『帰ってきた生協の白石さん』発行記念インタビュー

表紙
白石 昌則
帰ってきた生協の白石さん
[単行本] 

価格 ¥1,320(税込)
出版社 講談社
発売日 2023-04-07
ISBN 9784065290354

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2005年に著書『生協の白石さん』がベストセラーとなった白石昌則さんが、本日4月7日に新書を発行されます!
白石さんも現在はアラフィフとなられ、当時ひとことカードを寄せてくれた大学生も不惑の域に達しました。今回は、かつて大学生だった年代と現役大学生からの、二世代より質問を受けるという内容です。「当時を思い出しながら、あまり肩ひじ張らずに回答しました」と語る白石さん。忙しい中での執筆で大変ご苦労されたと思われますが、「休日や、単身赴任中だった大阪から帰省する新幹線の中などで、1年ほどかけて書き溜めました」と、むしろ楽しまれたようです。

二世代からの質問には、当然ながらそれぞれ特徴が見られました。
「18年前は私も30代半ば、今は50代半ばです。その時の大学生が、当時の私の歳を上回った40代となり、以前は感じた年齢差もさほど感じないんですよね。健康や心身の衰えに関することとか仕事のこと、家族のことなど、嘆き交じりの質問に『分かる、分かる』と共感する感じです」。
逆に今の大学生に関しては、「やはり学生ならではのみずみずしさを感じました。あの世代だからこういうことをパッと思いつけるのだという質問の勢いは、若い人ならではのものです」。
ご自身を振り返って、「大学生協に勤めている以上は、自分たちの世代に比べて学生がこうだと語るよりも、彼らが能動的に面白い企画に参加してみようと思わせるようなきっかけを提供しなければなりません。それが大学生協職員の姿だと思います」。語るよりも寄り添って一緒に考えるよう心掛ける白石さんの、俯瞰的な視野に立って発せられるユーモアあふれる言葉が、今も昔も学生の心をつかむのかもしれません。

突然失礼します!
全国大学生協連 全国学生委員会の学生よりインタビューをさせていただきました!

18年前は小学生だった学生委員が白石さんにインタビューを行い、白石さんと学生(組合員)、生協と白石さんなど、さまざまな思いを伺いました。

インタビュイー

白石 昌則氏
プロフィール

インタビュアー

全国大学生協連
全国学生委員長
(2023年度)

高橋 明日香

全国大学生協連
全国学生委員会
(2023年度)

中丸 雄也

(以下、敬称を省かせていただきます)

初回発行されていました「生協の白石さん」のご本を読んで、大学生協の良さを伝えつつ、素敵な言葉でユーモアあふれる回答をされているのがとても印象に残っています。

当時は、本になることを前提に始めたわけではありませんでした。ひとことカードって、大体は店舗に関する要望なのですが、たまにそうではないのか紛れているのは、どこの大学生協も同じだと思います。私には、やはり学生さんに来ていただき、書いていただいているからには、多くの人に生協のことを知ってほしいという願いがありました。質問に対する回答は一対一のやり取りですが、貼り出すと多くの人が見るわけです。ただやりとりを書くだけではあまり注目されないので、ちょっと脱線したことも書いてみようかと、肩の力を抜くような感じで始めました。目的と手段がちょっと逆になっているような感じかもしれないですね(笑)。

年代によって感覚も違うでしょうが、当時も今も、ひとことカードにはどういうことを意識されて回答を書かれるのでしょうか?

若い人はひとことカードに、本当に生の感覚でスパッと書くんですね。これが大人だったらこんなけれん味・・・みなく書けません。変に気を使って、知識というオブラートに包んで長々と書いたりします。でも、率直に書く若い人のほうが、結構センスを感じられることが多いですね。
また、一人でいる時よりも仲間うちでいる時のほうが、気持ちが大きくなったりしませんか? 20代の頃って、みんなで生協にやって来てちょっとふざけたことも書いちゃうみたいな感じ、そういうのがすごくうらやましく思うんですよね。そのへんが、自分が感じた世代による感覚の違いで、私たちもそうだったなと懐かく思いながら書いていました。

多様性の時代に、いろいろな世代やさまざまな感覚の持ち主に向けて言葉を紡ぐ際に、怖かったり不安だったりという感覚はありませんか?

おっしゃるとおり、組合員や学生の方々に、私の書いたことがちょっとふざけているんじゃないのかと思われたことは確かにあったかもしれないです。でも本を読んでいただくと、恐らく8~9割の人が、まじめな質問とふざけた質問が自分なりの感覚でお分かりになるかと思います。
何を答えても大丈夫そうな質問に対しては、こちらもオチを付けたりして肩の力を抜いて回答しました。そのように、“相手と水平に目線を合わせて答えた”という記憶があります。その結果、もし何か差し障りがあったら申し訳ありませんでしたが、大学生協で学生の問いに答えていると、意識せずとも目線が同じになるというような感覚が当時ありました。

昔と今の学生について、特徴的だったことは何かありますか?

「自分の学生の時と今の学生とはどんな違いがありますか?」という質問はよく受けます。私が心掛けているのは、「今の学生はこれ、これ、こうで」と訳知り顔で語らないこと。就活時代の私たちも年長者から“新人類”と評され、「何を考えているのか分からない、常識が無い」と言われたことに、多少の自覚がありながらも強い抵抗がありました。
今の学生も同様です。10年ほど前、当時東京インカレで就活の講座を開いた時、集まった学生たちに講師の方から「自分たちの世代が大人からどう思われていると思いますか?」という質問が投げかけられました。そのときに、「肉食ではなく草食」、「スマホ依存」、「人と群れずに一人で完結している」のように、割と後ろ向きの傾向がありがちという意見が出ました。でも、「実際に面接官の世代の人からそう見られることについてどう思いますか?」との問いには、「いや、そうやってくくられるのが一番嫌なんですよ」。
ですので、語るよりも寄り添って一緒に考えるようにするのがいいのかなと、大人として思いました。

今回ご著書を書かれるにあたって、「今の学生ってこんなことを考えているんだ」と思われたことはありましたか?

今の学生からの質問で特徴的だったのは、“メタバース”というような言葉がたくさん出てきたことです。仮想空間的な問いなども結構来ています。現実の世界に生きていながら仮想空間での自分の立ち位置というのも結構楽しんでいるのかと思いました。これは我々の世代にはなかったことですね。
自分たちの世代と皆さんの世代との一番大きな違いだと思うのは、私たちの世代は“多様性があまり認められていなかった時代”なんですよ。私も含めて、男性は力を誇示し、そんなに味も分からないのに背伸びしてタバコや酒をやったり、女性にモテようと思っていい車に乗ろうとしたり。もちろん全員がそうではありませんが、そう思っている人が多数だったのです。電車やアニメが好きな人たちも、昔から同じぐらいの人数はいたと思うんですよ。そうじゃないと文化として続かないわけですから。
昔はそういったことを公然と言えないような時代だったんですよね。けれども今の若い人たちは、背伸びして煙草を吸うというよりも、そこにかっこよさを見出すという感覚はなくなってきました。電車やアニメ好きも、むしろそれを公表したほうが自身のアイデンティティになり、それが個性として認められる時代です。私たちの世代の方が“ええかっこしい”だったようなところがありますが、今の人たちはそうではないので、そういう部分がすごく大人だなというふうには感じています。
今回本を出すに当たって、そんな質問も出てくるのかと思いきや、ふたを開けるとやはりアホな質問ばかりでした(笑)。「学生ってそうなんだな」って感じなので、楽しみに読んでください。

1枚の紙(ひとことカード)を届けるためには、その人の背景にまで思いをはせて感じ取らなければならないと思いました。コロナ禍で学生が大学に滞在する時間が少なくなり、ひとことカード自体扱いが少なくなくなった会員さんもありますが、目にする機会はあるので、少しずつ復活していくと思います。
本日はお忙しい中、ありがとうございました。

PROFILE

白石 昌則(しらいし・まさのり)氏


かつてベストセラーになった
『生協の白石さん』
(2005年・講談社)とともに

1969年、東京都出身。1994年に信州大学経済学部卒業後、早稲田大学生協に入協。2005年、東京農工大学生協に勤務していた際に、利用者アンケート「ひとことカード」に書かれた要望や質問に対する機知に富んだやり取りがインターネットを中心に大学内外で反響を呼び、『生協の白石さん』(講談社)として書籍化されてベストセラーになった。その後、東京インターカレッジコープ、法政大学生協、東洋大学生協などを経て、2021年に日本生活協同組合連合会に移籍。現在は同連合会渉外広報本部 広報部に在籍している。今回上梓した『帰ってきた生協の白石さん』(講談社)は、自身7冊目の著書となる。

「帰ってきた生協の白石さん」を読んで(学生の感想)

生協の白石さん、私は大学生協について知りたいと思い、インターネットで検索した時に、「生協の白石さん」の本を知りました。調べると、すでに別の生協に移籍されており、当時は少し悲しい気持ちもありましたが、今回、帰ってきていただけました。今回、「帰ってきた生協の白石さん」には、令和の大学生からの質問、平成の大学生からの質問の2部構成となっています。今の大学生の興味のあることに対応し、時には面白く、時には真面目にご回答されており、とても楽しく読むことができました。逆に、平成の大学生の質問は、10代20代の学生にとっては、将来の悩みについて知る機会となりました。「なるほど、将来、このような悩みを感じる場面があるのか…」と知ることができました。ぜひ幅広い年代の方に読んでもらいたい本です!

全国大学生協連
 2023年度全国学生委員
 中丸 雄大


初めて白石さんの著書を読んだのは、大学1年生の時でした。生協の学生委員会に入った私に、母が買ってきてくれました。まだあまり生協について知らなかった私は、こんなに面白い職員さんがいることに驚きました。また、顔がみえずともその人の考えていることを文字で読み取り、返信を返す白石さんのワードセンスは、ただ面白いだけでなく、共感を生むものだとも思いました。今回、「帰ってきた生協の白石さん」も共感できる部分が多くありました。私は、大学2年生の時に令和になったので、どちらの想いもわかるのかもしれません笑大学生のみならず、様々な人に読んでもらいたいです!この本を話の種として、年齢問わず人と人との対話のきっかけになればいいなと思います!

全国大学生協連
 2023年度全国学生委員会委員長
 高橋 明日香