My eyes World eyes

挑戦せず、変化せずに、成長はあり得ない

夢をかなえる場所 日本

初めての 日本人の友達

王 佳妮 (WANG JIANI) 東北大学生命科学研究科D2年
王 佳妮 (WANG JIANI) 

ANA飛行機の中で、一生懸命棚の上に荷物を積む私は、後ろから声を掛けられました。「手伝いますか」と。

初めて母国を離れて一人で旅立つ私は、わくわくしました。飛行機の外は中国語の世界ですが、飛行機に乗ると普通に日本語で声を掛けられました。

「ありがとうございます」  こうやって私は出張で中国に行った水戸出身の渡辺さんと知り合いました。私が初めて来日し、初めて飛行機に乗ったと聞いた彼は、乗務員からANAのディナーセットをもらってプレゼントしてくれました。「記念として」と。

こうやって私は初めての日本人の友達ができました。もらったプレゼントは今でも大切に使っています。渡辺さんから、私は日本人の優しさを感じ取りました。それから、私はたくさんの日本人と知り合い、友達になりました。日本人が優しいという印象は、今でも変わりません。おかげで、私は日本という夢を叶える場所で、いろいろ経験し、成長し、充実した生活をしています。

えびちゃんじゃなくて かにちゃんです

被災地で児童館の子どもたちと一緒に被災地で児童館の子どもたちと一緒に

「名前は何ですか?」
「オウ カニです」
「……」
「名字はオウで、王様の“王”です。名前はカニです。カニと呼んでください」
「かにちゃんですね。かわいい名前だね。えびちゃんみたい」

以上は、私が初めて会う人と、よく行う会話です。  

私の名前は王 佳妮(ワン ジャニ)です。日本語の発音にしますと、オウカニになります。日本に来てから、「カニ=蟹」ということを知りました。今さら名前の呼び方を変えてもなぁと思って、そのまま「オウ カニ」にしています。

そうしますと、自己紹介の時はいつも先ほどのような会話になります。場合によって「大きな蟹」だと冗談にされる時もあります。この文化と言葉によって生じたジョークのおかげで、名前がすぐに覚えられて親しくなります。間違えられることもほとんどありません。

このような、ささやかな楽しみが、私の留学生活の大切な一部になっています。

千里の道も一歩から

私は中学校時代からずっとボランティア活動をやりたいと思っていました。しかし、ずっと実現できませんでした。日本で、私は初めてボランティア活動に参加しました。

「お兄さん、お姉さん、帰らないで」と被災地の子どもたちに言われた瞬間は涙がこぼれそうでした。

子どもたちと出会ったのは、七ケ浜町の児童館でした。震災が起きてから間もなく2年が経とうとしている時、私は新聞やテレビに被災地の報道が消え始めていることに気づきました。被災地の現状が気になり、さらに復興のために、少しでも自分の力を貢献したいと思った私たち留学生仲間8人が、沿岸全域が被害に遭った七ヶ浜に足を運び、子ども支援活動を行いました。

初対面ですが、子どもたちが私たちに求めてくる愛の大きさが尋常ではありませんでした。「もっと関わってほしい、遊んでほしい」という素直な気持ちに感動した私たちは、子どもたちの元気な笑顔を見て、共に楽しむ喜びを味わって活動のやり甲斐を感じました。どんな状況でも、元気な笑顔で生きる強い気持ちこそ、国境を越える感動をつくり上げて、日本の未来を支える感動の力となります。

今回のボランティア活動の経験を周りに伝え、この活動を広めていきたいと思っています。復興支援の形式はいろいろあり、ボランティア活動の形式もいろいろあります。気持ちは力になることができると初めて実感しました。

何よりまず現地に行くことは大事だと思いました。被災地の人たちがどのように感じ、どれほどの傷を負っているのか… もちろんそれをすべて理解することは難しいですが、自分は果たしてこの地域のために何ができるのかと自分自身を問う大きなきっかけとなりました。想像や憶測だけに留まらないで、実際に現場に行き、目で見て肌で触れることで初めて理解できるようなことは多い、これこそがボランティアの意味だと思いました。

幸せの真実を 探るために

中学校2年の時の私は、すごく悩んでいました。

「幸せとは何か?」「限りのある人生をどうやって過ごすべきか?」

いくら考えても、自分が納得できるような答えが見つかりませんでした。  脳科学を勉強して、理解を深めれば、答えが見つかるかもしれません。そう思って、私は脳科学の研究が進んでいる日本に留学することにしました。

10数年経った今、脳科学の研究を行っている私は相変わらずに悩んでいます。やはり、自分が納得するような答えは見つかっていません。 それでも唯一、自分の中ではっきりしていることがあります。

私は、悔いのない人生が欲しいです。「私が生きていたことに価値があった」と人生の最後に言えるように、今は真剣に日々を送っています。人々にも自分が納得できるように人生を送って幸せになってほしいです。日本での留学経験を生かして、世界中の人々が「生きてよかった」と思うように、素晴らしい研究を行って素晴らしい商品を開発して、人々の精神的な豊かさへ貢献したいと思います。

『Campus Life vol.36』(2013年9月号)より転載