受験生の心に寄り添うメッセージ

馬渕 麻由子 先生
(東京農工大学 保健管理センター 准教授(カウンセラー))

「想定外」に出会った時は

馬渕 麻由子 先生
馬渕 麻由子 先生

私たちは想定外の出来事が苦手です。未知のものや予想外の出来事に遭遇すると、体(脳)は勝手に危険を察知して、血圧や脈拍を上げて緊張し、臨戦態勢をとるようにできているそうです。適度な緊張は集中力を高めますが、いき過ぎるといわゆる「試験あがり症」といった過緊張状態になります。この想定外から生じる不安緊張を回避するために、受験生のみなさんは時間をかけて受験情報を集め、模擬試験や過去問を解いたりして、受験をなるべく想定内に収めようと準備してきたと思います。

ただ、残念ながらどんなに備えても「まさか」の事態は起こりえます。それが自然災害や流行りの感染症であれば、悔しいけれど「しょうがない」と事態を受け止めることもできるでしょう。しかし、信じていた予備校が受験直前に閉鎖するような、理不尽で耐え難い出来事が起きてしまうのも現実です。

想定外の過酷な出来事に出くわしたとき、私たちは不安やパニックになったり、怒りや絶望的な気持ちになったりします。あるいは何の感情もわかなくなったり、緊張の糸が切れたような無気力になるかもしれません。

そんな混乱した状態にあるときは、感情に無理やり蓋をするのは実は回復の逆効果となることがあります。「嫌なことは忘れて、前を向いて!」と言う人もいるかもしれません。しかし一旦はぐしゃぐしゃな気持ちをそのまま誰かに吐き出したり、書き出したりして言葉にしてみることが、気持ちを切り替え立て直すのに役立つことがあります。

「まさか」の事態に直面しても、受験に向けて皆さんが日々積み重ねてきたことが消えたり減ったりすることはありません。受験直前期は、まして動揺しているときは「できていないこと」に目が行き焦りがちですが、そんなときはあえて「これまでやってきたこと・できたこと」をもう一度振り返り、「今できること」に取り組んでみてください。くよくよしたってかまいません。つらい気持ちを抱えながらでも、今日まで蓄え培ってきた力は必ず発揮されると思います。

こころとからだを支える健やかな学生生活