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「温かい」日本

いつか日本語を勉強できれば

王 佳妮 (WANG JIANI) 大阪大学 
李 楊芷 LI YANGZHI

私が日本に来て今年で3年目です。この土地を踏んでから、毎日新しい経験をし続けて、日本に対する印象も変わりました。

私は子どものころから日本に興味を持っていました。自分の名前が一つの原因です。私の名前は「李楊芷」で、「楊芷」の中国語発音は「洋子」とすごく似ています。自己紹介するときはいつも「日本人の名前しているなあ」と言われます。よく言われるので、「日本人はどんな感じ?」と知りたくなってきました。そのとき、日本に対するイメージは、ひげが八の字になるおじさんと歌舞伎の真っ白の顔だけでした。また、私はアニメが好きです。アニメから見た日本は中国の雰囲気と大分違っています。印象が深かったのは道の両側に並んだ美しい桜の木とにぎやかな祭りでした。そして、アニメの歌を歌えるようになりたくて、いつか日本語を勉強できればいいと思いました。

自分の目で本当の日本を見たい

被災地で児童館の子どもたちと一緒に

中学の時は学校の日本語クラスに入りました。学校の授業で日本語を勉強すると同時に日本の映画やニュースなども多く見ました。日本の文化と社会現状に触れることで、日本と日本人にますます興味を持つようになりました。

高校2年生のとき、東日本大震災が起こりました。日本全国が混乱に陥ると思いましたが、実際は、被災地でも人々は秩序を守って、冷静に災難に直面していました。中国でも、東日本大震災による原発事故のせいで放射性物質が漏れ、海が汚染されることが怖くて混乱に落ち入ったのに、日本ではそのようなことは全然見られませんでした。そのときは、日本人の冷静さを尊敬しました。日本に留学するのをやめたクラスメートもいましたが、私は留学することを決意しました。自分の目で本当の日本を見たいですから。

日本人は本当にやさしい

2012年、私は大阪大学に合格し、日本での大学生活を始めました。実際に日本に来ると、日本人の礼儀正しさに驚きました。たとえば、信号を無視する人はほとんどいません。それに、エスカレーターでは片側に立ち、電車の中でしゃべらないなど、どこでもルールがあって、日本人はほとんど例外なくきちんとルールを守っています。日本人はまじめすぎて、付き合いにくいかもしれないと思いましたが、実際は違いました。

被災地で児童館の子どもたちと一緒に
9月に開催された国際交流セミナーについて(ケン玉大会)

私は大学内の生協のコンビニでアルバイトをしています。店長はすごくやさしい人で、一緒にアルバイトしている人も親切でした。バイトを始めたばかりの時は、ミスを犯すのを心配するので、すごく緊張しました。緊張するほど、分からないことがあると慌てて、どうすればいいか分からなくなります。叱られると思ったら、意外に店長は私を慰めてくれました。ほかの店員も新人の私を助けて、仕事の細かいところも全部教えてくれました。日本人は本当にやさしいと思いました。

バイト先だけではなく、大学の友達もみんな親切です。大学に入ったばかりの時、私の学部で、1年生の留学生は私だけだと知りました。日本に来る前に、日本人はよく外国人を疎外するという噂を聞いたので、心配でした。しかし、いじめられることも疎外されることもなくて、日本人の友達をいっぱいつくりました。みんなと一緒にたこ焼きパーティーをやって、学部の浴衣祭りで模擬店を出して、本当に楽しかったです。浴衣を買う場所も、着方も親切に教えてくれました。私は日本に来て、本当によかったと思いました。

言葉では言い尽くせないけど

この前帰国する時、一人の初対面の日本人に助けられました。私の家から15分程度歩いて着ける駅には空港行きのバスストップがあります。9時発の飛行機なので、朝5時ぐらいに家を出なければなりません。スーツケースが重くて、リュックサックのファスナーも閉められない状況で、タクシーに乗ると決めました。しかし、電話をかけてみると、私の前にまだ5人もタクシーを待っています。バスに間に合うため、歩いていくしかないけれど、リュックサックからものが何回も落ちて、バスどころか飛行機にも間に合わないと思いました。諦めようと思った時、車が私のそばに止まりました。「大丈夫? どこに行く?」と運転手の白髪のおじいさんに聞かれました。事情を話すと、どうしても私をバスストップに送りたいと言ってくれました。私が降りたとき、何を言ってもお金を受け取らず「勉強頑張ってね」と言ってくれました。その時は心が温かくて、感動しました。おかげで、飛行機に間に合いました。

日本は親切な国である。また、暮らしやすいところである。なぜならば、日本では物が盗まれることが少ないです。物を落としてなくなったとしても、見つかる場合が多いです。私は物忘れがひどいけれど、日本で物を失くすことは一度もありません。大学でも駅でも落し物取扱所があるので、そこに行けば落としたものを見つけられます。

今、私の頭の中でさまざまな日本が存在しています。礼儀正しい日本、きれいな街を持つ日本、冷静な日本、親切な日本…日本に対するイメージが多すぎて、言葉では言い尽くせません。もしも、一つの言葉にするのなら、たぶん、「温かい」日本でしょう。

『Campus Life vol.42』より転載