※ FS(フリースペース)について詳しくは、こちらをご覧ください。
静岡文化芸術大学は本年2月、国内初のフェアトレード大学に認証されましたが、中心的に活動をしている学生団体「りとるあーす」も生協組合員として、フェアトレード商品の展示販売をこのフリースペースで行い、学内でのとりくみが広がりました。
中村真悠・以下中村 「はままつ野菜収穫隊」のとりくみについて教えてください。
足立采希・以下足立 きっかけは2017年4月の生協理事会です。生協理事長の下澤嶽先生が地産地消やフェアトレードについて研究をされている方で、知り合いの『ひかり農園』さんをご紹介いただいたのが始まりになります。先生はもともと「生協の食材をオーガニックにしたい」とおっしゃっており、また5月の総代会で掲げた2017年度方針に「生協がエシカル消費の推進母体になる」ということを盛り込んだことも影響しています。
中村: どんな人が参加して、実際どんなとりくみをされたのですか?
足立: 参加は公募制にして学生委員会以外の学生からも参加者を募ったところ、学生委員から2名、学生委員以外の学生が4名、合計6名の参加がありました。みんな国際文化学科の学生で、友達同士で声をかけあったのだと思います。
7月1週目にひかり農園さんで収穫体験。2週目に梱包作業。3週目に生協購買の〝フリースペース〞(組合員が販売や展示に利用できる空間)で販売、食堂でメニュー化をしました。野菜の「空心菜・にんじん・トマト・ミニトマト・なす・ピーマン」を各25袋、「メークイン」を12袋販売、食堂で「冷やしトマト・夏野菜カレーライス」を各60食販売しました。野菜は3日間で完売して、食堂メニューもすべて完売しました。
※ エシカル消費とは
倫理(エシカル=ETHICAL)に基づいた消費のしかたで、被災地支援、環境保護、地産地消、無農薬、フェアトレード、途上国支援など、社会的課題に配慮した消費活動のこと。
中村: それはすごい!実際どんな反応がありましたか?
足立: 野菜を買うのは教職員の方が多いのかな、と思っていたのですが、学生にも好評でした。とりくみを行う前に調査を行ったのですが、学生は「空心菜」を知らない人が多くて。
中村: 僕も知らなかった…。
足立: そうやって知らない方に対する周知にもなったのか、学生で空心菜を買う人が多かったです。特に女子学生には人気でした。地域の方から話が広がって新聞にこのとりくみを掲載してもらうことになり、地域の方も、『ランチタイムコンサート』が終わった後に、購買へ寄って買って帰ってくれることもありました。
中村: とりくみでこだわったところはありますか?
足立: 食堂メニューとして出した「冷やしトマト」は普段のメニューにもあるのですが、今回採れたものは違いが分かるように櫛切りの切り方にこだわりました。夏野菜カレーライスはなぜカレーにしたかというと、野菜本来の甘みやうまみを感じられるように、また、メニューを提供するパートの方などの負担にならないようにとの考えからです。
また、ポスターとPOPを作成したのですが、デザインにはすごくこだわりました。学生にも手に取ってもらえるようにおしゃれなものにして、POPには生産者の方の想いを入れて、用紙にもこだわって、生協のブランディングとしました。
参加者を公募制にしたのもこだわった点です。より多くの人に地産地消やエシカル消費について知って、考えてほしいと思いました。
また、生協職員としっかり相談をしました。フリースペースのとりくみもそうですが、お金の管理や、生協の店舗を使うことになるので職員とのやり取りは重要でした。
中村: なるほど。実際に収穫体験をされた感想は?
足立: まずは「野菜ってこんなにおいしんだ!」って思いましたね。あと、農家の人の朝は早い(笑)。生活習慣が正されたと言っていた学生もいました。農家さんの生活を肌で感じる機会になってよかったと思います。私はゼミでお茶について研究をしていて収穫体験はやっぱり楽しいなと。「地産地消や有機栽培の物はいいのか?」ということについて詳しく知らなかったのですが、今回のとりくみで体験を通して知ることができたと思っています。
中村: 体験しないと分からないことってありますよね。
足立: はい。自分たちが収穫した野菜を手に取ってもらえると嬉しいし、「おいしい」という声を聞くとやりがいになりました。
中村: なるほど。話を聞いていると「楽しかった!」っていうのがよく伝わってくるのですが、正直困ったことや難しかったことはあるのでは?
足立: それはもちろんありました。購買で野菜を売ろうにも生鮮食品ですので、品質もそうですが在庫管理には苦労しました。参加者もたくさんの人に知ってもらいたくて公募制にしたのはいいけれど、「集まるのかな〜…」って。他にもプロジェクトの期間が短かったことがあります。「販売の個数をどうするか」「タグ付けをどうするか」。私は上級生として、どうするか悩みました。でも授業の空コマを使ってみんな集まってきてくれて、ポスターの確認を相互にしたりしました。苦労はしましたが、よいメンバーで取り組めたと思っています。
中村: このとりくみからさらに広がったもの、今後の展望はありますか?
足立: 企画立案の講義や中山間地域について研究しているゼミと協力して「天竜杉トイレットペーパー」「天竜棚田の米」を販売しました!社会に目を向けるとりくみができてきていると思います。
下澤先生やひかり農園の方からは「1週間と言わず、継続してほしい」という声をいただいて、来年(注:2018年)1月にも実施予定です。
今後は次年度へ向けて1年生を主軸に継続していきたいと考えています。また静岡文化芸術大学は国内初となるフェアトレード大学の認証申請中であり(注:2018年2月に認証取得)、また地産地消についても教職員・学生一丸となって取り組んでいます。小さい大学だからこそ、学生と生協職員、そして大学職員の連携がうまく取れ、意思決定がしやすいのだと思います。大学の目標に貢献できればと考えています。
中村: 最後に、全国の皆さんにメッセージをお願いします。
足立: このとりくみは農家さんの想い、将来的にもおいしい野菜を残したいという願いに共感したところから始まりました。地産地消を推進する理由は、国内の農産物を守ろうということから始まっていると考えています。TPPのことも考え、地元の農家を守る意識を持って取り組んでいました。地域の特産物が減少しているのは食べるだけで解消することができます。
また、有機農産物は河川の環境を守ることができます。ロンドン五輪・リオ五輪の選手村では国内生産・有機農産物が食材として使われていたのに対し、2020年東京五輪の開催基本計画には「持続可能で環境に優しい食料品を使用」と基準が曖昧になっています。
食べ物から社会について学べることはたくさんあるのです。
中村: ありがとうございました。ともに頑張っていきましょう!
(編集部)
『Campus Life vol.55』より転載