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留学を通して学んだこと

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京都大学 文学部2年
リム・ナタリー
Lim Natalie

多文化交流と多様性の大切さ

チキンライスとマーライオンで有名な国、シンガポールから参りましたリム・ナタリーです。今は京都大学文学部の2回生として大学生活を満喫しています。
よく自己紹介などで母国のシンガポールについて聞かれますが、その際よく「シンガポールの国土面積は東京の23区ぐらいですよ」と言って、日本人にシンガポールのイメージを伝えようとします。

それが東京で語学学校に通っていた頃ですが、関西に引っ越した今、その例えではいまいちイメージが伝わらないと気づき、最近は「琵琶湖ぐらい」と伝えています。

こうして日本の方々と交流し、いろんなことについて話したりすると、日本のことだけでなく、母国のことについても自然と詳しくなります(実はシンガポールの国土面積は毎年増えていますので、また改めて調べないといけないのかもしれません)。あまり大したことではないと思われるかもしれませんが、これこそ国際交流の魅力的かつ有益なところだと私は思います。


祇園祭

違う環境は自分の成長につながる


ダイビングサークルに入って初めてスキューバダイビングを体験!

「水を探す一番下手な生き物は魚に間違いない」というのは、比較言語学の授業で習いました。中国語の特徴を突き止めるのは母語話者の中国人ではなく、中国語学習者だという話です。生まれてからずっと中国語という水のなかで生活してきた人々が、今となって中国語の特徴に気づくわけがありません。

同じように、我々は自分の社会や文化のなかで生きているものとして、法律や教育制度からお風呂は朝か夜かみたいな些細な生活習慣まで、自分の文化と他の文化の相違点が分からないのです。ちなみにシンガポールはそもそも常夏で暑いから、お風呂文化がありません。他文化に触れて初めて自分の国のことに自覚を持つとまで言えるでしょう。

シンガポールにいた頃は周りの人がほぼ皆シンガポール出身なので、まず「シンガポール人」という認識が薄かったです。シンガポールの食べ物、ことば、街並みの全てが来日する前の私にとって当たり前でしかなかったです。日本という外国で暮らしてみたら、シンガポール人としてのアイデンティティが強化され、知り合いにシンガポールの良さを伝えたいという愛国心まで身についてしまいました。

来日して3年目ですけれども、日本の制度、文化、インフラなど様々ないいところを発見できました。特に日本では製品やサービス、あらゆるところで安全・安心を重視しているところが気に入っています。日本のどこに行っても不安を感じるのが珍しいことだと私は思います。


鴨川で散歩

無論、ここでの暮らしはすべて薔薇色だと言ったら嘘になりますが、自分の価値観や考え方はここでの発見によって少しずつ変わっていっているのに気づきました。シンガポールで、「これがないと生きていられない」と感じたものは今なら別にあってもなくてもよかったとか、こういう行為は絶対許せないと思っていた昔の自分は視野が狭かったんだな〜とか。それは、自分が今までとまったく違う環境に置かれたからこそ新たな出会いを手に入れられ、思ってもみなかった経験を経て成長を成し遂げたからだと感じました。

日本の意外な多様性

シンガポールにいた頃、学校やニュースで日本のことについて学び、日本は「*同質的社会*」だと勝手なイメージがありました。勝手だと言いましたが、おそらく日本人も自分たちをそうイメージしていますね。日本語を使用し、日本人しかいない国だと思いました。もちろんグローバル化によって、外国人がいるのはわかっていましたが、少なくともシンガポールのような多様な社会ではないと勘違いしていました。

しかし、日本の歴史や社会に触れると、昔からいろんな民族が日本にあったのを知りました。それだけでなく、「日本人」というのは一つの概念として片付けてはならないと実感できました。日本の47都道府県はそれぞれ独特な文化を持ち、言語から食まで多様であることを知ることができました。

おそらく京都で生活しているからその多様性を日々味わえています。関西弁といっても地域によってアクセントや語彙が違ったりしますもの。このような違いはまさに現地に住んでみてある程度の時間を経て、肌で感じるものです。大学でサークルに入ってみたり、日本の伝統行事に参加してみたりして、細かいニュアンスまで体感できた日本の多様性は、自分にとって非常に貴重で大切な人生経験です。

以上、日本での留学を通して感じたこと、学んだことについて少し考えてみました。多文化との交流は単に視野が広がるだけでなく、自分の国そして自分自身のより深い理解にもつながると考えています。今までと違う環境、違う生活を体験することの価値と楽しさを伝えられていれば幸いです。もしよかったら、外国に移住までしなくても、周りにいる外国の方とちょっとした会話をしてみませんか?


北海道で五稜郭を観光


沖縄でシーサーを作ってみました!

『Campus Life vol.62』より転載