激甚災害支援・防災

全国大学生協連「ふくしま被災地スタディツアー」

 9月11日から13日にかけて、全国大学生協連の理事会委員会である平和と社会的課題委員会主催で「ふくしま被災地スタディツアー」が行われました。今年で2年目の取り組みとなります。

 「1000年に1度」とも言われた東日本大震災と、それによって生じた福島第一原子力発電所の事故から今年で7年目を迎えました。しかし、7年経過した現在でも、5万人以上の人が避難生活を続けています。特に津波と原発事故の複合被害を受けた福島が突出しており、避難者の帰還問題、被害の賠償、健康被害、農産品の安全性、風評被害など、まだまだ課題が多く残っています。

 福島県では、2017年の3月末と4月1日に帰還困難区域を除いたすべての地域で避難指示が解除されました。復興がこれから始まる地域も少なくありません。福島で起こったことを他人事とせず、また過去のものとせず、「現在進行形の日本社会全体の大きな課題」だということを理解し、正しい情報を知り、共感を広めるという目的で、今回のツアーを開催しました。

ツアー1日目
専門家の方々による講演


専門家の先生のレクチャーの様子

 今回のツアーは全国各地から22名の学生・生協職員が集まりました。ツアー1日目は、現地を見てまわる前に、まずは福島大学の先生方から、様々な視点から見る福島の現状についてお話をいただきました。

 福島の教育を研究している先生のお話では、福島の子供たちが避難先の生活でどのような苦労をしているのか、そんな子供たちにはどのようなケアが必要なのか等を聞き、「支援を終えられるのはいつか、子供たちがどうなったときなのか」ということについてみんなで考えました。

 福島の避難所運営などを研究している先生のお話では、福島県が岩手県や宮城県よりも震災関連死が多く、「心の復興」が必要であるというお話や、震災当時に実際に福島の避難所の運営を行った経験からどのような支援やケアが避難所において必要なのかお話をいただきました。その中でも、避難所の中の「自治」と「交流」が人の命を救うということが参加者の印象に強く残っていたようでした。

ツアー2日目
バスにて被災地移動教室


当時のままの姿を残した建物

 前日に様々な知識を得られ、ツアー2日目は実際に被災地を見てまわりました。大きな瓦礫などは撤去されてはいるものの、除染作業で出た廃棄物を詰めた黒い袋(フレキシブルコンテナバッグ)が道路脇に詰まれていたり、浪江町の請戸地区では、被害を受けた建物がそのまま放置されていたり、人が誰もいない街というその異様な光景を目の当たりにしました。参加者からは「あまりにも殺風景すぎて声が出なかった」「まだまだ人が住むにも復旧が終わっていないんだと実感させられた」という声がありました。

 バス移動の途中、飯舘村と楢葉町に立ち寄り、飯舘村では村長さんに、楢葉町では木戸川漁協協同組合の職員の方にお話をしていただきました。

 飯舘村村長さんからは震災当時に苦労されたこと、3月末に避難指示解除を受けた現在の村の様子を中心にお話をいただきました。「国や東電が加害者、私たちは被害者。そのような考えは一旦横に置いて協議を進めよう」というお話や「0から復興が始まるのではなく、飯舘村は今0に向かって復興を進めなくてはならない」というお話をいただき、「前向きに進む姿」が参加者の中で特に強く印象に残ったようです。

 木戸川漁協さんからは、震災が生じた当時の状況、鮭の遡上の取り組みの今についてお話を伺いました。木戸川の震災直後の写真をいくつか見せてもらいながら説明していただいたので、現在の木戸川との比較が目に見えて分かりました。地震直後は「鮭のことしか頭になく、津波や避難などはまったく考えていなかった」と話されていました。

 また、この日の夕食は福島の魅力を知る機会として、福島県産の野菜や果物を使った夕食を福島大学生協さん、JAふくしま未来さんに用意していただきました。

ツアー3日目
これからについて考える時間


これからの決意を胸に

 最終日となるツアー3日目は3日間の感想交流を行い、個人として何をしていきたいか、まわりの学生と一緒に何ができるかを考え、交流しました。
 また、自分の大学に戻った後の「参加報告」を想定・作成するワークを設けました。3日間を通して特に周りの友人や知り合いに伝えたいことを中心にそれぞれで整理を行いました。