北海道大学名誉教授
(前北海道大学保健センター長)
武藏 学
子供の頃から映画が好きでした。昭和30年代は東映時代劇の全盛時で、鞍馬天狗や笛吹童子に夢中になったものです。小学校に上がった頃、父に連れられていった映画館で主人公の後ろから刀を構えて迫る悪人に、思わず「危ない!逃げろ!」と大声で叫んでしまい全館爆笑となりました。中学〜高校では007シリーズ、大学生になってからは『ドクトルジバゴ』、『卒業』やチャップリンの『独裁者』などが印象的でした。最近はまっているのはロバート・レッドフォードの映画です。『コンドル』や『大統領の陰謀』の俳優としての演技は勿論ですが、彼の監督作品も好きです。『普通の人々』、『リバー・ランズ・スルー・イット』、最新作のリンカーン大統領暗殺事件を扱った『声をかくす人』などが挙げられます。成功はしたものの、一方で失った物の大きさに気づいて終わるほろ苦さ、大きな権力に振り回されながらも自分の生き方を貫こうとする市民の矜持を感じさせてくれます。
映画館に一歩入れば日常から切り離され、観衆の中の名も無い一人となります。そこでは物語の主人公となって彼や彼女の人生を追体験することが可能になります。映画の中であればどんな辛い任務や不幸も耐えられるし、恋の成就に喜ぶこともできるのです。それなら、小説だって同じだと言われるかもしれませんが、物語に加えて映像と音楽の美が映画にはあり、出演者とスタッフが映画に注いだエネルギーも観る者にインパクトを与えるのでしょう。映画に集中する時間は格別なカタルシスの時間です。
現在はDVDを簡単に安く借りることも買うこともできるので、わざわざ映画館に行かなくてもと思うかもしれません。しかし、簡単に自室で楽しむのと映画館とでは集中力が違います。たまには映画館で映画を楽しんで気分転換してみませんか?どうしても時間が取れないと言う人には、せめて部屋を暗くし、携帯電話をオフにしてDVDをご覧になることをお薦めします。
日本内科学会1、2、日本血液学会1、2、3、日本癌学会、日本臨床腫瘍学会1、死の臨床研究会北海道地方部会常任世話人、全国大学保健管理協会4(1:認定医、2:指導医、3:評議員、4:理事)