「これからを生きる大学生へ、未来を創る人々へ」
〜本を読む人、読まない人、読書に興味がある人、興味がない人〜

全国大学生協連 大築 匡

Vol.11 眠れぬ夜の積読本

5月とは思えない、蒸し暑い日が続いています。もうすぐ梅雨入りなのでしょうか。

以前は5月といえば初夏の日差しと風が気持ちいい季節だったのですが、今年は晴れれば夏日ですし、曇りの日は蒸し暑く、雨の日は台風かと思うほど激しい風雨です。近頃は春らしい穏やかな季節も、初夏の爽やかな季節もあまりに短く過ぎ去ってしまうように感じます。

気候の変化が激しいせいか、体調を崩しやすいように思います。睡眠も浅く十分に疲れがとれません。そんな人は多いのではないでしょうか。

ただでさえ寝苦しいのに眠る前にスマホを見るとどうしても寝つきが悪くなります。そこでベッドに入って眠る前の10分は読書にあてることにしました。面白い小説は読みふけってしまうとかえって寝る時間が遅くなるので避けたほうがいいでしょう。睡眠薬代わりに読むのであえてちょっと難しめの本を選ぶようにしました。最初の数ページを読んだまま放り出していた積読本が私の部屋にはたくさんありますので、本棚で埃をかぶっていたものを引っ張り出し、ベッドサイドに置いて準備完了です。

最初に手に取ったのは、何年も前に「難しい」と感じて読むのをやめた『戦争論 われわれの内にひそむ女神ベローナ』(ロジェ・カイヨワ著、法政大学出版局)でした。無理にいっぺんに読み通そうとせず、毎晩寝る前に少しずつ読むことで、不思議なことにするすると内容が頭に入ってきました。当時の自分には難しかった言葉が、今の自分にはちゃんと意味を持って届くのです。あのとき読みきれなかった本と向き合う時間は、過去の自分と再会するような、少し照れくさくも嬉しい体験でした。

眠る前の10分読書を続けていると、だんだんと自分の中に変化が起こってきました。最初は眠るための手段だった読書が、次第に一日の終わりを締めくくる大切な時間に思えてきたのです。ページをめくる音、紙の手触り、そして少しずつ静まっていく頭の中……本の内容以上に、「読書するという行為」そのものが、心を整えてくれるようでした。

わずか10分の読書が、こんなにも心をほどいてくれるとは思いませんでした。今夜もまた、静かに本を開こうと思います。