全国大学生協連院生委員会 2025.02.05 Vol.76
鉄は、地球上に最も多く含まれる元素であり、約32%も含まれています。鉄鋼は鉄に他の元素を数%程度混ぜた、加工性に優れた材料です。安価で扱いやすいため需要がとても高い材料であり、粗鋼(鉄鋼の元となるもの)の国内生産量は年間約8,700万トン1)にものぼり、世の中で最も多く使われている金属材料と言えます。
鉄は通常、単体ではなく酸化物(Fe2O3やFe3O4)として存在しています。鉄鋼を作るには、原料である鉄鉱石を還元して酸素を取り除く必要があります。主な製鉄プロセスである高炉では、石炭が還元剤であり、多量のCO2を排出します。そのため、鉄鋼産業だけで国内CO2排出量の約14%2)を占めています。カーボンニュートラルの実現に向けて、鉄鋼産業は大きな責任を持っています。
高炉内での化学反応式※ 2Fe2O3 + 3C → 2Fe + 3CO2
鉄鋼産業では、CO2排出量削減のためにさまざまな取り組みが行われています。今回はその中でも、高炉内での還元剤として炭素のみではなく水素も用いる手法について説明します。先述の通り、炭素で還元することによってCO2が排出されているので、水素を増やせばCO2排出量は減ります。ではすべてを水素に変えればいい、と思うかもしれませんが、そううまくはいきません。というのも、炭素還元が発熱反応であるのに対して、水素還元は吸熱反応であるため、高炉内の温度が下がってしまい、高炉の安定操業に支障が出てしまうのです。そこで、現在は水素を増やしても安定して創業できるようにするための研究が進められています。カーボンニュートラルの実現に向けて、これからより一層変化していく鉄鋼業界をお見逃しなく!
【参考文献】
1)日本鉄鋼連盟:鉄鋼生産速報-全国鉄鋼生産高
2)NationalInstituteforEnvironmentalStudies,“DataonGreenhouseGas Emissions in Japan 2024”.
※簡潔に説明するために詳細な反応式は省略しています。
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