全国大学生協連院生委員会 2020.03.25 Vol. 33
奈良女子大学 理学部 で「新規界面活性剤の合成と水溶液中での物性評価」について研究している「おーちゃん」です!
わたしが研究で取り扱っている界面活性剤は洗剤やシャンプーなどに含まれており、消費者の間では、皮膚や環境にあまり良くないイメージを持たれることが多いです。
実際、日本でも様々な問題が起こりました。現在は利用されていない「分岐鎖アルキルゼンスルホン酸Na」という成分は生分解性が低く、湖沼に流れた際に泡立ってしまうという事態が発生しました。界面活性剤は水に溶けると水の表面(界面)張力を変えるのですが、ある濃度以上になると魚は息ができなくなってしまいます。また、1980年頃に流通した「リン酸塩」は植物や土壌の肥料などにも利用されており、生き物に対する毒性が無いとして注目されました。しかしこれが富栄養化を起こし、河川や湖沼に微生物が大量発生してしまいました。
現在は生分解性の評価をきちんと行ったり、無リン化の動きが進んだりしています。また最近では、CMC(臨界ミセル濃度)(=界面活性剤が能力を発揮できるようになる濃度)を低下させたものが研究されており、多くの製品に応用されています。すなわち、ごく微量しか界面活性剤を含まなくても泡立ちが良かったり、汚れを落としやすくなったりしているのです。
Fig.界面活性剤イメージ図
界面活性剤の起源は古代ローマ時代の初め頃と言われており、そこから現代では洗い物や化粧、食品など幅広いシーンで用いられており、人間の暮らしには必要不可欠となっています。しかし確かに界面活性剤の中には人や環境に良くないものもあります。「洗剤=界面活性剤=悪い」と決めつけるのではなく、アンテナを張り、様々な情報を仕入れ、何が良くて何が悪いのかを自分で判断できる力を持って商品選びができるようになるといいですね!
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阿部正彦・坂本一民・福井寛(2010)『トコトン優しい界面活性剤の本』
全国大学生協連 院生委員会