新入生を迎える活動と事業

座談会 大学と大学生活を知り必要な準備が分かる保護者説明会

2011年の調査では、76大学生協で保護者説明会が開催されました。
新入生や保護者への生協からの情報発信はとても重要になっており大学生活への不安を払拭し、大学と生協への信頼を高めることにつながっています。
今回は保護者説明会を開催した四つの大学生協の関係者に話をしていただきました。


高祖 亜希子さん
(早稲田大学生協組合員サービスセンター店長)


井﨑 宏子さん
(京都大学生協 理事会室)


井﨑 宏子さん
行実 利幸さん
(芝浦工業大学生協 専務理事)


佐藤 太貴さん
(山梨大学生協 副学生委員長 3年)


司会 大本 隆史
(全国大学生協連 常務理事)

出席者

井﨑 宏子
京都大学生協 理事会室
佐藤 太貴
山梨大学生協 副学生委員長(3年)
高祖 亜希子
早稲田大学生協 組合員サービスセンター店長
行実 利幸
芝浦工業大学生協 専務理事
大本 隆史
全国大学生協連 常務理事(司会)

経験に基づいて学生が説明


新入生保護者説明会(早稲田大学生協)

大本:大学生協が主催する保護者説明会(以下、「説明会」)は大学入学に際しての保護者の安心感につながっていると思います。年々開催する大学生協が増えていますが、さらに多くの生協で取り組んでいただきたいと思い、今回、その経験を皆さんに語っていただこうと思います。

高祖:早稲田大学生協では、今年は「説明会」を6回実施し、延べ1000人を超える方が参加しました。入学者のほぼ10%の保護者の方が参加したことになります。今年は、学生の皆さんに話をしてもらうことに意識を置きました。学生の生活と大学生協というところでは学生が生協と共済の話をし、学生生活では文系、理系に分かれて話をしてもらいました。

一番良かったのは、自分は大学生活の中でこういうふうにパソコンを使っていますということや、4年生のいつ頃から、こういう形で就活を始めました、というように、学生自身の生活が見えるような説明をしたことが、大学生活での不安の解消につながったと思います。

井﨑:京都大学では、昨年、入学手続きが郵送でも可能になりました。それでも新入生や保護者に京都大学に一度来て、大学や大学生協の雰囲気を知ってもらいたいと思い、それを目的に「説明会」を開催することになりました。

「説明会」は、合格発表直後に3回行い、松本総長にご挨拶をいただきました。これは大学としても初めてのことでした。「説明会」は学生が主体のパネルディスカッション形式で行い、質問を想定して事前に準備し、住まい、食生活、大学の授業、サークルのことに答えるという形で実施しました。質問は多く、終了後もパネラーの学生たちを参加者が取り巻くような感じになりました。参加者は延べ1000人を超えました。

今年は2回目ということで、参加者が聞きたいことを事前に質問用紙で集約し、テーマを絞り込む工夫をしました。短い時間の中で割と広くやり取りができました。

行実:芝浦工業大学生協では今年初めて取り組みました。もともと、電話での問い合わせが多く、こちらが説明したら解決できるものが多くあり、だったら「説明会」に来てもらおうということになりました。

今年は、事情があって急な企画になり、2週間くらいで準備しました。初めてでしたので、「説明会」は専務と店長で進め、学生は、食堂に待機していて保護者が自由に聞きに行くというやり方にしました。こだわったのは、保護者の質問に答えるということと、食生活のことです。大学生協が食堂で出しているメニューやこだわりをお伝えしました。

「説明会」では、専務が生協について話し、店長がパソコンや教科書販売等の説明をしました。「実際の食堂やパソコン・教科書などの利用については、学生がいますので食堂で聞いてください」と、学生に直接質問してもらうようにしました。参加人数は、180人、135家族でした。

保護者の関心が高かったのは、教科書の買い方でした。いつまで販売していて、その後どうなるのかも含めて、メモを取って真剣に聞いている姿にはビックリしました。

食事の後、8割くらいの親御さんが残りました。1人の学生に対して5~6人の保護者が回りに座ってそれぞれ質問しているという感じでした。質問は、学生生活、パソコン、授業について、食事のこと、教科書の買い方などが出されました。4年生もいたので、すでに入学の時点で就職活動のことも聞かれていました。

佐藤:山梨大学生協では、学生が中心になって企画し、生協職員が協力するという形で行いました。学生生活の不安を除き、大学生協の魅力を伝えるという2点を目的としました。

開催回数は1回だけでしたが、参加者数は70組137人でした。入学者数の大体10%くらいになります。

学生生活に関しては学生が担当し、生協の事業面については職員が担当して準備を進めました。キャリア支援は大学のキャリアセンターにお願いしました。学生が熱心にやっているので、今回は協力しようということになり、当日はキャリアセンターの室長さんが来てくれました。参加者のアンケートではキャリアセンターの話が好評で、一番興味を持たれるのはそこなのだなと思いました。

大本:「説明会」の中身で共通して出ていたのは、学生生活や大学の授業、教科書、パソコン、食生活、そして就職ということだと思います。これから取り組もうとしている生協には参考になるポイントだと思います。

メルマガで日常的なフォローも

大本:早稲田大学生協で保護者向けのメールマガジンをかなりの頻度で発信されたと聞いています。「説明会」に参加できない方へのフォローという意味でも紹介してください。

高祖:今年、新たに保護者向けメルマガを指定校推薦の1500人に絞って行いました。

保護者にメールマガジンを送ろうということでメールアドレスの収集を始め、あらゆる場面で保護者がアドレス登録をできるようにしました。最終的には一般入試も含めて、2000人強の保護者のアドレスを頂くことが出来ました。最初の配信は12月1日で、5月中旬までで100通を超えるメールを送りました。学生のアドレスを書いていただく欄もあるので、学生、保護者両方に同じ情報を送りました。

メルマガを発信すると、それに対してすぐに質問が返ってきます。それにまたすぐにお答えするという形で、双方向のコミュニケーションをこまめに行うようにしました。これが非常に信頼関係を築いたと思います。

メルマガを終了する前に、アンケートに答えていただきました。どういう情報が必要か、どんな情報が要らなかったかということを質問項目で流したところ、多くのメールがその日に返ってきました。こちらから発信した内容で、要らない情報はなかったということです。地方の方は、「早稲田大学で落ち葉が落ちた」とかそういうふうな情報でも欲しいそうです。地方の方には、大学の中が見えないので、それを見たいという心理が強く働くということがよくわかりました。

また、「大学生協が代理徴収を行っている聴講料の支払期限が迫っています」と流したところ、親御さんがお子さんに「もう終わったの?」と声を掛けてくださる。メルマガで私たちは保護者と学生との会話を提供したのだと実感しました。メルマガが、コミュニケーションツールとして役立ったというのがこの間の成果です。


新入生&保護者説明会(京都大学生協)

来年への課題は

大本:今年の反省も含めて、来年に向けて考えていることなどお話しいただければと思います。

佐藤:反省点としては、生協職員の準備が遅かったということがあります。また、説明会の時間が長かったという意見を頂きました。生協の事業の話が長かったようです。車で来ている方が多くて、遠いところでは1時間くらいかかるので、午前中で終わってほしいという声がありました。来年は昼には終わるように計画したいと思っています。

内容については、来年はもう少しお金関係や自分の大学に密着した話題を盛り込みたいと思います。また、事業説明の内容をコンパクトにしたいと思います。午後に行った新入生センターも1日しか開催できなかったので、来年はもう少し開催できないかと思っています。アパート紹介の時期にも質問が来たので、そういう場でも設けられたらいいと思います。

行実:「説明会」をやっても、保護者全員が参加できるわけではありません。参加できない人にもお伝えできるように、「説明会」をホームページに動画でアップしようと考えています。

また、12月から合格者が部屋探しに来るので、その方々にも説明しなければなりません。その場面で1回、「説明会」をやれればと思います。12月から毎月やれば、少なくとも4回できます。

コンセプトとしては、大学生協の食堂はこういうものだと理解していただきたいと思います。食事にこだわり、教科書の買い方にこだわって、「説明会」を続けていきたいと思います。学生生活の話と、そこで生協が果たしている役割の話ができればいいと思います。まずは食べ物と安心を広めていこうと思います。

井﨑:「説明会」の新学期における位置や役割は明確になってきていると思います。「説明会」での質問内容を先行して情報提供したいと思います。

京都大学生協も、メルマガを今年から強化しました。約2000人の登録者のうち、ほぼ半数が保護者の方々です。保護者と新入生に同じメールを送るほか、保護者だけの情報も送りました。やはり返信や問い合わせはすぐにあり、メルマガの威力をまざまざと知らされました。

高祖:現在2000件へのメルマガ配信は終了し、これからも情報が欲しい方は再登録していただいています。その方たちを中心に、大学生協の広報を行っていく計画でいます。

来年度については、呼びかける対象を指定校推薦に加え、内部進学を含めた3000人に対して情報を知らせきることが課題になります。内部進学者には、各高校別に保護者説明会ができないか模索中です。実際の手段としてはWeb中心になると思います。また、説明会に来られない方がWebを見ていることも予想されるので、そのあたりも意識的にやろうと考えています。

来年の「説明会」は、例えばパソコンの話は、今年パソコンを購入し、講習会を受けて、どんなふうに勉強してきたかまで話せる人たちに集まってもらい、実際の学生の利用実態にもつなげていきたいと思います。学生と一緒に進んでいく、学生はこういうふうに思っているというところにヒントがあると思います。そこを大事に進めていきたいと思います。

大本:来年も入学する際の不安に応える「説明会」に期待しています。本日はありがとうございました。

(編集部)

ざ★ポイント

  • 保護者への情報発信は、秋の推薦入学生への対応から始まる
  • 学生が質問に答えることで信頼が生まれる

『Campus Life vol.32』(2012年9月号)より転載