ウイルスとの「共生」

全国大学生協連院生委員会  2020.10.28 Vol. 47

新型コロナウイルス感染症の流行から学ぶ人間の生き方

こんにちは。京都大学農学研究科のM.H.です。今回は自然科学的観点から、ウイルスとの「共生」について述べたいと思います。

今回の感染症の流行を受けて、大学(院)生の生活は大きく変化したことでしょう。アルバイトができない、学費が払えない、食事のバランスが崩れた、昼夜逆転生活になった、不十分なネット環境下でオンライン授業が施行された、研究がストップした、など金銭・食事・学業といった生活の重心を脅かす事態が次々起こったことは、間違いなく社会全体の問題です。感染症拡大に伴い社会システムの脆弱性が露呈し、多くの地球市民が困り果て、新たな生活様式に対応しようと努めたのも事実です。死亡者が日に日に増えるニュースを見る度、医療従事者や運輸業者の働く環境を知る度、心を痛めた方もいらっしゃることでしょう。私も、多くの報道で「コロナが憎い」「コロナのせいで…」といったフレーズを耳にしました。確かに、この感染症が我々の生活に与えた影響は想像以上でした。

しかし、我々は人類誕生から今まで、多くのウイルスとともに様々な時代を生き抜き、淘汰されてきました。生物学的には、異なる生物が相互的に関係を及ぼしながら生活することを「共生」と呼びます。ウイルスは「寄生」する非生物なので、「生きる」または「死ぬ」といった表現、また「共生」といった表現は適切でないのかもしれませんが、生態系に存在するものとして、今回「共生」という言葉を使用しています。ウイルスが宿主をほかの動物からヒトに変え、感染症を引き起こす要因には、気候変動、土地利用、国際的なヒトやモノの往来、公衆衛生など人間が大きく関与しています。人間活動によってウイルスが人間にとても近い存在となり、パンデミックの発生により人間が免疫力を高めてきたのだとすると、我々人間はウイルスによって生かされてきたとも言えるのです。

さて、それでは今回の感染症の蔓延における我々の敵は、果たして本当にウイルスだったのでしょうか。我々の敵は、人間一人ひとりが持つ「(生態系の中で)人間が一番強い」という人間中心主義の潜在的な傲慢さなのではないかと私は思います。だからこそ、我々は環境の形成者でありながら環境に育てられている存在である、という認識が必要なのではないでしょうか。そして、そんな環境の一部であるウイルスと共生するために、いかに予防が大切かということを、改めて感じてほしいと思います。これからインフルエンザやノロウイルスの季節がやってきますが、日常的に手洗いやうがい、手指の消毒をして、食事や睡眠を十分とって、穏やかに「共生」していきましょう。

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