会員生協理事長インタビュー
日本赤十字豊田看護大学生協 高見 精一郎 理事長

「協同」の力を組合員に働きかけ、
それに応える取り組みで形にしていく
日本赤十字豊田看護大学では、2016年10月に学長将来ビジョンとして生協設立が位置づけられ、1年後の2017年10月に設立総会が開催されました。
設立より理事長を務めていただいている高見精一郎理事長にお話を伺いました。
【参加者】
- 日本赤十字豊田看護大学生協 理事長 高見 精一郎 先生
- 日本赤十字豊田看護大学生協 業務執行責任者 松尾 博貴
【聞き手】
- 全国大学生協連 広報調査部
(以下、敬称を省略させていただきます)
生協設立のきっかけ
聞き手:2017年の10月に設立総会を開催されていますが、そこに至った経緯を具体的にお伺いしたいと思っております。特に学長の将来ビジョンに生協設立が位置づけられて、それが一番のきっかけであったとあり、学長先生自らが訴えかけることはあまり例がなく、大学としての目的を先生はどのようにご覧になっていましたか。
日本赤十字豊田看護大学生協 高見 精一郎(以下、高見):生協設立のきっかけは、先代の学長の意思によるものと理解しております。
学長が赴任されてすぐ、食事をしている私のところにご自分の食事を持って座りいろいろお話をしたことがあります。その中で「食堂の前に売店を見てきたけれど、品揃えをもっと充実させる必要があるのではないか」とお話されておりました。今は生協が店内中に棚を巡らせて品物をたくさん置いていますが、その当時は一片の壁にだけ棚があり、その棚も2/3がカップ麺に占められている状態でした。小規模で学生が少ない中、売れるものを取捨選択していくとそれはもうカップ麺しか残らないのだろうとは思いますが、事情は想像できるので売店業者を気の毒に思う一方で反論もしにくく思いました。
考えてみれば、当時の売店は食事に関するところだけを賄うような感じで、文具など学習にかかわる一般的なものもあまりそろえられていない状況でした。聴診器など学修に必要ではあるが専門的な器具のようなものを学生自身が調達することはそもそも学内学外問わず難しいと思います。そこで聴診器などは入学直後に事務局が注文をとり業者に発注していました。物品数もそれなりにありましたし、事務局にも負担があったと思います。破損やトラブルがあった時にも時間を要していました。そちらの事情も併せると、学生の食育の一環と事務職員の業務軽減も含めて、食堂や購買を運営できる運営母体として一番いいのはどこかと考えたとき、大学生活を支援する団体として成り立っている大学生活協同組合が一番望ましいと、当時の学長先生はそう判断されたのだと私は拝察しております。

聞き手:生協ができる以前は、例えば教科書の販売などはどうされていたのですか。
高見:これも学生の履修状況に応じて事務局が業者に発注していました。不足のものがあれば取り次ぎをしなければいけませんので、こういったところも事務職員の負担となっていたのではないかと思います。
聞き手:生協の設立に関して、学長先生の想いの中で一番大きかったのは、おそらく食育ということだったのかもしれませんが、大学の事務を担う職員の方々の業務負担の軽減ということもあったわけですね。
高見:実際、理事長を引き受けた際に、そういったことも業務から解放してあげたいとお話しになっていました。
生協設立の過程
聞き手:きっかけとしては食堂での学長先生とのお話だったとのことですが、その後は学生自治会や教員会議、いろいろな学内構成員の会議で生協設立の説明会などを重ねて、それぞれの団体が生協設立の機運を盛り上げてきたとお聞きしていますが、この過程をどのように受け止めておられますか。
高見:私が具体的にかかわるようになったのは発起人会に入るよう声がかかってからです。その声かけのきっかけは学長先生であっただろうと思いますが、主体となって進めていたのは別の役職を務める先生であったと記憶しております。それもあって初めのうちは一般の教員や事務方、学生さんたちは何が起きているのだろう、という感じだったと思います。保護者の皆さんからは授業で必要なものを調達する際に苦労するところはあるので、そこをサポートしてくれるような生協ができるなら非常にありがたいというご意見をいただいたとは聞いております。
私自身も、あの時に雑談のように聞いていたお話が今の設立運動につながっているという理解はしましたが、戸惑いもありました。開学直後に一度生協を作る話があったものの本学のような規模の小さい大学で生協を運営していくのは難しいという話を聞いたこともあり、設立できるようになったことに驚きを感じていました。
学内の雰囲気が設立に向くような出来事があったとするならば、それは設立総会そのものだったと思います。準備段階では愛知教育大学生協の皆さんが設立時のアドバイスをしてくださったり、学生委員会の皆さんが親身になって協力をしてくれたりしていましたが、一般の学生や教職員のみなさんにはわからなかっただろうと思います。
それが設立総会当日、講堂の入口に展示された全国の主だった生協から届いたお祝いのメッセージや、別の大学から大人だけでなく自分たちと同じ学生たちが来て一生懸命運営に協力してくれていることを目の当たりにして、なにかお店ができるというよりは自分たちが関わるものができるのだということを漠然とでも感じとってくれたのではないでしょうか。これは結果論ですけれど、総会ということで学生全員が来てそれを目にしたというのもいい方向に作用したのではないかと思います。おかげで2018年春に営業が始まった日も、この食堂を埋め尽くすくらいの学生に囲まれてテープカットを行うことができました。

聞き手:生協ができることを目の当たりにしたというのは、すごくリアルなお話で感じるものがありました。実際にできるまでの間というのは、発起人会などでやっていたとしても、なかなかわかりにくいですよね。やはり総会の場で、全国からさまざまな学生も含めた人やメッセージが集まることで、協同を形にして見せることができたというのが非常によかったと思います。
高見:そうですね、やはり設立総会という生協の始まりの場で、自分と同じ立場である学生たちが一生懸命やっているところを間近で見られたのは良かったのではないでしょうか。

生協設立による学内の変化
聞き手:いま設立後ちょうど8年経過ということですが、3年目を過ぎた頃にコロナ禍になり、いろいろな意味でご苦労もたくさんあったのではないかと思います。設立前と比べて学生や教職員の生活はどのように変わったと実感されていますか。
高見:おそらく学生たちは以前より生活しやすい状態になったのではないかと思います。必要なものをなくしたりした際にまずは生協のお店に行けば対処してくれるという体制になりました。相談できる窓口が一本化されているというのが非常に大きいのかなと。それから、やはりトップが一番理解してくれていることが大きいと思うのですが、事務局も業務のいくらかを少しずつ生協に移管していこうとしてくれますし、物品に関する困りごとは生協で承れる、という体制ができつつあるのは大きいかなと考えております。

教員や職員に関しては、研究費を大学生協で使うことがなかなかできなかったのが昨年ごろから制度的なところで対応していただけるようになりました。これから実際の利用という形で浸透していってほしいというところです。

日本赤十字豊田看護大学生協
業務執行責任者
松尾 博貴
日本赤十字豊田看護大学生協 業務執行責任者 松尾 博貴(以下 松尾):現在は先生方が営業時間内に店舗にお見えになって、商品を公費でと言われたら、その場でサインをいただいて購入することは可能で、最終的には生協が月末にまとめたものを大学側に納品見積もり請求という形でお持ちしています。
高見:購入時にサインだけでいいということが浸透していない可能性がありますので、そこをもっと周知しないといけないのかもしれませんね。もう一つ、先生方は実習の指導として学外を回りますので、生協の営業時間中に来店することが難しい場合もあるかと思います。
聞き手:コロナ禍での生協はどういう状況だったのでしょうか。
高見:感染症対策をする時におそらく一番問題だったのは、どうやって授業をするのかでしたが、本学では情報設備体制を整えて遠隔授業を実現するのに大変苦労しました。教員が授業をすることも勿論ですが、特に学生が対応できるようにするのが問題でした。本学は情報教室の整備などを通して、パソコンなど情報端末を持っていなくても学修ができる体制をとっていました。そのためすべての学生が遠隔授業を受けられる体制があるとは言いにくく、貸し出し体制をとるために数十台のsurfaceを生協に発注することになりました。また、当時の生協スタッフの皆さんはコロナの助成金制度などを使って尽力してくれました。あの時期になんとか成り立ったのは、初期に大学の需要を賄う仕事をもらえたことと、スタッフの皆さんが維持に尽力していただいたおかげだと思っています。
2年目からは、看護技術を学修するにはオンラインでは難しいということもあって少しずつ対面の授業に戻すようになり、生協も感染対策のルールを決めて限定的に営業するというかたちをとりました。だから営業を成り立たせていく方に注力していた感じでした。一方で学生委員会の活動は大学のサークルや部活の体制に合わせて縮小したため、活動そのものの継承が途絶えた時期がありました。昨年あたりから学生委員会の中に活発に活動してくれる学生さんが所属してくれているので、新しい活動の流れが出始めています。生協はお店を利用するだけではないということを改めて知って、より多くの学生さんに活動に参加してもらえるようにしていきたいですね。
現在の課題と改善に向けての対策
聞き手:現在の生協経営や組織活動、理事会等の機関運営、日常の店舗や食堂の運営において、課題と感じている点はございますか。
また、学生や教職員、大学関係者の方から寄せられる声にはどのようなものがあるのか、それに対してどのような対応をお考えでしょうか。先生ご自身の想いも含めてお聞かせください。
高見:一番直面している大きな問題としては、営業時間についてでしょうか。現在は15時閉店なんですが、学内にいる学生は夕方の6時頃まで授業を受けているため、その時間に売店が空いていて欲しいという要望もあります。ただ学生が受けている授業の大半は必修科目であるために店舗に来る機会が休み時間の10分ほどしかないという場合が多く、生協の方も次の休み時間まで開店している状態を維持することが難しく苦慮しているところです。
もう一つ、コロナ禍を経て入学してきた学生たちは設立時の印象がないため、食堂や売店に物足りなさを感じている学生もいて、実現が難しい要望が出てくることがあります。これに関しては「みんなの生活を良くするために出資金を出し合って作ったお店が、今できる範囲のことをしている」ということを、できるだけ早めにみんなの意識として持ってもらえれば同じ要望でもこうしたらどうかという提案に昇華されていくのではないかと期待しております。
コロナ対策で制限せざるを得なかったような活動もだいぶ元に戻ってきて、昨年あたりからは大きく活動できるようになっています。全国総会など他生協の学生委員たちを見る場に学生委員が参加してということを繰り返していくことで学生委員会も自分たちで大学生活を良くしていこうという意識をもつようになってきたと感じています。それと並行して一般的な利用者、これは教職員も含めてですが、利用を通して相互に生活を守り合うという、そういう助け合いの環境が生協だと思っていますので、大学生協というのは大学の中でそれをやっていくものなのだと意識していただけるように、我々も努力していくのが当面の目標と考えているところではあります。
今後の生協運営の展望
聞き手:営業時間については多分多くの大学生協にいま共通している問題で、コロナをきっかけに短くせざるを得なかった営業時間を、コロナがある程度収束しても学生の行動が以前のようには戻っていないため、短い営業時間のままになっている大学生協も多くあります。ただ学内に長くいる学生や先生もいるわけで、その方たちの生活を支えていく必要もあります。そのことをきちんと先生がお感じになっていて、それを一つの生協としてどこまでできるのか、お話にあったように助け合いの中で出来ること出来ないことをきちんと説明するという点はすごく大事なことだと感じました。高見:私たちの場合はどうしても規模との戦いですので、もう少し規模が大きければと思うところですが、他も同じなのですね。おそらくコロナで止めたことというのは、一旦停止ではなくもう一度立ち上げ直さなければならないのかもしれません。
それが先ほどの要望の話にもなるのかと思いますが、例えば閉店時間が早いという声に対してそのまま延ばせばいいのかというと、そうではないなと。今の環境を把握した上で、できるかできないかというのを検討し直さなければならないと考えております。実はご提案いただいて、1週間ほど営業時間を延ばして営業を行い、その時期の売上の変化を数字にしてみようと話しています。
松尾:大学の学内アンケートでも生協のお店の営業時間を延ばしてほしい、品揃えをもう少し増やしてほしいという声が出ていて、営業時間のところは利用してもらわなければ延ばすことは難しいので、12月に1週間程度16時まで営業時間を延ばしてみることを検討しています。ただ延長するのではなく、お店を開けるためにはある程度の売り上げが必要なことを学生に理解してもらい、実際にお店を開けていれば利用が伴うのか、その根拠となるものを組合員に示すことにもつながりますし、自分たちのお店は自分たちで支えるという気持ちを持ってもらえたらと思っています。やはりどこの生協でも本当に極端な話、24時間365日開けたほうが学生は嬉しいのでしょうが、来店し購入してもらわなければ成り立たないのは当たり前なので、きちんと説明して実証した方が自分たちのお店を支えていこうという想いにつながるのかなと思っていますね。
聞き手:例えばキャンパスに1、2万人の学生がいたら、その中で学生委員が仮に3、40人いたとしても、生協からの声が浸透するのは実際難しいし、意識としてはお客さんになってしまうと思うのですが、小規模の生協だと一人ひとりの行動の結果というのがすごくよく見えてくると思うし、逆に言うと組合員の声も通りやすいですよね。1週間試験的に営業時間を延長してみて、組合員の行動が変わり営業時間も変えることができたら、生協って自分たちでつくるもので自分たちの声で変わるものだと実感できますね。
松尾:そうだと思いますね。大学からも学生さんに案内をしていただける関係性はあると思っているので、いろいろな利用もおそらく変わってくるだろうと思っています。
高見先生のお話にあったように、学内外の実習などがあり、日々のお店や食堂を利用する学生数を把握しきれていなくて、ある程度の時間割は大学から共有いただいてはいますが、実際開けてみると4年生が結構いたり全然いなかったり等があって、食堂の品揃えもすごく売れ残ったり、逆にカレーしか残っていなかったりということが結構あるので、もう少し組合員とコミュニケーションを取った上で、小規模なりの融通を利かせたお店の営業をしていけると面白いかと思っています。
聞き手:私が以前、業務支援で訪問していた生協でも一番重要な議題は営業時間のところでしたね。理事会で営業カレンダーを見ながら学生と教職員それぞれから学内にいるかどうかの具体的な話を聞いていました。それは小規模ならではのことですよね。
松尾:営業時間の増減はパートさんの体制上難しいかもしれませんが、お米を切らさず炊いておく程度でも調整ができますので。生協に情報として出していただけるのかも、そのことが営業上重要だという認識も含めて、皆さんに協力いただけたらと思っています。
高見:事務局の各部署から一人ずつ理事を出していただいたりしていますが、ちょっとした人数変動もかなりの割合で影響するのでさらに緊密な連携で情報把握ができればとも思います。私は教員側の理事ですが、担当しているのは情報処理に関わる授業なので看護実習などの事情を詳しく把握できているわけではありません。互いに実情を知る努力が必要というところです。
松尾:コロナ禍は事前注文でお弁当を提供していたようなので、まだ具体的な案があるわけではないのですが、それに近いようなことができないだろうかと思ったりしています。
私も高見先生と一緒で、組合員に生協を自分たちの店だと認識していただくことが一番重要だと考えています。
高見:組合員から声があったときに、それに応えて実現するということが今まで欠けていたと思うので、ご提案いただいて本当にありがたかったですし、そうしていかないといけないのだと思いましたね。
聞き手:最後になりますが、全国の大学生協や大学関係者の方々に向けて、お二人からそれぞれメッセージをいただければと思います。
高見:理事長職をお引き受けしたのは設立総会の直前にお声がかかったからということで、私も何も知らないところからスタートして8年も経ってしまいました。ただ携わらせていただいて、大学生協がだてに協同組合と銘打っているのではないということはよく理解できました。重要なことは「自大学で大学生活を改善しようと取り組んでいる団体である」という意識を持って利用する人がいれば、その分だけ団体の活動規模の余裕ができて、充実したものを提供できるという仕組みが成り立ちうるのだということであると考えております。これに基づいて、お店で利用の多いものとは別に赤十字のグッズなどを置くなど、何とかして皆さんの生協だということを感じ取ってもらえないかなということもしております。働きかけてそれに応える団体という、そういった形を作っていかなければならないですし、その取り組みを続けることが小規模では不可欠かと思います。ただのお店ではないということを知っていただきながら頑張っていこうと思いますので、今後とも皆さんにご支援ご協力いただければ大変ありがたく思います。
松尾:小規模なりにできることは結構あると思っていて、特に生協らしさみたいな部分はより大学とも連携ができるだろうし、いま愛知教育大生協も兼務で見ていますけど、ここで12月に予定している営業時間の延長と共に利用を促す取り組みが上手く実現できたら、他の生協でも広げていけるといいのではないかと思っています。

2025年10月22日 日本赤十字豊田看護大学生協にて

高見 精一郎 理事長
日本赤十字豊田看護大学 看護学部 助教
中京大学 卒業 経営学修士
主要所属学会
組織学会
- 経営学史学会
- 日本医療・病院管理学会
- 東海病院管理学研究会
- 大学教育学会
- CIEC コンピュータ利用教育学会
- 教育システム情報学会
- 公衆衛生学会
- 日本学校保健学会