあり方として、大学生協は学生だけでなく教職員を含めた大学構成員全体の組織であると、自主的な経済団体だということを強調されました。大学生協は、こういう方向で、その後大学との関係を改善し、新しい協力関係を築くことによって、大学コミュニティの中で、それなりの存在になることができたと考えております。

 もう一つの連帯の方ですが、生活協同組合というのは、またそれぞれの単協が基本で、大学生協連の場合には、基本的には個々の大学ごとに作られた生協が、会員生協になっています。消費生活協同組合は法律によって地域・職域の制約があります。特に私ども大学生協は、個々の大学に形成をされるというのが基本だといたしますと、規模はそれほど大規模には作りようがないわけで、お互いにどのように協力をしていくのか、他の生協と協力してより大きな事業を行うための連帯ということが不可欠の課題になります。

 その連帯をどのように作っていくのかということで、事業連合という形態が実践の中から見出されましたのも、1970年代の初頭でした。東京事業連合というのが、初めて発足をいたしました。これは、個々の会員生協では実現できない組合員の期待に応えるための新しい組織の必要性が認識されて発足したもので、当時日本の生協の中に事業連合という組織はもちろん、名称や前例もない中で、東京都の認可を得て法人として活動を開始しました。出発は4大学で、会員生協がこの事業連合に商品、マーケティング、物流、経理、職員教育等、さまざまな事業を委託をするという形での連帯が模索されることになりました。この動きは京都、札幌にも広がりまして、やがて各地方に大きな規模の事業連合が1980代から作られてまいりました。そして2016年には全国に7つの事業連合が存在をして、日本全国を網羅するという体制が作られました。その後、昨年、7つの事業連合のうちの6つの事業連合が合併をして、「大学生協事業連合」というのが発足しました。この6事業連合がお互いに連絡をとりあって作りあげた動きでございますので、私ども連合会は、その主体性を尊重しつつ、構想の実現を支援してまいりました。大学生協の全国連帯にむけた新しい前進として歓迎すべき動きだと考えております。この6事業連合の合体によって発足した新しい「大学生協事業連合」が、その実践で十分な成果を収めて、全国が一緒になって事業連合を形成できるような状況というのをできるだけ早く構築してまいりたいと考えております。

 大学生協連の60年を振り返った際の、いま一つの特筆すべきことは、その国際活動です。日本の大学生協の大きな特徴は、きわめて多くの学生組合員を結集しており、学生が生協運営の積極的な担い手になっていることです。こうした学生中心の生協は、国際的にはあまり例をみないあり方です。

 日本国内での基盤を固めた大学生協連は、学生中心の生協の国際的普及をめざし、協同組合の国際組織である国際協同組合同盟(ICA)のアジア・太平洋地域の組織ICA-APの中に、学校に根差した生協が参加する「大学キャンパスコープ委員会」の設置を主導しました。この委員会は1994年に小委員会として発足し、2008年にICA-APの地域総会で承認を受けて正式な委員会になりました。いまでは、韓国にも学生中心の大学生協が生まれ、日本の大学生協と毎年交流の場が組織されるなど、学生中心の生協の国際的広がりも生まれつつあります。

 こうした国際的な意義をもつ活動として、新しい取り組みもしています。昨年の12月に行いました第62回総会で、大学生協も、SDGs=国連が掲げる持続可能な開発目標に積極的に取り組んでいこうという、総会特別アピールを採択しました。このSDGsへの取り組みは協同組合だけではなくて企業やさまざまな団体、大学でも取り組みが広がっております。大学での新しい取り組みの動きとしては、昨年の12月に法政大学の総長の田中優子先生の特別ステイトメントが出されています。

 大学生協は、2019年度の活動テーマに「つながる元気、ときめきキャンパス。〜多様な組合員参加の形をとらえ、さらなる参加の拡大を!〜」という、組合員の参加を強調する活動テーマを掲げました。この「参加の拡大」というのは、だれ一人取り残さない発展という、SDGsの大きな精神を体現したものです。私どもとしては、大学生協が日常的に取り組んでいる活動がSDGsの精神と合致をするということから、日常活動をSDGsと関連付けて、SDGsへの自覚を高めて、この達成を担う人材を自らの活動の中で育いきたいと考えているところです。

 この他、60周年にあたっては、奨学金制度の創出など、新しい事業みも検討しており、多くの皆様のご協力を得て、実りある取り組みをしてまいりたいと考えております。


全国大学生協連
学生委員長
小島 望

全国大学生協連 60周年にあたって

 この度は、全国大学生協連が60周年を迎えたということで、感謝の気持ちでいっぱいです。私事ではありますが、私の父親も今年で還暦を迎え、先日家族でお祝いをしたばかりです。父の祝いを機に、60年という重さや偉大さ、その中で私も育てられてきたことへの有難さについて考えました。

 大学生協連も60周年を迎えましたが、学生の立場からすれば、日々の活動中に、このような想いになることは滅多にありません。しかし、60年という節目を迎え、改めてこれまでの先輩方が紡いできた想いや多くの成果とその蓄積の元で、今のような機会に恵まれ、その中に私自身も存在し関わっているという事実を目前に、なんとも言葉にし難い感情が芽生えました。多くの先輩方、そして200生協を超える会員生協の皆さんやその組合員の存在に日々感謝しながら、邁進していくことを改めて覚悟しました。本当にありがとうございます。また、大学関係者、諸団体、地域生協をはじめとする協同組合組織の皆さん、その他多くの皆さんにも感謝して、これからも一緒に歩んでいきたいと思っております。これからもよろしくお願いします。

 さて、節目を迎えると、先10年、20年というように大学生協の将来を考える機会も増えてきます。私個人としては、これからも今の大学生協であり続けるのだろうか、どんな組織になるのだろうかと常々考えます。過去数十年の軌跡を辿ると、組合員の声と参加を通して、その都度一人ひとりのよりよい大学生活を叶えてきました。その事実は本当に称賛に価すると思います。

 一方、今の社会を覗くと、過度な利便性の追求が地球全体の負担へ繋がり、個々の分断や格差を引き起こしています。社会が複雑化且つ多様化したからこそ、個々が尊重される社会が必要です。しかし、「今だけ金だけ自分だけ」と揶揄されるように、社会全体は不寛容な雰囲気を帯び、本来の温かさを欠き、生きづらささえ作り出してしまっています。

 今こそ、組合員同士が繋がり、想いを寄せ合い、協同することで、よりよい大学生活と平和、そうしたより輝かしい将来を描ける大学生協の存在が必要です。また私たちの日々の取り組みを通じて、大学内から広く社会へと発信する存在、協同やたすけあいの精神を広げ育む存在となりましょう。

 「未来ハ我等のものな里」とあるように、これからも私たちの手で私たちの未来を創っていきましょう!

祝辞


日本生活協同組合連合会
代表理事会長
本田英一

60周年を機によりよい未来に向けて力強く発展を

 全国大学生活協同組合連合会の創立60周年にあたり、全国の生協の仲間と共に心よりお祝い申し上げます。創立以来、多くの困難の中で歴史を積み重ねてこられた皆様の協同組合運動発展へのご苦労とご努力に対し、心より敬意を表します。

 貴連合会は、1947年に前身組織の「全国学校協同組合連合会」の創立以来、時代環境の変化の中で、全国の大学生協が団結する協同・連帯の中心としての役割を長く果してこられました。2018年度末には、各地の大学に在籍する学生の約半数を組織し、購買事業、食堂事業、書籍事業などを幅広く展開され、全国の総供給高は1,800億円を超えるまでに発展されました。こうした事業を通して今日、大学生活になくてはならない存在として60周年を迎えられています。

 皆様はこれまで、在校生、卒業生、職員が力を合わせ「1人ひとりの声」と「人と人とのつながり」を大切に、様々な体験活動や年間を通した総代活動などを通して、組合員にとって魅力ある大学生協へと価値を高めてこられました。日本における大学生協の存在と活動は、若者たちが学生時代に「協同組合」にふれ、理解する重要な機会となっています。

 今年度の総会で貴連合会は、「組合員の生活にもっと寄り添っていく取り組みの強化」「様々な場面で組合員の学びと成長を意識して魅力ある大学づくり」「持続可能な社会を大学生協に関わる人だけでなく大学や地域でめざす」などを活動方針として掲げられました。より多くの組合員の参加を協同の原動力に、組合員のよりよい大学生活へつなげていくことを目指されており、平和活動や地域社会に関わる取り組み等とあわせ、これらは、SDGsがめざす持続可能な社会づくりに通じるものであると存じます。また、学生総合共済のコープ共済連との共同引受を2021年から予定されていることは、共済事業における大学生協と地域購買生協の連携を進める契機になるものと存じます。

 現在、日本生協連では2030年ビジョン(一次案)「つながる力で未来をつくる」の下、中期方針の論議を進めております。大学生協の皆様とも更に協同し、ご一緒に未来を切り拓いてまいりたいと存じます。
 60周年を機に貴連合会がこれからも、大学で学び、働く仲間一人ひとりとつながり、共に力を出し合い、よりよい未来に向けて力強く発展されますことを祈念し、お祝いの言葉とさせていただきます。


全国大学生協
共済生活協同組合連合会
会長理事
濱田康行

60周年に寄せて

 大学生協連の設立60周年。おめでとうございます。これは持続する志の証明であり、それを支える日々の努力の成果です。先輩・OBの方々、そして現職員の皆様に心より敬意を表します。

 60年は組織にとっても、とても長かった。この間にはいくつかの危機もあった。その昔は大学生協内にも対立があって、必ずしも一枚岩ではなかった。また、外部から様々な競争を仕掛けられ、少なからず動揺したこともありました。大学の敷地内にコンビニができたときのことを思い出します。

 今では大学生協は大学の大切なパートナーですが、その認識が一般的ではない時代もありました。当時の職員は大変な苦労をし、少しづつ大学内に“市民権”を確立していったのです。必ずしも良好とはいえない労働環境の中、みんなが“明日”を信じて、そして生協人という自負を持って、がんばり通したからこそ“60年”はあるのでしょう。

 この先も平坦な道が約束されているわけではありません。ICTの時代を迎えて、姿の見えない強力な競争者が次々と出現しています。また、大学生協の存在意義を疑う大学経営者も少なくありません。

 大学生協連が60周年の祝いをきっかけにさらに強力な組織として前進してくれること、また常に指導連として、私ども共済連を含めて関係諸団体にとっての先導役であることを願ってやみません。

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