博士学生は絶滅危惧種?

全国大学生協連院生委員会  2021.10.06 Vol. 49

世界の研究を担う博士の”現状”

秋田大学院理工学研究科生命科学専攻修士2年のOEです。タンパク質の機能,構造解析の研究をしています。私は博士課程に進学する予定ですが,皆さんは博士課程に在籍する院生がとても苦しい状況に置かれているのはご存知ですか?

大学院生は,約25%の論文の筆頭著者に名を連ねており,日本における研究開発の原動力です(下図)。中でも博士学生の貢献は大きく,学生というよりもむしろ,教員や他の研究者と協働して日本の研究力を向上させるという「研究者」としての側面を持ちます。そんな博士学生ですが,2003年をピークに博士課程への進学率は減少の一途を辿っています。その理由はやはり,「経済的な不安」が大半を占めます。



図 大学院生が論文に最も貢献した筆頭著者として関与する割合
参考:学生に対する経済的支援の全体像(博士課程)-文部科学省

博士学生の主な収入源は、①奨学金,②アルバイト,③学振です。しかし,①奨学金は貸与型が主流であり,②アルバイトをする時間的余裕もありません。③学振とは,学術振興機構主催の研究費助成事業であり,提出した申請書が採択されると,博士学生であれば年間240万円が在学期間中に援助されます。しかし,採択割合は5人に1人の狭き門であり,必ず支援されるとは限りません。

このような現状を改善するため、文部科学省は2021年度から、「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ創設事業」を開始しました。全国約1000名の博士課程学生に対し、生活費相当額(180万円以上)の支援などを行う事業です。このように、徐々に博士学生の処遇改善に向けて動き始めています。科学の将来を担う研究者のために、これからも声を挙げていきましょう!

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発行元

全国大学生協連合会 全国院生委員会

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