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京都での留学生活

顔写真
京都大学 総合人間学部2年
フローリス・デ・グラーフ
Floris de Graaf

 みなさん、こんにちは。フローリスと申します。オランダから来た留学生です。私は4年前に初めて来日し、滋賀県、東京都にそれぞれ1年ぐらい住んでから、国費留学生として京都大学に入学しました。現在は総合人間学部の2年生です。

日本に行きたいという夢

 私の父は大学生のころ世界文学を専攻し、今もまだ世界各国の文学作品に興味を持っているので、実家には全世界からの小説があります。オランダの高校生は毎年、何冊かの本を読み、それについてのレポートを国語の先生に提出しなければなりません。私は父の影響を受けて、南アフリカ、コロンビア、インドネシアなど様々な国の小説を読んでみましたが、最も私の興味を引いたのは日本の小説でした。川端康成から村上春樹まで、異なる時代の小説家の小説を読み、特に私にとって不思議だったのが日本の京都などで見られる伝統文化と、東京や大阪などで見られる進んだ技術や開発の両立でした。ある小説を読んで、日本はとても伝統的で、私が慣れ親しんだヨーロッパの文化と違う文化の国のように感じましたが、また違う小説を読んでみたら、日本人の生活はオランダのそれとさほど変わらないと思いました。
 日本の文学がきっかけで、私は16歳の時に独学で日本語を勉強することにしました。いつか、私が好きだった小説を日本語で読めたらな、と考え始めました。そして、文学を通して出会った日本という国にもいつか、行ってみたいと思うようになりました。

京都大学までの道程


我が母校、京都大学の前で

 ある程度日本語を話せるようになった18歳の時に、在オランダ日本国大使館主催のスピーチコンテストに優勝し、初めて来日しました。そのときは2週間ぐらいの旅行だけだったのですが、何カ月か後、留学生として日本で生活をする機会が訪れました。滋賀県のホストファミリーにお世話になりながら、1年ぐらい立命館大学の付属高校に通いました。最初の何カ月かはやはり新生活に慣れることが大変でした。我が国ではいつもオランダらしく自転車で学校に通っていたので、朝早く起きて電車で通学することになかなか慣れなかったし、私のように見える人がまわりにほぼ誰もいなかったことも思ったより変な感じがしました。でも、日本語はもうある程度話せていたので、日本人の友達もたくさんできて、日本語の先生やホストファミリーからの支援もあって、とても充実した一年を過ごしました。


留学することで、全世界からの友達が
できるのはとてもありがたいことだと
思います

 前よりも日本のことが好きになり、日本語での授業が普通に聞き取れ、日本史の試験なども日本人学生と同じように受けられるぐらいのレベルになっていたので、このままオランダに帰って大学に入って、オランダ語で勉強するのはもったいないと思いました。文部科学省の奨学金に応募して、国費留学生として再び日本に来ることになりました。まずは東京外国語大学で全世界から来た国費留学生と一緒に日本のことについて勉強し、一年が経ってから京都大学に入学しました。

京大生としての生活

 総合人間学部では理系から文系までいろいろな分野について勉強できるので、将来何がやりたいかがまだわからない人が入学する学部だと考えられることが多いですが、私は勉強したいことがとてもはっきりしているからこの学部に入ることにしました。政治学と法学にも興味があったので、法学部のほうが良かったかなと、入学する前まで総合人間学部でやりたいことができるのかについて心配していました。でも、実際に入って、期待していたよりも自分に合っていることに気が付きました。今は、主専攻として国際関係と政治を勉強しており、それ以外にも中国語と中国文化と社会などについても学んでいます。大部分の授業は日本語で受けているのですが、多くは日本語がまだ話せない交換留学生が受講する英語での科目もいくつかとっています。自分と同じく、外国人として日本で生活する留学生と話したいときもあります。かなり似ている経験をしているので、親しくなりやすいし、すこし難しい時にお互いを支え合えます。
 課外活動として京大生協の留学生委員会に入ったのもそのためです。自分は留学生として3年目なので、初めて留学するときに新しい生活や人間関係や勉強でとても苦労することがあると知っているし、自分でそれらを今まで乗り越えてきたわけなので、新しく日本に留学に来た交換留学生が新生活に慣れやすい環境を京大で作ることに貢献したいなと思いました。


週末は、日本庭園や寺社など、
日本らしい場所に出かけるのが大好きです


京都で一番好きな場所:鴨川

古都でしかできないアルバイト


京都でしかできない経験をたくさんしています

 現在は、京都大学生協留学生委員会の委員長以外、課外活動としてツアーガイドを務めています。旅行したり、また違う国に留学するのが好きなので、アルバイトをしてお金をためています。そのアルバイトはオランダの会社のツアーガイドです。プライベートツアーを担当するので、いつもお客さんと前もってメールで連絡を取って、お客さんの趣味や興味に合った京都ツアーを計画します。
 お寺や神社が好きなお客さんであれば、清水寺から吉田神社まで散歩し、日本史や日本の宗教について話します。和食に興味がある人であれば、錦市場に行くことが多いです。京都のような伝統のある、何処もかしこも観光名所がある町でしかこのようなアルバイトができないので、京都に住むことができてとてもラッキーだと思います。日本に興味を持ち始めた16歳のころには、大学生になったら京都の観光名所を回り、日本の文化を紹介することで給料がもらえるとは夢にも思いませんでした。

 今の大学生活で、最も難しいと思うのは、やりたいことをすべてやり遂げることです。日本での留学と京大での勉強は数えきれないぐらいたくさんのことをやってみる機会を与えてくれていますが、やってみたいことすべてに挑戦する時間がありません。これから、京大での4年間をどのように使っていきたいかについて考えなければなりません。将来がとても楽しみです。

『Campus Life vol.58』より転載