「これからを生きる大学生へ、未来を創る人々へ」
〜本を読む人、読まない人、読書に興味がある人、興味がない人〜

全国大学生協連 大築 匡

Vol.10 がんばれない日に、そっと開く本

新緑が目にまぶしく、5月の風が気持ちいい季節になりました。心が浮き立つ季節のはずなのに、なんとなくやる気がでない人はいませんか。社会人でもそうなので、4月に入学・進学・進級にともなって生活が大きく変わった学生の皆さんは心とからだに少し疲れが出ている時期かもしれません。人によっては5月病になってつらい思いをしている方もいるかもしれません。
心が疲れたときには無理せず家でゆっくり休みましょう。

5月病に効くサプリメントのような読書は何か、ちょっと考えてみました。
心が疲れているときには、現実から少し離れることが大事です。『物語の中に逃げる』ことで、目の前の悩みや疲れから一時的に解放されるのです。例えば、穏やかな日常を描いた小説や、夢の世界に引き込まれるファンタジーなど、どんなジャンルでも、自分をリフレッシュさせてくれる一冊がきっと見つかるはず。
好きな本を読む時間は、自分と物語だけの孤独な対話の時間です。でも、その孤独は決して寂しいだけのものではありません。ちょっと煩わしく感じていた人間関係やせわしない日常から逃れられる、静かで豊かな時間になるはずです。私はちょっと疲れた時は、何度も繰り返し読んだ小説を手に取ってお気に入りのページを読むようにしています。何度も読んだはずなのに物語に没入してワクワクする気持ちは変わりません。ベッドに寝転んで本を読み、眠くなったらちょっとだけ眠る。そんな休日を過ごします。

読書とは、物語に触れること以上に、自分自身のことを少しずつ思い出していく時間なのかもしれません。最近何を感じて、何に疲れていたのか。本の言葉を通して、置き去りにしていた自分と静かに向き合える気がします。
読書をしていると、目は文字を追っているけど、行間から自分でも忘れていた感情や言えなかった言葉が湧き出してくることはありませんか。日常の中でちょっとずつ澱のようにたまった思いは蓋をされて普段は表に出ることはないかもしれません。静かな思索の時にはそっと蓋を開けてみて心の奥底に貯めた思いを少しだけ解放してあげてみてください。

疲れているときは、立ち止まってもいいし、休んでもいい。本の世界に少しだけ身をゆだねて、心をふわっとゆるめてあげましょう。大丈夫、また元気になれる日は、ちゃんとやってきます。あなたの部屋の本棚が心の処方箋になってくれると思います。