学長・総長インタビュー

広島修道大学

三上 貴教 学長

世界を学び、地域で生きる地域連携と国際交流の充実により、
地域を元気にする学生を送り出す

日本の大学の状況認識

矢野 最近の日本の大学の全般的な特徴や状況についてお聞かせいただけますか。

三上 最近に限りませんが、日本の大学全体に対して思うところとして、もっと日本の文化を支える基盤として存在感を高めることができたら良いと感じています。例えば、過去にカナダのカールトン大学に留学していたのですが、50メートル級のプールや飛び込み台、10面以上のスカッシュコートもあるなど大学の施設の規模が大きく、整備されています。本学と提携しているアメリカのケント大学に行ってもアイススケートリンクなど設備が大変充実していました。当然、地域の人も大学にスポーツをしに訪れています。

 本学も各種設備を整え、学外に貸与することもありますが、海外の大学が地域の大きなイベントを大学で開催していることを目の当たりにすると、日本も大学全体がもっと地域社会を支える、あるいは大きな視点から日本の文化を支えるという存在感を高めてもいいのではないかなと強く感じています。

ひろみら

矢野 今お話しいただいたように地域に開かれた大学、地域の文化を支える大学という面で、広島修道大学の具体的な取り組みなどをご紹介いただけますか。

三上 先日、日経HRの『価値ある大学2020年版〜就職力ランキング〜』において「地域の産業・文化に貢献している」という項目で本学が全国2位、私立大学では全国1位にランキングされました。〝ひろみら〟つまり、ひろしま未来協創センターでのさまざまな地域を活性化するような取り組みなどが産業界の採用担当の方々から評価された結果だと考えます。〝ひろみら〟では教員と学生、そして、地域の方を交え、地域課題解決を考える場としての「ひろみらイノベーションスタジオ」があります。加えて、学生たちが主体的に地域の問題に取り組む「地域つながるプロジェクト」は、地域の中にとけ込んで活動しています。学部教育でも、国際コミュニティ学部では、海外や地域の中で実際に行政や団体などの業務を体験・実習することで、様々な経験のできる「体験実践」を設け、座学だけではない体験型の勉強をしっかり行い、評価されています。

 本学の地域の中での存在感でいいますと、前述以外の各種ランキングでも高く評価してもらっているということも有り難い話です。志願者も入学定員1415名に対し、直近4年間は1万人を超えて集められているというのは、18歳人口の減少している厳しい時代の中で一定の社会的な評価を得られていると思っています。一般入試においては、中四国の大学の中で本学が最も多く志願者を集めており、受験生や社会に本学の存在感のアピールがある程度できている結果だと考えています。

世界を学び、地域で生きる

矢野 地域への貢献度の高い成果が学外からも評価されているようになってきているというお話だったのですが、広島修道大学の理念や目標、また今後どのようなかたちで展開されていくのか、お聞かせいただけますでしょうか。

三上 スローガンでいうと「世界を学び、地域で生きる」です。正確な表現を使うと、「地球的視野を持ち、地域社会の発展に貢献できる人材の養成」が教育理念・目標で、世界を識って地域活性化に役立てる人材を養成していきたいと思っています。昨今、日本全体の若者たちが内向きになっているとも言われています。本学の学生も地域で活躍するということをしっかりと頭に入れながらも、地域だけにとらわれることなく、視野を広く持つために世界を見る機会を本学が提供していきたいと思っています。地球的視野を持ちながら、地域の元気を牽引し、地域の経済界のみならず文化やスポーツの面でも引っ張っていける存在でありたいと思っています。

矢野 「世界を学び」という点で、具体的に学生の教育面で特徴的な取り組みを紹介いただけますでしょうか。

三上 本学では、交換留学・海外セミナー・グローバルコースに取り組んでいます。昨年度は、交換留学15名、海外セミナー171名、グローバルコース16名の学生が参加しました。交換留学は長期のプログラムが中心で、力をつけていく上でもいいです。海外セミナーの一つでもあるバレンシアカレッジ・ディズニーセミナーはウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでの就業体験ができるプログラムです。ただの語学学習ではなく、生きた英語を学べるということもあり、参加した学生はとてもいい経験になっているようです。

矢野 留学への経済的な支援として、広島修道大学では具体的にはどんなことを行われていますか。

三上 交換留学の場合、留学派遣先の授業料は本学の授業料を納めることで免除になります。お互いに交換なので、向こうから来る学生も同じ対応です。また、それぞれ留学している先での経済支援や寮のこと等、プラスアルファで支援もしています。本学で受け入れる留学生に対しても同様に、手厚い支援を行っています。交換留学自体はお互いの大学間で協力しながらやっていますので、学生たちにとっては非常にメリットがあるプログラムなのです。

矢野 留学参加者は留学支援奨学金制度がありますね。

三上 国際交流スカラシップとして派遣期間や地域により、一定額の奨学金を支給しています。

矢野 先生の目からご覧になって、学生の内向きさや海外に対する意識というのは、広島修道大学の学生はどのような特徴がありますか。

三上 自分自身が国際政治学科に所属していましたから、比較的海外に目を向けてくれている学生が多かったと思います。統計はありませんが、一昔前は、なんとしても留学すると頑張る学生が多かった印象もあります。今は、英語ができなくてもそんなに困らないと思う学生がいるのか、近場のセミナーなどに参加しがちです。それもいいことだと思うのですけれど、もっとチャレンジして難しい大学に留学するとか、より上を目指す学生が多くなってほしいです。

矢野 最近は海外旅行のハードルが低くなったので、学生にとっては海外に行きたいときに行けるという環境があるかもしれないですね。

三上 そうですね、誰でも簡単に海外に行けるようになりましたね。以前であれば、本当に経済的に大変だった。大学も提携校を多くつくり、非常にハードルは下がったと思いますが、その分、希少価値が下がった側面はあります。でもやっぱり、一度集団で海外に行ったあとに個人で行くとか、そういう一歩先の海外での経験をしてほしいですね。

学生を支える多様なスカラシップ制度

矢野 学生生活支援、修学支援や経済的支援という点で、広島修道大学として取り組まれていることはございますか。

三上 各学部学科の中で成績優秀者の表彰があります。前年度の成績に応じた在学生スカラシップは、165名に対して一人当たり年間15万円の支援をしています。また、難易度の高い資格取得者へ資格取得スカラシップも給付しています。

 課外活動スカラシップでは、昨年は団体でソフトボール部、個人ではスカッシュ部の学生など全国大会で結果を残すなどしたサークルに対して給付を行っています。

矢野 先日、成績優秀者や顕著な成績をあげた課外活動の表彰と奨学金授与の会に私も出席させていただきました。あの場で「奨学金をいただいて、それをどのように使っていくのか」ということに対して学生一人一人のコメントがとても頼もしかったと思います。大学からの支援がとても効果的に学生の意識を高めていると実感したのですが、そういった効果について先生はどのようにお考えでしょうか。

三上 そうですね。学習支援やサークル活動、資格取得等で手厚く給付していることで、1年生のときに給付されて、また頑張ろうとか、もっと資格を取ろうという気持ちを持ってくれていますからいいですよね。もっと手厚く給付してほしいという意見も聞きますし、さらに学生にとって有益な支援を考えたいと思っています。

矢野 学生支援については、これからますます充実、そして発展させていかれるということですね。

三上 昨年、西日本では豪雨災害がありましたが、その際も家の全壊や半壊といった被災状況に応じて学費減免などの支援を行っています。新入生にも同様の対応をとっています。また、被災地の学生には交通網の遮断などによる通学困難者がおり、その学生に対してオンキャンパス、学内にある宿泊研修施設のセミナーハウスで滞在させるという支援も行いました。多数の被災学生の利用があり、多いときで、1週間で延べ256名が利用しました。被害の大きかった地域の学生は3月頃まで滞在していました。突発的に起きたことでしたが、しっかり学習環境を確保できるように支援を行いました。以前の災害の教訓から、支援できる制度や態勢を整えています。

生協への期待

矢野 広島修道大学生協、あるいは全国の大学生協全体の取り組みについて、何かご要望や期待、あるいはもっとこういうことをしたらいいのではないかというような、学長のお考えがありましたらお願いいたします。

三上 いただいた資料を見させていただきました。他大学の取り組みを見ているといろいろなグッズやコンセプトがあって面白いですね。修大オリジナルもみじ饅頭はありますが、本学もグッズがもっとあっていいのかなと率直に思っています。生協と本学とのコラボレーションだと思うのですけれども、大学生協と相談させてもらいながら、グッズの開拓、開発、それと販売もできるようにしたいですね。

矢野 これからもどうぞよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

(編集部)


左から矢野先生、三上学長、長谷川英男生協専務理事